『ビジネス数字力を鍛える』から「ビジネス数字力とは」を紹介します。
ビジネスは、数字やその分析(定量分析)なしには成り立ちません。実際に、感覚では「何となく行けそうだ」と思っていた新規プロジェクトが、数字を精査してみたところ、実は無理筋だったということはよくある話ですし、部下からの報告について「何かおかしい」と思って調べたところ、報告されていたデータが間違っていて実態を反映していなかったということもしばしば起こるものです。正しい意思決定をしたり、多くの人を納得させる上で、数字を正しく使いこなすことはビジネスパーソンの必須条件と言ってよいでしょう。
しかし残念ながら、「数字」や「計算」というものに苦手意識を持たれている方も少なくありません。「自分は数字が苦手」と広言する人は、「自分は経営の素養がありません」と言っているようなものです。それでは若いうちはなんとかなっても、結局どこかで行き詰ってしまいます。幸い、数字に苦手意識がある人でも、適切な手順(ステップ)を理解し、それを踏んでいけばある程度は効率的に目的を達成することができます。基本的なステップを押さえることが結果につながることを、しっかり理解しておきましょう。
(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)
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ビジネス数字力とは
ビジネスパーソンに必要な数字力には、「数字を作る力」と「数字を読む力」の2つがあります。
本章のケースの主人公・高田君のように、実務担当者として最前線で活躍している場合には、さまざまなデータを集め、意味のある数字を作る力を高めることが重要になります。一方で、マネジメントする側、もしくは意思決定をする側になったときには、他部門や部下から提出された数字を瞬時に読み解く力が求められるでしょう。
数字を作る力と読む力は、表裏一体の関係にあり(図参照)、同時にレベルアップしていくことが望ましいと言えます。
この2つの力のうち、数字を作る力を身につければ、数字を読む力はある程度までは自ずとついてくるので、まず意味のある「数字を作る」考え方を紹介していきます。
数字力を高める7ステップ
ビジネスにおけるさまざまな検討を進めるときは、常に数字や事実が重要視されています。そのため、「まずは数字ありき」と気持ちが急いてしまうせいか、ケースの主人公・高田君のように、やみくもにデータ集めに走ってしまう例が少なくありません。しかも、データなどを集める作業の前に十分な検討がなされないため、無駄な作業が増えてしまう……。高田君がたどった悪戦苦闘の経緯は、皆さんの周囲でも見受けられるのではないでしょうか。
これをプロセスに分解してみると、以下のようになります。
(1)とりあえず、データを集めてみる
(2)そして、とりあえず、エクセルなどにデータを入力し、表やグラフを作ってみる
(3)そして、指示を出した上司に何かを伝えたいのだが、何を伝えてよいかわからない……伝えたとしても伝わらない
(4)そして、その堂々巡り
こうした状況は、若手だけが陥るわけではなく、経験のない分野について検討するときなどは、ベテランのビジネスパーソンでもやってしまいがちです。
こんな状況を打破するために、図に示す7つのステップ(数字力を高める7ステップ)を提案したいと思います。
第1章ではまず、ステップ1を中心に、ステップ3までを説明します。この7つのステップは、どんな場合でも精緻に踏まなくてはならないというものではありません。それぞれの検討の中で、状況に応じて省略してよいステップ、逆に重きを置くべきステップなどがあります。とはいえ、今自分はどの段階にいるのかを意識することで頭の整理ができることは間違いないので、常にこのステップを意識していただきたいと思います。
各ステップの意味は、図中に示したとおりです。今の段階では、7つのステップを踏むのだ、ということを覚えておけば十分です。
(本項担当執筆者:グロービス経営大学院 経営研究科 研究科長 田久保善彦)
『ビジネス数字力を鍛える』
グロービス経営大学院/田久保善彦 (著)
1728円