2017年3月8日、「ビジネス書グランプリ2017 トークセッション ビジネスパーソンの価値ある読書を考える」が東京都内で開催された。ビジネス書グランプリは今年で2回めの開催。グロービス経営大学院は、教員が対象書籍の選定などで全面的に協力している。トークセッション第1部には、グロービス経営大学院を代表して副研究科長の荒木博行が登壇。フォーブスジャパンの谷本有香氏とともに、マネジメント部門賞に輝いた『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方』の著者、森岡毅氏からお話を伺った。森岡氏のメッセージのエッセンスをお伝えする。
谷本有香氏(以下、谷本): 受賞おめでとうございます。ご感想は?
森岡毅氏(以下、森岡): 壮絶なエネルギーと時間をかけて書いたので、読者の方々に評価していただいたことに感謝している。ありがとうございます。
荒木博行(以下、荒木): この本はどういう人をイメージして書いたのか?
森岡: 私は、もっと強いマーケターが日本に増えれば日本は20年続いたデフレから抜け出せると信じている。だから、もっと多くの人たちにマーケティングに興味を持ってもらいたい。メインで想定したのは、マーケティング自体を実務としてはやっていないが興味を持っている人、その入り口に立っている人だ。また、マーケティングを実務としてやっている人も、基本を確認するために読んでもらえればありがたい。
谷本: 日本には真なるマーケターがいないということに危機感があった?
森岡: 日本に強いマーケターが全くいないわけではなく、まだ足らないということ。日本は人口が減っていく。経済の伸びも停滞している。僕たちはいい。しかし、僕たちの子供の世界はどうなるのか。僕たちの子供の子供の世界はどうなるのか。日本が100年後にも豊かであるために、僕たちがやっておくべきことがある。
今は、マーケティングに理解のある経営者が必ずしも多くない。物事がなかなか変わらない。だから、若い人たちを刺激したい。マーケティングを身につけたら凄いことが起こるんだということを伝えたい。狭いながらも僕が会得したことを伝えたい。今の若い人たちが組織の中で上に上がっていけば、日本は変わるはずだ。そういう思いをこの本に込めた。
荒木: 具体的に3つほど「こんなことをやろう」というアドバイスをいただきたい。
森岡: 人の生き方は、千人いれば千通りの答えがある。あくまで僕の場合ということで聞いていただきたい。
第1に、人生の「目的」を明確にすること。自分は何のために生きていくのか、自分が生まれてきた意味は何なのか、自分なりの答えを持ったほうが人間は強くなれると思う。
第2に、目的を目指して「選ぶ」ということ。ほとんどの人は選べていない。例えば、今の会社で偉くなりたいと思いつつ、今の会社ではスキルが身につかないと思っている。会社なのか、スキルなのか、どっちかを選べと言いたい。僕はよく「会社と結婚しない」と言っているが、僕はそういう生き方を選んでいる。平穏無事な人生を生きながら、誰よりも早く経験を積むなどということはできない。そんな甘い話はない。
もちろん、平穏無事な人生を生きるのも一つの選択だ。しっかりと選んでほしい。そうしたら、上司が決断しないとか、会社がマーケティングを重視しないとか、ぶつぶつ文句言っていたらだめ。そういう道を選んだんだから。逆に、自分のキャリアは自分で磨くと選んだのなら、今の会社でダメなら他に移ればいい。僕はそうしてきたし、これからもそうする。そういう生き方を僕は選んだ。
目的を定め、選んでほしい。
第3に、前向きに「行動」を起こすことだ。
動物園で生きるくらいなら、ジャングルで今日死にたい。
荒木: 最後に一言。
森岡: 僕の文体は個性が強く、これでもか、これでもか、というスタイル。読むと暑苦しいかもしれない。中学校のとき国語の成績は1だった(笑)。でも全部ガチンコ、自分で書いている。読者の皆さんが、そこから何か有益なものを掴み取ってもらえれば、僕が生きてきた甲斐がある。
荒木・谷本: ありがとうございます。そして、おめでとうございました(会場拍手)
「読者が選ぶビジネス書グランプリ」とは
グロービス経営大学院、Forbes JAPAN、HONZ、フライヤーが共同開催する書籍顕彰イベント。「読者=ビジネスパーソン」の投票だけでランキングする。対象書籍は、2015年12月から 2016年11月に日本国内で刊行された書籍の中から選定。グロービス経営大学院教員の推薦書籍、HONZとflierで好評を集めた書籍など合計86冊。ジャンルは、イノベーション、マネジメント、政治・経済、ビジネススキル、リベラルアーツの5分野。最優秀の「ビジネス書グランプリ」は『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』(登用経済新報社刊)。総合ランキング一覧はこちら→「読者が選ぶビジネス書グランプリ2017★総合ベスト10」
トークセッションに登壇いただいたゲスト編集者・著者の皆さん。左から、松井未來氏(ダイヤモンド社)、九法崇氏(河出書房新社)、佐藤朋保氏(東洋経済新報社)、森岡毅氏、松島倫明氏(NHK出版)