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『The New Business Road Test』

投稿日:2007/12/13更新日:2019/04/09

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この新書によって、日本の起業家は、可能性を秘めた新規事業機会を成功に導く方法論を得られる。London Business SchoolのJohn W. Mullins教授が執筆した『The New Business Road Test』(邦題は『ビジネスロードテスト-新規事業を成功に導く7つの条件』)は、起業家が、新規事業の機会について、それが導入するに値するものか見極めるのを助け、また、うまく行きはしないアイデアに貴重な資本を投下せぬよう防ぐものである(本稿は10月10日に掲載した英文記事の対訳です)。

『ビジネスロードテスト』は、7つの重要な領域(を評価させること)によって、新規事業の機会を窺っている人たちを助けるものだ。これらの領域が焦点を当てているのは、「市場」と「業界」という、基本的には、あなた自身が将来、提供する可能性のある商品やサービスの「買い手」と「売り手」である。また、これらの領域は「マクロ」と「ミクロ」の両面からも、新規事業の機会を検討する。マクロの視点からは人口統計、競争のダイナミックス、新規加入の容易さなどの要因を含む購買決定を駆り立てるより大きな力を評価し、ミクロの視点からは、個々人の購買決定要因を見るのである。

この本はまた、成功と失敗に結びつくであろう要因を、以下のような質問によって起業家の立場から問いかけ、評価する。「その機会は、チームのビジネスミッションや個人の向上心、リスクの傾向に合ったものかどうか」「あなたのチームは実際にビジネスを遂行するうえで充分な経験と業界内におけるノウハウを備えているか」「あなたのチームはバリューチェーンに対して縦横無尽に結ばれており、臨機応変に取り組みの方法を変更できるか」。これらの問いかけにしっかりと答えることができてこそ、市場や業界の状態が予期せぬ変化を見せた場合、また何らかの障害が警告もなく発生した場合でも、確かな成功をつかむことができるだろう。

Mullins教授は本書に、7つの領域をより分かりやすくするため、有益な事例も示している。例えば、米国のWhole Foods Marketという有機食品を扱うチェーンは、より健康的な食品を「市場」が求め、拡大しつつあることに気づき、その市場ニーズを満たすため積極的にビジネスを展開していった。これは、成功が顕在化していなくても急成長する潜在力を秘めた市場には目を光らせていなければならないということである。逆に、好機となるまでは距離を置いておくべき「業界」も知らなければならない。例えば1980年代、米国の製薬業界は新規参入者に対して非常に高い障壁を設けており、そのために、多かれ少なかれ既存の事業者が保護される傾向にあった。今日では、ただ、後発医薬品の脅威や政府の圧力、小規模のバイオ関連企業からの新提案などが、こうした障壁を払いつつあり、小さな企業でも成功のチャンスを手に入れられるようになった。大切なのは(「市場」の事例と同様に)ある業界が現時点では魅力的に見えなくても、その状態がずっと続くわけではないと肝に銘じておくことである。

「ミクロ」にも視点を転じてみよう。eBayは強力なコミュニティーを形成する手法を見出し、そこの帰属するユーザーの購買行動から(個々にはわずかな金額を取り)稼ぎ出すビジネスを作り上げた。eBayの事例は、ビジネスの初期の顧客と強い絆を結び、口コミでビジネスの信頼性を広めてもらう重要性を示している。また例えば、NTTドコモの「iモード」サービスは、ダイヤルアップの通信費用に辟易し、安価なインターネットアクセスを求めていた顧客心理を利用して成功した。この背景があったからこそ、iモードという、低料金かつ信頼し得るモバイル・インターネットサービスが生まれたのである。ここでの教訓は、既存の事業者が無知や頑固さ、プライドといったものによって無視している市場に目を向けるべきということである。

チームがいかに夢を築き、いかに逆境に打ち勝つかを示した事例こそが、最も読者の興味を引くのではないだろうか。Starbucks CoffeeのHoward Schultz氏は、大企業でオシャレなコーヒーメーカーなどを取り扱っていた。ある日、彼はシアトルの小さな業者が、ニューヨークの大きな百貨店以上に、このコーヒーメーカーを多数、購買している事実に気づく。彼は個人的な興味から、シアトルに飛び、その業者Starbucksを訪ねた。するとそこには、コーヒー豆とコーヒーマシンの販売員がいながら、折角のプレミアムコーヒーを購入して飲むことはできなかったのである。シュルツ氏は、Starbucksの可能性に興奮し、「人々の一日の始まりを変える」というコンセプトを拡げられると信じた。そして25年後、彼はまさにそれを実現したのである。Mullins教授は、この事例、Starbucksが経験した紆余曲折を通じて、夢を抱き、それに向けて挑戦する大切さを示している。

事業計画を実行するうえでの教訓も、Palm Computingの例などを通じて詳細に描かれている。Palmは元々、他の手持ちのコンピュータの競合のためデザインされたものだった。しかし、Palmのチームは彼らの真の“戦い”の相手は、スケジュールや契約の記録に使った紙片を多くの人が乱雑に散らかしている状態にこそあると気づく。この重要な、成功に導く要因に気づき、事業の方向性を変更する能力がなければ、Palmのチームは(最終的に負けてしまったとは言え)巨大なパソコンメーカーと互角に戦う独自の道は拓けなかっただろう。Mullins教授は最後に、「結束」、或いは自身のビジョンだけに頼らない力に着眼している。成功を収める起業家は、自身の考えに何らかのインパクトを与える可能性のある人と対話し続け、また、そのアドバイスを受け、常に向上しようとしている。

本書の最後には、追加の資金を求めたり、自分の考えを実行に移す前に、起業家が実際に使用できるチェックシートなどもまとめてある。自分自身は起業家として成功する代償として支払うべきものを兼ね備えているか―。真剣に考えている人は、夢を追い求めるための資金と時間を費やす前に、『ビジネスロードテスト』を読むことを強くオススメしたい。(英文対訳:高井彰士)

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