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ファクトと先人の知恵なくして良き仮説なし

投稿日:2017/11/11更新日:2019/04/09

『ビジネス仮説力の磨き方』から「『良い仮説』作りの2つの基本要件」を紹介します。

ビジネスを好ましい方向に導く良い仮説が、いきなり何の努力もしていない人間に訪れることはそうそうありません。一般常識も含め、常日頃から業界や職場の情報などを収集し、かつ問題意識をもって考えているからこそ、役に立つ仮説が閃く可能性が高くなるのです。そしてその可能性をさらに高めるのが経営学の知識です。先人の知見を活用することで、無駄を省くことができ、より効果的な仮説に早くたどりつくことができます。これは科学の世界でも同様です。有名なニュートンとリンゴの逸話も、ニュートンがさまざまな観察や分析をし、また過去の学問(数学など)をしっかり勉強していたからこそ「質量の積に比例し、距離の二乗に反比例する、万有引力という力が働く」という非常に画期的な仮説とその検証にたどり着いたのです。千里の道も一歩からと言います。億劫がらずにこうした努力を積み重ねたいものです。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

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「良い仮説」作りの2つの基本要件

さて、仮説の立て方については後述するとして、ここでは、良い仮説を立てるために必要な基本要件として、「ファクト(事実)に基づいて考えること」と「経営の知識を押さえていること」の2点を強調しておきます。

ファクト(事実)に基づいて考える

「ファクト(事実)に基づいて考えること」は、説得力のある主張やアクション案を導くためにも不可欠の要因です。どれだけ論理展開が正しくても、その論理展開に用いられている情報が事実、もしくは誰もが疑わない価値観(「人殺しはよくない」「政治には民意を反映させるべき」)でなければ、それは単なる思い込みや当てずっぽうと言われてもしかたありません。

たとえば、ある小売店の店主が、「集客力が落ちている」と感じていたとします。これが事実であれば、「品揃えが悪くなってきているのではないか」「顧客への情報提供がうまくできていないのではないか」など、さまざまな(原因の)仮説が生まれてきます。ところが、実際には集客力自体はほとんど変わっていないのだとしたら、そこから先の仮説やアクション案はすべて的を射ないものになってしまいます。

こうした例は意外に多いものです。典型的なパターンとして図に示したような状況があります。

先の例であれば、たとえば店舗周辺の通行人数と、実際に店の中に入った人数などを客観的に押さえておきたいところです。

こうした数字は、集めようと思い立ったからといって、日頃からシステマチックに測定していないと、なかなかすぐには集まりません。経営上(あるいは自分の仕事上)重要な数値については、常々意識して数字をとっておくことをお勧めします。たとえば、学習塾であれば、日々の稼働率(教室、講師)、出席率、顧客満足度、生徒の成績、離脱率などについては最低限フォローしておく必要があるでしょう。

経営の知識

次に、ビジネスにおいて良い仮説を導き出すには、やはりある程度は、ビジネスの作法とも言える「経営の知識」が必要です。具体的には、経営大学院の一年次科目となっているような、マーケティングや戦略、会計やファイナンス、組織行動学や人的資源管理等について、基本的なところは押さえておきたいものです。

これがないと、まったく的外れな仮説を出してしまうかもしれませんし、「そんなの昔からある」「全然、新鮮じゃない」などと言われかねません。あるいは「ローリスクハイリターンな商品だけで作った金融商品は人気が出るに違いない」という仮説を説明しても、金融業界の専門家からすると「……」となってしまうでしょう。

もっとも、ここで難しいのは、ビジネスの常識にとらわれすぎると、新しい発想が阻害されてしまいかねない、という点です。たとえば近年、アマゾンに刺激され、「ロングテール」で稼ぐ、というビジネスモデルがいくつか提示されました。こうしたモデルはパレートの法則(80-20の法則:上位20%のアイテムで、全体量の80%はカバーするという法則)を妄信しすぎていると、生まれてきません。なお、「ロングテール」も、条件や見方を変えると結局はパレートの法則に従っている、という議論もありますが、それでも一見、パレートの法則に反しているように見えるのは確かです。

経営の知識や常識は、素養としては知っておきながら、どこかでそれを疑い、それが成り立つ前提条件までさかのぼって理解しておくことが望ましいのでしょう。言い方を換えると、結果は同じ「常識外れ」に見えても、まったく常識を知らなくて、やみくもに新しいアイデアに走るよりは、常識を知ったうえで(ラーンしたうえで)、それを疑う(アンラーンする)ことがより望ましいのです。

経営のセオリーは押さえながら、枠にはまりすぎない――そうしたバランス感覚に基づく仮説こそが、時代をリードしていくのです。

(本項担当執筆者:嶋田毅)
 

『ビジネス仮説力の磨き方』
グロービス経営大学院/嶋田毅  (著)
1600円(税込1728円)

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