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顧客内のDMU:「本当のお客さん」と話していますか?

投稿日:2018/04/14更新日:2019/04/09

本当のお客さん『法人営業 利益の法則』から「どこから攻めるか」を紹介します。

法人顧客に営業をかける際の難しさの1つに、顧客社内の意思決定構造が複雑であるという点があります。同じ商材でも、社長の鶴の一声で決まる会社もあれば、重役会議での決定や長い稟議を通さないと物事が動かない会社もあります。また、金額によっても最終的な意思決定のあり方は変化するのが一般的です。50万円までなら部長決裁でいいけど、500万円なら事業部長決裁になるなどです。特に新規顧客の場合、実質的に購買を左右する人物が誰なのかを早期に見極め、彼/彼女の関心を知り、それに適切に対応することが非常に重要なのです。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

◇    ◇    ◇

どこから攻めるか

営業マンとしては、どうやって顧客企業側の意思決定構造の複雑さを克服すればよいでしょうか? アプローチ例を3つほど紹介しましょう。

(1) とにかくキーパーソンを探し当てる

顧客企業内で購買意思決定に関わる人々を、DMU(Decision Making Unit)と呼びます。DMUは、役割によって5つに分けられます。ただし、5つのタイプは必ずしも別個の人物が該当するとは限らず、バイヤーがゲートキ-パーを兼ねるなど、一人が複数の役割を担うケースも頻繁にあります。

図
5つのタイプのうちキーパーソンとなるのは、インフルエンサーの一部とディサイダーであり、それ以外のDMUの意向はあくまで意思決定において補完的な役割しか果たしません。逆にキーパーソンの支持さえ得られれば、顧客側から「社内の○○部門が否定的な態度を示しているので、少し彼らの意向を反映してあげてほしい」といった具合に、クロージングに向けた手招きをしてくれることもあります。したがって、営業側が取るべき正攻法としては、早い段階でキーパーソンを見つけ出し、ゲートキーパーを突破して、直接会うチャンスを作って話すことに尽きます。

(2) 最初からキーパーソン狙いの戦略をとる

キーパーソンの見極めやアクセス作りは、長年営業に携わっている経験者にとっても一筋縄ではいかないものです。であれば、最初から、自社を支持しやすいと思われる立場の人を狙って直接営業をかけ、彼らが意思決定しやすい製品設計や価格設定にすることで、購買を促すような手法もあり得ます。

キーエンス出身のトップ営業マンの1人は、「できる限り購買担当者をスルーして、最初から現場の意思決定者に会うように努めていた」と語っています。つまり、ディサイダーやユーザーにアプローチするのです。彼はこう言います。

「最初から技術的な話を持ち出して、購買の人に『技術のことはわからないので、工場の者に直接会ってください』と紹介してもらう」
「顧客の現場担当者が持っている予算額も必ず聞き出し、意思決定関与者を増やさずに決裁できるよう、予算内での提案を心がけていた」

先に触れたワークスアプリケーションズ(参考:カスタマイズ品は意外にコストパフォーマンスが悪い)も似たような手法をとっています。彼らは、オラクルやSAPといった大手ソフトウェアベンダーが大手企業のシステム部門を相手に営業をかけるのに対し、人事管理システムという製品に特化して自社がアクセスしやすい人事部門に直接営業をかけました。

金額も人事部門が独自の予算内で意思決定できるよう、初期費用を3000万円程度に抑え、保守料で稼ぐような料金体系を採用することで、国内企業の人事部門から圧倒的な支持を得たのです。

(3) 社外のインフルエンサーを利用する

顧客企業内の意思決定者が誰か、彼らがそれぞれどんなニーズを持っているかがわからなくても、またキーパーソンへのアクセスができなかったとしても、高い確率で彼ら全員を自社の支持者に変えてしまう裏技があります。それはその企業の社員が共通して重視している社外のインフルエンサーから、「○○社と取引するのがよい」と進言してもらう方法です。

特に「顧客の顧客」からの声の効果は絶大です。例えば自転車部品のシマノは米国市場を開拓する際に、まず「ディーラーキャラバン」と称して、メーカーや卸ではなく、自転車の小売店への訪問に力を入れました。小売店のバイヤーに対して自社製品をアピールする、あるいは小売店からの声を吸い上げて次の製品開発に反映するといった活動を続けるうち、米国各地の小売店から「シマノは部品の品質もいいし、欲しいものをすぐに作ってくれる。もっと使ってほしい」というリクエストが自転車メーカーに寄せられるようになり、米国の自転車メーカーとの取引拡大に成功したのです。

実際、オピニオンリーダーの推奨が、各社の購買意思決定を大きく後押しするような業界は少なくありません。よく知られているように、ヘルスケア業界では、各分野の権威とされる有名医師や大学教授をキーオピニオンリーダーと呼び、製薬メーカーや医療機器メーカーは日頃から彼らとの関係構築に努めています。

(本項担当執筆者:山口英彦 グロービス経営大学院教員)

『法人営業 利益の法則』
山口英彦(著)
1382円

  • 嶋田 毅

    グロービス経営大学院 教員/グロービス 出版局長

    東京大学理学部卒、同大学院理学系研究科修士課程修了。戦略系コンサルティングファーム、外資系メーカーを経てグロービスに入社。累計150万部を超えるベストセラー「グロービスMBAシリーズ」の著者、プロデューサーも務める。著書に『グロービスMBAビジネス・ライティング』『グロービスMBAキーワード 図解 基本ビジネス思考法45』『グロービスMBAキーワード 図解 基本フレームワーク50』『ビジネス仮説力の磨き方』(以上ダイヤモンド社)、『MBA 100の基本』(東洋経済新報社)、『[実況]ロジカルシンキング教室』『[実況』アカウンティング教室』『競争優位としての経営理念』(以上PHP研究所)、『ロジカルシンキングの落とし穴』『バイアス』『KSFとは』(以上グロービス電子出版)、共著書に『グロービスMBAマネジメント・ブック』『グロービスMBAマネジメント・ブックⅡ』『MBA定量分析と意思決定』『グロービスMBAビジネスプラン』『ストーリーで学ぶマーケティング戦略の基本』(以上ダイヤモンド社)など。その他にも多数の単著、共著書、共訳書がある。
    グロービス経営大学院や企業研修において経営戦略、マーケティング、事業革新、管理会計、自社課題(アクションラーニング)などの講師を務める。グロービスのナレッジライブラリ「GLOBIS知見録」に定期的にコラムを連載するとともに、さまざまなテーマで講演なども行っている。

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