キャリアを築いていく上で「リーダー」のあり方について考えることを避けては通れません。「早くリーダーに昇格したい」「リーダーとして手ごたえを感じている」などとまっすぐに意欲を燃やす方がいる一方で、「リーダーになってみたいが、自分は向いていないのではないか」「リーダーに任命されたが、実力が足らないのではないか」など、様々な想いを抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回はグロービスのヒト系(人事・組織関連)科目ほかで登壇する林恭子に、「リーダー」へのそんな気持ちに関わるおすすめの本を聞きました。
皆さんにお伺いしたいことがあります。
リーダーは、「特別な人がなるものだ」と思っていませんか?
「優れた人や仕事のできる人、あるいは人間的魅力にあふれた人がなるものだ」と。
実はそうとは限りません。誰でも、リーダーになれるのです。今回はそのことを皆さんに知って頂きたいと思い、3冊の本を選びました。
『リーダーシップの旅』
皆さん、“リーダー”と聞くと、どんな絵が浮かんできますか?多くの人を率いている人物のイメージを持たれた方が多いのではないでしょうか。
しかし、1冊目の『リーダーシップの旅』では、必ずしもそうではないと語られています。「多くの人を率いて行こう」と思うところがリーダーのスタートではないのです。
まずは、自分自身で、自分の心に問うてみる。どんな未来があったら素敵だと思うのか。そのことをこの本では、「見えないものを見る」といいます。
見えてきた未来があっても、自分にしか見えないのですから、最初は自分1人だけで立ち上がって向かうのかもしれません。でも、自分自身をリードすることも立派なリーダーシップの発露です。その前進する姿に、誰かがついてきたら(フォロワーができたら)、その人はリーダーになるのです。
そして、あなたと一緒に歩き始めるフォロワーがどんどん増えていきます。やがてその人々と力を合わせてものごとを大きく進めていった先には、社会をも変革していくことになるのです。
ここで大事なのは、一番最初の「見えないものを見る(ありたい未来のビジョンを描く)」ということです。
あなたには、何が見えているでしょうか?それに対して、実現したいという渇望があるでしょうか?自分自身とのそんな対話から、リーダーシップの旅がはじまるのです。
『リーダーシップの旅 見えないものを見る』
著:野田 智義、金井 壽宏 発行日:2007/2/16 価格:858円 発行元:光文社
『ストレングス・リーダーシップ』
もう一つ、皆さんに質問です。
リーダーになるには、体力測定のようなスパイダーチャートで、すべての能力項目が高いレベルに達していないとならない、と思っていませんか?
2冊目の『ストレングス・リーダーシップ』では、そうではないと述べています。むしろ、あらゆることに秀でようとすると、傑出した存在になれない、とまで。有能なリーダーは、「万能」なのではなく、どこかに特化した「強み」を活かしている、と言うのです。
本書は、強みの診断で知られる『ストレングス・ファインダー』の関連書です。個々人が持つ強みを大いに活かしながら優れたリーダーシップ行動をとるためにどうしたらよいか、という具体的なアドバイスやヒントがたくさん紹介されています。
リーダー一人で万能になる必要はないのです。 いかにメンバーの持つそれぞれの強みを解き放ち、協働することで、最強のチームパフォーマンスを出していけるか……。そう考えると、なんだかわくわくしてきますよね。
『ストレングス・リーダーシップ: さあ、リーダーの才能に目覚めよう』
著:トム・ラス、バリー・コンチー 訳:田口 俊樹、加藤 万里子 発行日:2013/3/1 価格:1,800円 発行元:日本経済新聞出版社
『生き方』
人々を率いる、多くの人々の上に立つ。リーダーにはそんなイメージがありますが、難しいことを考えるより先に、「すべきこと」がある――。
そんなメッセージを伝える3冊目の本、『生き方』を書いたのは、2022年にその生涯を閉じた名経営者、稲森和夫氏。ゼロから京セラを一大企業へと創り上げ、晩年には日本航空の再生までを果たした、偉大なビジネスリーダーです。
稲森氏の「まずは、一人の人としてどのように生きるべきか」という哲学がわかりやすく書かれているのがこの本です。
どんなときも、一生懸命に仕事をすること、感謝の心と利他の心を持つことなど、時代が変わっても普遍的に大切なこと、現代を生きる私たちが忘れかけていることを思い出させてくれる1冊です。
人としての生き方が美しい人に、きっと周りの人は信頼を置き、ついてくるはずです。稲盛氏の人生観を鑑み、あらためて自分が生きるうえで大切にしていることを考えてみてはいかがでしょう。
『生き方』
著:稲盛和夫 発行日:2007/2/16 価格:1,870円 発行元:サンマーク出版
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