シェアリングエコノミーは資本主義を殺すのか 

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一般社団法人G1のフェローとして、G1サミット、G1ベンチャー、G1経営者会議などの企画・運営に携わる渡辺裕子が、各界リーダーや起業家たちと接する中で得た気付きを綴る連載。第3回は、シェアリングエコノミーの未来について考察します。(参考:G1サミット動画アーカイブ

最近、UberEATSにハマっている。Uberの契約ドライバーがレストランから料理を届けてくれるフードデリバリーサービスである。

これまでは店が自前で宅配スタッフを抱えることが多かった。宅配をUberに委託することによって、店は調理や店内でのサービスに専念することができ、いろいろなレストランのデリバリーを楽しむことができる。

面白いのは、Uberのドライバーが運送センターに待機しているわけではないことだ。自宅にいたり、街中で過ごしている。注文が入るとアプリを通じて知らされ、対応可能であれば応答して、自分の自転車やバイクに乗って、店に商品を受け取りに向かう。

いわばスキマ時間の活用だが、真面目にやると結構稼げるらしい。Uberがライドシェアであるのに対して、UberEATSはロジスティクスシェアといえるかもしれない。

「所有からアクセス」の時代へ

この数年、シェアリングエコノミーのサービスは急激に成長し、生活に浸透しつつある。

Airbnbは創業からわずか7年で、200万室の部屋が登録され、累計利用者数は6000万人に達した。時価総額は250億ドル(2015年時点)で、米国大手ホテルチェーンであるマリオット・インターナショナルの130億ドルを大きく上回る。創業者のブライアン・チェスキーとジョー・ゲビアが家賃を払えず、自宅のリビングにエアマット(Airbed)を敷いて朝食(Breakfast)とともに知人に貸し出した時、この隆盛は誰も予測していなかっただろう。

日本でも、個人の駐車場をシェアできるAkippa、スタイリストが選んだ洋服を月額制でレンタルできるエアークローゼット、ハイブランドのバッグをシェアするSHAREL、映画館や古民家などのスペースを借りられるスペースマーケットなど、この数年で続々とサービスが始まっている。

顕著な例は自動車で、2016年には国内新車販売台数が500万台を割り込む一方、カーシェアリングの会員数は前年比24%増となる84万人超となった。米国では、カーシェアリングの車両1台につき自家用車が15台減ったことが報告されている。

かつて自動車を持つことがステータスとされた時代があった。けれども、乗っている時間よりも停めておく時間の方が圧倒的に長い。しかも税金や駐車場代、車検といった保有コストがばかにならない。であれば、必要な時に必要なだけアクセスできればいいのではないか。

「所有からアクセスへ」――この流れは、至るところで社会を侵食し始めている。

「所有」の概念が経済システムを変える

シェアリングエコノミーは「所有」の概念を根底から変えてしまいかねない。

我々は以前にも「所有」の概念が大きく変わるのを目のあたりにしたことがある。18世紀半ば、産業革命によって、財の私的所有という考え方が普及した。いわゆる資本主義の根幹となる「私的所有」の概念は、経済システムを根本から変え、輸送形態や雇用慣習、都市システムさえ一変させた。

マルクスは「資本論」で、生産手段の私的所有から社会的所有を目指す社会主義社会への移行を主張した。100年近くの時間をかけた壮大な社会実験は、失敗に終わったかのように見えたが、インターネットの台頭によって再び「私的所有」の概念が揺らいでいる。

シェアリングエコノミーは資本主義を殺すのか

モノのシェアが行き着く先は、どのような社会が到来するのだろうか。

シェアリングエコノミーの台頭は、多くのマイクロアントレプレナー(個人事業主)を生み出した。UberEATSのドライバーがスキマ時間で稼いだり、余っている部屋や駐車スペースを貸し出してお小遣い稼ぎができるように。

一方で、雇用の縮小や市場のダウンサイジングを懸念する声もある。日本では自家用車のライドシェアは規制されているが、NYやロンドン、パリではタクシー運転手たちが「Uberは俺たちの仕事を奪うな」とデモを行なった。

シェアリングエコノミーは、資本主義を殺すのだろうか。

18世紀に農地の囲い込みを行なった地主たちが、資本主義社会の到来を予測できなかったように、もちろん未来は予測できない。しかし「シェア」の概念は、すでに一部の雇用をマイクロアントレプレナーたちによる業務委託に置き換え、市場経済を侵食しつつある。

かつて所有が富のバロメーターであることを誰もが疑わなかったように、ベビー服のシェアがあたりまえの環境で育った子どもたちが成人する頃には、シェアリングエコノミーの相互評価による信頼資本こそが富のバロメーターとなるのかもしれない。

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