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良いビジョンを生み出す方法: 3つの要素を高次元で満たせ

投稿日:2016/11/26更新日:2021/11/24

『グロービスMBAビジネスプラン』から「良いビジョンを生み出す方法」を紹介します。

良いビジョンを作ることは、経営資源を集めたり(特にベンチャー企業においては従業員や資金を集めることが非常に重要な意味を持つ)、従業員のベクトルを合わせたり、戦略策定の前提としたりする上で非常に重要な営みである。たとえばGoogleの初期のビジョンは「1クリックで世界の情報へアクセス可能にする」というものであったが、このシンプルで力強いビジョンがその後の同社の発展の礎となった。良いビジョンを作るためには、「やりたいこと」「やれること」「求められていること」を高い次元で満たすことが必要と言われる。ポイントは「高い次元」である。誰でもできること、自分でなくてもできるようなことでは、情熱も湧かないし、共感も得られないだろう。難しいことではあるが、安易に妥協せず、ストレッチした魅力あるビジョンを作ることが、結局はより大きなビジネスにつながるのである。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

良いビジョンを生み出す方法

どの企業も、できることなら良いビジョンをつくり上げたい、と思っているはすだ。はたしてどのようにすれば良いビジョンがつくれるのだろうか。

主に3つの観点が必要である。1つは、経営者の夢や理想から導かれる「やりたいこと」。2つ目は、現実的な経営資源に基づいた「やれること」。そして3つ目に社会からの要請である「求められていること」である。

この3つをベースに、新事業リーダーを中心に主要メンバーでディスカッションしながら、高い次元で同時実現できるように練り上げていくと、魅力的で、かつ現実的なビジョンが出来上がる可能性が高くなる。

以下、「やりたいこと」「やれること」「求められていること」の3つについて、もう少し考察してみよう。

やりたいこと

ビジョンは、基本的には新事業リーダーの夢や理想に基づいたものである。新事業リーダーが「こんな会社にしたい」と考えたことが、ビジョンに反映されるはずである。そうでないビジョンは、往々にして平板で魅力に欠ける。

一方で、新事業リーダーの夢をそのままビジョンにすれば良いビジョンができるかというと、そうとは限らない。新事業リーダーは得てして事業に対する思い入れが激しく、現実から離れすぎていたり、目指す事業の方向が必ずしも時代に合ったものではなかったりする。夢を持つのは重要なことだが、ビジョンは現実的かつ具体的でなくてはならない。

そのためには、まず新事業リーダーが自身を磨くことだ。さまざまな体験や学習(たとえば、著名な起業家のビジョンを勉強する)をし、さまざまな人と交わることで、単なる夢をより現実感あるものにしなくてはならない。信頼できる人々と議論することも有効だ。それにより、ビジョンの魅力度を推し量ったり、客観的な示唆を得たりすることが可能となるからだ。

やれること

やれることについては、自分の実力と、自社あるいは事業のリソースについての現状把握がまずは必要になる。

すでに会社が設立されていて新規事業を開発する場合は、自社のどこが強みで、どこが弱みかを把握しておく。当然のことながら、強みを生かせば経営資源を有効活用でき、市場でも優位に立てる可能性がある。

新しく会社を始める場合には、現在どのような経営資源があり、新たにどのような経営資源が得られるかを考えておく。ただし、最初からあまり制約を設けないほうがよい。優れた新事業リーダーの資質として、「現有資源に制約されないマインド」がある。現状資源の把握はもちろん重要だが、自分の能力や会社の能力も見据えながら「ここまでならできるはず」と高くストレッチした目標設定を行うことが重要である。

求められていること

求められていることに関しては、当然、市場や業界とマクロ環境の現実に目を向けることが必要となる。市場や業界についての情報とは、具体的には大きな市場トレンド、想定顧客の不満や潜在ニーズ、競争相手の情報、代替品についての情報、業界の商慣習に関する情報などである。

これらの情報は、その業界におけるチャンスを見つけるためにも有効である。たとえば、非効率な商慣習があれば、それを変えることで新規事業を生み出せる可能性がある。

ただし、ここで意識しておきたいのは、詳細な経営戦略を練るわけではなく、ビジョン設定のための情報収集をしているのだということである。したがって、細かな情報収集や分析をする必要はない。この段階で顧客のニーズを知るために大がかりなマーケティング・リサーチなどをしていたら、莫大な費用がかかってしまう。日頃から想定ユーザーや業界関係者の生の声を聞いておく、新聞・雑誌やウェブなどで情報収集するといった地道な努力を怠らないことである。

「求められていること」を考えるうえでもう1つ重要なのは、マクロ環境(政治、経済、技術、社会、人口動態など)についての情報である。たとえば少子高齢化は、さまざまな事業機会を生み出すマクロトレンドだ。また、近年では、CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)に対する関心が高まっている。そうした要素も含めて、社会が何を求めているかを考えることが必要となる。

以上、良いビジョンをつくるための 3つの要素を見てきた。繰り返しになるが、どれか1つに偏ることなく、最大公約数的な安易な妥協案で満足するのではなく、粘り強く、これら3 つの要素を高い次元で融合させることが求められる。

なお、既存企業の新事業におけるビジョン策定の注意点としては、本社や親会社の企業ビジョンや、ミッション、経営理念と合致しなくてはならないということがある(ミッションと経営理念の詳細は第2節を参照)。本社の経営資源を生かし、本業とのシナジー効果を生むためには、新規事業と本業が同じ価値観や未来像を共有する必要がある。そもそも本社の企業ビジョンと相反するようなビジョンを掲げた事業は、計画の段階で却下されてしまうであろう。

(本項担当執筆者: グロービス出版局長 嶋田毅)

次回は、『グロービスMBAビジネスプラン』から「顧客への提供価値と製品・サービス」を紹介します。
 

『[新版]グロービスMBAビジネスプラン 』 
グロービス経営大学院 編著
ダイヤモンド社
2,800円(税込3,024円)

 

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