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RIZAPの成長戦略をアンゾフのマトリクスで考える

投稿日:2017/09/10更新日:2019/04/09

「結果にコミットします」と言う印象的なフレーズで、躍進を続けるRIZAP。会員数は累積約9万人(2017年7月時点)、現在は英会話やゴルフ、料理分野へも進出しています。

事業を運営するRIZAPグループは、2003年に瀬戸健氏が健康食品やダイエット食品を扱う「健康コーポレーション」として創業。グループ企業40社、連結売上950億円を超える一大企業です。

同社の経営理念は「人は変われる。を証明する」。この理念のもとに掲げられた中期経営計画『COMMIT 2020』では、「自己投資産業でグローバルNo.1ブランドとなる」ことを目標とした積極的な拡大思考がうかがえます。

こうした企業の成長戦略を整理し、改めて留意すべき示唆を与えてくれるのが「アンゾフのマトリクス」です。もともと軍事用語である「戦略」という言葉を経営の世界に持ちこんだ経営学者、H・イゴール・アンゾフが提唱したフレームワークです。多角化の方向性について、横軸に製品、縦軸に市場をとるマトリクス図に「市場浸透」「新製品開発」「新市場開拓」「狭義の多角化」を当てはめて考えます。

 

ただし、単にこのマトリクス図に事業を当てはめるだけでは何の意味もありません。左上から始まった事業からいかに成長戦略を描いていくのか、いったん風呂敷を広げて考え、抜けている施策を見つけ、課題を洗い出すことにこそ意味があります。たとえば、右上の「新製品開発」については、既存の顧客資産がどの程度活用できるのか否か。左下の「新市場開拓」については、既存の商品製造・サービス提供ラインが活用できるか否か、そういった点を洗い出していきます。

では、RIZAPの事業の一部をアンゾフのマトリクスに当てはめてみましょう。

RIZAPが中期経営計画でうたっている通り、同社の戦略はシナジーの最大化に他なりません。その意味で、まず「新製品開発」の領域で言うと、RIZAPグループにはジーンズメイト、夢展望といったアパレル企業が傘下に入っています。これはダイエットで変身した会員達が次に目指すのが、かっこいいファッションで着飾りたいという人間の欲求にも応えるもので、まさに既存の顧客資産が生きると言えるでしょう。

また、日本における「自己投資産業」の市場規模は7兆円とも言われています(※同社WEBサイト、矢野経済研究所調べ)。こうした領域ではまさにライザップが得意とする「モチベーション管理」が生きてくるでしょう。

・ヘルスケア、美容:2兆円
・スポーツ用品、ウェア:1.9兆円
・ゴルフ:1.4兆円
・ビジネススキル:4,900億円
・英語教育:3,100億円 

それでは同じく傘下にある、日本文芸社(実用書の出版)、北斗印刷(商業印刷)、タツミプランニング(住宅新築、リフォーム)といった、右下に分類される「狭義の多角化」領域については、どういったシナジーが生かせるのでしょうか。実用書や印刷なら本業を宣伝する媒体となりますが、住宅についてはどう捉えるか、丁寧な見極めが必要です。「狭義の多角化」をやると既存の製造ラインも既存の顧客資産からも、ずっとずっと遠くなる。だから難しい、注意せよといったメッセージがこのマトリクスには込められているのです。

ところで、ステイタス感あるクレジットカードとして人気のAMEXは、もともと「AMERICAN EXPRESS」の名の通り、運送業からスタートしています。同社の理念は「Care for Customer」。顧客に寄り添い最良のサービスを提供していく中で、旅行業やトラベラーズチェック、そしてクレジットカードへと進出していきました。

RIZAPは「ゲストに生涯寄りそうパートナー」として、AMEXのように事業を成長させることができるのでしょうか。そしてそこで生きてくるシナジーとは何なのでしょうか。今後の動向がますます気になります。
 

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