2017年からiDeCo(個人確定拠出年金)が始まった。iDeCoとは、リタイア後の資金作りのために、月々の掛け金を積み立て、その資金を用意された金融商品で運用し、60歳以降に年金または一時金として受け取る制度である。掛け金は全額所得控除の対象となるため、税制上のメリットが大きい。ただし、どの金融商品を選ぶかは、加入者の自己責任となる。それでは、どのような金融商品で運用したらよいのであろうか。
結論からいえば、十分に長い期間投資を継続できるのであれば、リスク(年間の利回りの変動幅)が高く、したがって利回りの高い資産(たとえば株式)ほど、累積ベースでの投資利回りは高くなる。ただし、短期で解約すると、リスクの高い資産ほど目減りしてしまう可能性も大きい。
株価は新しい重要事実が公表されるたびに上下し、株価がどうなるかを予測することは、インサイダー情報を持っていない限り不可能である。それでは株式投資は無益かというとそうではない。株式投資は確かにリスクが高いが、利回りも高く、長期間保有していれば国債等の変動リスクの低い資産に投資するよりも利回りはかなり高くなる。
例えば、年利0.5%の国債に投資し、30年間保有(利息は同じ金利水準で国債に再投資)した場合、100万円の元本は30年後には116万円となる(=100万円×(1+0.5%)^30)。
一方、期待利回り(単利)が5%、良い年は15%、普通の年は5%、悪い年は-5%の年間収益率が期待できる株式に投資したとする。十分に長い期間投資を継続し、良い年、普通の年、悪い年の発生確率がそれぞれ1/3ずつとすれば、その年間平均利回り(複利ベース)は4.68%(=((1+15%)×(1+5%)×(1-5%))^(1/3)-1)となる。30年間投資を継続したとすると、当初の元本100万円は30年後には395万円(=100×(1+4.68%)^30)に増加する。
しかしながら、短い期間しか投資しなかった場合、これらのパターンの出現率が1/3ずつとなる保証はない。例えば1年間だけだと-5%かもしれないし、2年間であれば-5%が連続するかもしれない。
このことは、株式投資には、すぐ使わなくてはいけない資金を投入するのではなく、あくまでも余裕資金を充当し、極端なことを言えば、一旦投資したら忘れてしまい、新聞の株価欄は見ないようにすることが株式投資の秘訣である。果報は寝て待てということである。
さらには、株式以外のリスク性資産(一例を挙げれば、金や原油のようにできるだけ株式市場とは同じようには反応しない資産)も投資対象に含め、そして地域的には日本だけでなく国際的に分散して投資するほうが賢明であろう。