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顧客への提供価値と製品・サービス: 顧客に「嬉しさ」を伝えよ

投稿日:2016/12/03更新日:2021/11/24

『グロービスMBAビジネスプラン』から「顧客への提供価値と製品・サービス」を紹介します。

あらゆる製品・サービスは何かしらの価値を顧客に提供しています。その価値が値段の割に大きければ強く支持され、逆の場合はあまり売れないという結果になります。顧客に対する提供価値は、言い方を変えるとどのような「嬉しさ」を顧客に提供しているかということです。こうした「嬉しさ」は可能ならばなるべく可視化し、わかりやすく伝えることが望ましいでしょう。たとえばビジネススクールというサービスであれば、学位取得後の給与増加額、○○年以内にCEOになる比率などです。往々にして製品・サービスの提供者は、提供者側の視点から細かいスペックに必要以上にこだわってしまうことがあります。しかし、最終的にビジネスの成功を左右するのは顧客です。顧客の視点に立って、彼らに対して本質的にどのような「嬉しさ」を提供すべきなのかをしっかり考えることが大切なのです。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

顧客への提供価値と製品・サービス

標的市場と合わせて考えるのが、顧客への提供価値であり、さらにそれを具体的な形に落とした製品やサービスである。

顧客への提供価値

顧客への提供価値は、英語のValue Propositionを訳したものであり、顧客にどのような本質的な価値を提供しているかを示す。

たとえば、「企業内研修」というサービスの提供価値は、「人事部の機能をアウトソースすることで、人事部に時間的余裕を提供する」とも考えられるし、「人的側面から経営力強化をサポートする」とも考えられる。もちろん、その両方を含む場合もある。また、劇場は「非日常的な体験を提供し、心を豊かにする場」と考えることもできるし、「感動の機会を提供する場」と考えることもできるだろう。

鎌倉投信のケースでは、単なる投資商品ではなく、「社会形成」や投資家の「豊かなこころの形成(投資家の満足度)」をも価値として提供している。

多くの人は、いきなり具体的な製品やサービスから発想しがちである。それ自体が絶対的に悪いというわけではないが、往々にして顧客が何に困っているのか、何を提供されると喜ぶのか、という本質的な顧客ニーズを見逃す危険性がある。

また、具体的な製品やサービスにとらわれてしまうと、誰が本質的な競争相手なのかを見逃す危険性もある。たとえば、歳暮や中元用の高級ハムのセットは、他の肉製品と競合するのではなく、「歳暮や中元に向く、見栄えがよく、それでいて実用的な贈り物」、たとえばビールや洋酒、調味料のセットなどと競争することになるだろう。であれば、提供価値もそのように把握し、同様の提供価値を持つ製品・サービスとの差別化を図っていかなくてはならない。

こうした理由もあって、近年のビジネスプランでは、顧客にとって本質的な提供価値が重視されるようになっている。そこでユニークネスを追求することが、根源的なビジネスの差別化へとつながっていく。

製品・サービス

事業とは必ずしも1つの製品やサービスだけから成り立つものではなく、提供価値を実現するうえで、複数の製品・サービスを扱う必要がある場合は多い。しかし、どのような事業であれ、それをブレークダウンしていくと、必ず個々の製品・サービスに行き着くし、新規事業では当初は単一の製品・サービスのみを扱うことも多い。

製品・サービスは、抽象的になりがちな提供価値を具体的な「モノ」や「コト」に落とし込んだものとも言える。そのため、ビジネスプランでは、扱っている製品やサービスを具体的に示す(場合によっては写真などを示す)ことが半ば常識化している。

なお、製品は形のある財を、サービスは形のない財を指すことが多いが、本節では以降、便宜的に両者を合わせて製品と呼ぶことにする。

製品を検討する際には、製品を単に外形的な特徴のみでとらえるのではなく、「ホールプロダクト(Whole Product)」として考えるのが有効だ。

たとえば自動車という製品であれば、自動車本体のデザインや性能はもちろん重要だが、それだけが自動車という製品を構成しているわけではない。ブランドイメージや、その自動車のオーナーのイメージ、トラブル畤(部品が壊れたなど)の対応力も、広義の製品に含まれる。

つまり、顧客は、その製品に付随する機能、すなわちブランドやアフターサービス、情報などをすべて総合して提供価値を判断するのである。

病院の例を考えてみよう。そのメインの価値は医療行為だが、それだけで顧客が病院を選ぶわけではない。病院の立地、駐車場、待ちスペースの快適さ、入院施設の充実度、医師や看護師やコメディカルの態度などが総合されて、顧客(患者)の満足度に影響を与える。どんなに良い医療を提供したとしても、駅から遠くて。待ちスペースが窮屈で、コメディカルの態度が悪かったら、どれほど素隋らしい提供価値を謳ったところで、実際に利用してもらえはしないだろう。

このように顧客が実際に製品を購入する際に重視する要因をKBFという。新事業リーダーとしては、標的市場と彼らへの提供価値を正しく認識したうえで、具体的な製品設計を行い、かつKBFをしっかり満たしていくことが必要である。

製品コンセプト

実際の新製品開発に際しては、製品コンセプトを練り上げることが非常に重要だ。特に、メーカーなど、従来型のシンプルなビジネスモデルやバリューチェーンを用いている業界では、製品コンセプトづくりが、事業構想そのものにかなり近い意味を持つことになる。

製品コンセプトとは「ユーザー自身が、実際にそれを使用している場面をイメージできるレベルまで具体化されたアイデア」を指すものであり、提供価値を具体的にイメージ化するものでもある。たとえば、以下のような表現となる。

【提供価値】
スマートフォンを通じて、女性の健康サポートをトータルに提供する。

【製品コンセプト】
18歳から40歳までの女性を対象とした、モバイルを使ったサービス。入力された生理開始日をもとに、次回の生理日や排卵日を予測して知らせる。また、ダイエット情報や美容情報などを、本人の希望やパーソナル情報に応じて適宜配信する。Q&Aも充実させる。料金は月額固定とする。

(本項担当執筆者: グロービス出版局長 嶋田毅)

次回は、『グロービスMBAビジネスプラン』から「収益を実現する」を紹介します。
 

 

『[新版]グロービスMBAビジネスプラン 』 
グロービス経営大学院 編著
ダイヤモンド社
2,800円(税込3,024円)

 

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