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子供にもわかる、感情コントロールの秘訣

投稿日:2016/12/07更新日:2019/04/09

「僕は今日、怒っている」。11月中旬のある日、次男が食卓に着くなりこう漏らした。学校で弟の担任の先生が次男のそばを通りかかったとき、「君の弟が遅刻するので困っている」と指摘され、恥ずかしい思いをしたというのだ。

僕は夕食時に毎回テーマを決めて子どもたちに話をする「学びトーク」を行っている。次男の怒りをきっかけに、その日のテーマは「感情のコントロールの仕方」にした。

「知能には2つあるんだよ」と話を始めた。「頭の良さで話題になるIQ(知能指数)は考える知能だけど、これとは別にEQ(感情指数)、すなわち感じる知能がある。米国の心理学者のダニエル・ゴールマン氏によると、これらはまったく別の知能なんだよ」。子どもたちが話に引き込まれてきたのを感じながら続けた。

「ハーバード教育大学院のハワード・ガードナー博士によると、人間の能力というのは大きく7つに分かれるんだよ。(1)言語的知性(2)論理数学的知性(3)音楽的知性(4)身体運動的知性(5)空間的知性(6)対人知性(7)心内知性――だ」

「このうち学校のカリキュラムで教えるのは言語・論理数学・音楽・身体運動の4つの知性で、さらにペーパーテストで測れるのは言語的知性と論理数学的知性だけなんだよね」

「だけど僕の経験では、社会で何かを成し遂げるときに重要な能力は、人の感情を把握する対人知性、そして自分の感情をコントロールして相手に伝える心内知性だ。つまり学校で学ぶ能力と社会で成功する能力とはまったく別物なのだよ」

そこまで説明して「では、感情をどのようにしてコントロールすればよいと思う」と子どもたちに質問してみた。いつものようにいくつか答えを得てから、学びトークを続けた。

「感情には喜怒哀楽があるけど、悪い感情は抑制し、良い感情は増幅するのが、コントロール、つまり制御ということだよ。悪い感情、すなわち怒りや悲しみ、絶望感、妬み恨みなどは、人に伝えると相手も不愉快になるから抑制することが必要なんだよ」

「一方で良い感情、つまり喜びや楽しさ、希望感などは、増幅させて多くの人に分け与え、波及させていくといい。そうすると周りも皆、幸せな気持ちになり、明るく前向きになる。感情は伝播(でんぱ)するからね」

「では、怒りを感じたときには、どう処理したらよいと思う」。こうやって途中に質問を投げかけるのが学びトークの特徴だ。

「1つ目は『自分の怒りがなぜ湧き起こっているのか』を自分の頭で考えることだよ。感情の作用を頭脳の作用に切り替えていくこと。2つ目はとにかく気晴らしをすることだ」。次男の怒りが薄らいでいくのが感じとられた。

「対人関係を良くする要素は、(1)他人の気分に波長を合わせられる力(2)他人を自分の気分に同調させられる力――の2つ。優れたリーダーはその能力に秀でている。異性を口説く能力にも通じるところがあるんだよ」。ナンパの話をしようかと思ったが、話を戻した。

「大勢を前にしたスピーチなどのときにも感情を意識すべきなんだ。聞き手が実際に持ち帰るのは、情報や知識、ロジックなどの内容よりも、感情の占める割合がずっと大きいからだよ。日産自動車のカルロス・ゴーン社長が言っていたんだけど、スピーチの聞き手は翌日になると内容の9割は忘れてしまっているというんだよね。覚えているのは話し手の姿勢だ。『あのスピーチは迫力があった』とか『やる気満々だった』とか。そういう姿勢や感情なんだよ」

「多くの人に夢と希望を与えられるよきリーダーになるには、感情をうまくコントロールすることが重要だよ」と学びトークを締めくくった。次男はその頃にはすっかり怒りを忘れ、納得した表情を浮かべていた。

※この記事は日経産業新聞で2016年12月2日に掲載されたものです。
日本経済新聞社の許諾の元、転載しています。

 

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