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『不安な個人、立ちすくむ国家』――自己責任時代を生き抜くために必要なこと

投稿日:2018/02/24更新日:2020/02/28

ビジネスマン2017年5月、経済産業省ホームページに、センセーショナルなレポートが公開された。「不安な個人、立ちすくむ国家~モデル無き時代をどう前向きに生き抜くか~」と題されたこのレポートは、これまで多くのビジネスパーソンが漠然と抱いていた不安を的確に言語化しており、大きな反響を呼んだ。多くのメディアでも取り上げられ、発表後すでに150万以上という驚異のダウンロード数をカウントしている。

本書はそのレポートにより分かりやすい解説を加え、書籍化したものだ。これまで日本という国の仕組みを築き、守り続けてきた経済産業省の次代を担う若手メンバーが「今の日本」に真摯に向き合った結果のレポートだけあって、多くの示唆に富む内容になっている。

まず、メンバーらが指摘するのは「男性は正社員になって定年まで勤めあげるもの」「女性は結婚して、出産して、添い遂げるもの」というかつての標準的な生き方は既に破綻しているということだ。そして、「少子高齢化」や「母子家庭の貧困」など日本が抱える社会問題に立ち向かうために、書籍『LIFE SHIFT』で浸透した「人生100年時代」の到来を見据えながら、古い価値観から脱却する必要性を強く訴えている。

彼らが提唱するこれから持つべき新しい価値観は、大きく分けると以下の4つだ。

1) 人生100年、スキルを磨き続けて健康な限り社会参画(⇔60歳で定年退職し、年金暮らし)
2) 子供や教育に最優先で成長投資(⇔高齢者は国/現役世代に支えられるもの)
3) 延命治療は本人の意思に応じて(⇔治るまで病院であらゆる治療を試すもの)
4) 意欲と能力ある人が公を担う(⇔公の課題は官が担うもの)

総じて言えば「全て自己責任」の時代が来るということだ。こう書くとこれからの未来に不安を抱える方もいるかもしれないが、対処法はある。本書には数名の有識者と経産省若手プロジェクトとの対談も収録されているが、その中で経営共創基盤CEOの冨山和彦氏は「現実と向き合い、限られた時間の中で手を打ち、不安よりも少しだけ大きい希望を感じられるようになることが大切である(要約)」と述べている。

これから必ず来る自己責任の時代。いち早く現実と向き合うことができるのか。その時に不安をただ感じてしまうのではなく、その不安よりもほんの少し大きい希望を感じられるように、どんな準備ができるのか。この本はそんなことを考える大きなきっかけになるだろう。

この本を読み、何をすべきかを考え、行動を開始すれば、必ず未来は希望に満ち溢れたものになる――私はそう確信している。

不安な個人、立ちすくむ国家
経産省若手プロジェクト(著)、文藝春秋
1620円

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