会社の存在意義 vol.2 

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99年9月3月付けのコラム「会社の存在する意義は? vol.1」の結論を書いていなかったことを思い出したので、 その結果ついて説明することとした。

結論から言うと、グロービスは公開せずに、社員が株式を持つパートナーシップに近い会社形態として、長期にわたって質が高いサービスを提供し、僕らがやりたい事業に取り組むこととした。この結論に至るまでに、数か月の間社内で、侃侃諤諤の議論をした。

僕らは常に、迷ったらグロービスのビジョン、ミッションと経営理念(グロービス・ウェイ)に立ち返り、答えを求めることにしている。確かに、そこに答えが書いてあった。

僕らは、決して会社の成長や利益の増大を目標としているわけではなく、また短期的なお金持ちになることも目指していない。僕らがやりたいことは、新たな日本社会に必要なヒト、チエ、カネというインフラを提供し、社会の創造と変革を行うことである。つまり、学校を通して数多くの優秀なビジネスリーダーを輩出し、研修を通して企業の変革の一助となり、出版などにより社会に新たな知恵を発信し、ベンチャー・キャピタルとして新たな産業を生み出すことである。

また、僕らは、起業家プロフェッショナル集団として、社会・個人・法人に新たな価値を提供したいと思っている。グロービス・ウェイの理念である、①ビジネスを通しての社会貢献、②自己実現の場の提供、そして③理想的企業システムの実現、に照らし合わせた結果、公開しないほうが得策であるとの結論に達した。

幸い、株式のほぼ100%を社員が持っている会社であり、株主からのプレッシャーもない。また、基本的には、大きな投資がいらないビジネスで、投資額によって差別化できるものでもない。そのため、株式を公開して資金調達する必要もなかったということも、この結論に至った一つの要因である。

公開すればかなりの個人資産を形成できるし、チヤホヤもされるし、はたから見たらよい感じに見えもしようが、そのいずれにも、正直いって僕はあまり興味がない。お金儲けがすべてではないので、何の迷いもない。いずれにせよ、天国に資産は持っていけないのである。それよりも、僕らの理念とミッションに従って、ビジョンを実現していくことのほうがずっと大切だと思っている。

僕は、いつも言っているが、

①楽しい仲間がいて
②好きな仕事ができて
③自分の能力が高められて
④社会に貢献できて、しかも結果として
⑤相対的に良い収入があれば、ベストだ

と思っていた。ウォーレン・バフェットは、「お金のために働くのは、お金のために結婚するのと同じでむなしい」、と言っていた。まったく同感である。やはりよい仲間がいて、日々が楽しくないと意味がない。

先のコラムで、会社の価値をはかるのには、時価総額が適切なのか? という疑問を投げかけた。くしくもそこで挙げた2社ともピーク時から90%以上も時価総額が下がっている。

僕の今の結論としては、会社の価値は時価総額では決まらないと思っている。売上高、利益額、ROEなどの数値では言い表せないのではないかと思っている。どれだけ社会に対して良いことをしているかが、最も重要である気がしている。今、ベンチャー・キャピタリストとして投資をしているが、決して数値だけでは投資をしない。どれだけ社会に価値を生み出すのか、そしてその価値をいかに利益に直結させるのかを一つの尺度にしている。「お金を儲けよう」だけでは、金だけがほしい人しか集まらない。その人たちは、お金で必ず去っていく。

やはり、とことんまで理想を追い求めて、崇高なビジョンとミッションを掲げ、社会への貢献を第一に考える会社でありたいと思っている。世の中に一つぐらい、そういう愚直な会社があってもよいのではと思う。決して時価総額は高くないけれど、ごく少数の人がその価値を認めてくれたら、とても嬉しく感じる。

今後とも、グロービス・ウェイにある「理想的な企業システム」を創ることに真っ正面から取り組もうと思っている。

 

京都大学工学部卒、ハーバード大学経営大学院修士課程修了(MBA)。住友商事株式会社を経て、1992年株式会社グロービス設立。1996年グロービス・キャピタル、1999年 エイパックス・グロービス・パートナーズ(現グロービス・キャピタル・パートナーズ)設立。2006年4月、グロービス経営大学院を開学。学長に就任する。若手起業家が集うYEO(Young Entrepreneur's Organization 現EO)日本初代会長、YEOアジア初代代表、世界経済フォーラム(WEF)が選んだNew Asian Leaders日本代表、米国ハーバード大学経営大学院アルムナイ・ボード(卒業生理事)等を歴任。現在、経済同友会幹事等を務める。2008年に日本版ダボス会議である「G1サミット」を創設。2011年3月大震災後に、復興支援プロジェクトKIBOWを立ち上げ、翌年一般財団法人KIBOWを組成し、理事長を務める。2013年6月より公益財団法人日本棋院理事。いばらき大使、水戸大使。著書に、『創造と変革の志士たちへ』(PHP研究所)、『吾人(ごじん)の任務』 (東洋経済新報社)、『人生の座標軸』(講談社)等がある。

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