グロービス経営大学院の「テクノベートMBA」特別講座、この10月期に開講する「テクノロジーとビジネスモデル」の講師、尾原和啓氏にクラスの意義と意気込みを聞いた。
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「テクノロジーとビジネスモデル」ではプラットフォーム戦略を中心に話す。ネットビジネスの成功モデルがリアルを上書きし始めている。ネットにおけるプラットフォーム戦略をしっかり勉強しておかないと、リアルのビジネスでも太刀打ちできない。
人工知能やロボットが世の中を変える時代に、激震地になるのが自動車産業だ。特に日本の場合は国を代表する輸出産業だから、シェアリング・エコノミー的な考え方にフィットしてUberみたいなビジネスが生まれ、車との接点が「保有」から「利用」にシフトすることは影響が大きい。さらに、例えば自動運転車が人を轢いて殺してしまったという状況ひとつをとっても、保険の問題をどうするのか、法律の問題をどうするのかなど、派生する課題が非常に多く、産業の上書きが連鎖していくのだ。
製造業が、自動化・自律化という流れの中で産業構造が大きく変わった時に仕事はどうなるのか。働くことは「義務」ではなく、人間にとっての「権利」であるというような時代になるかもしれない。そんな未来像を見越しつつ、次の2~3年で起きることは何かを考えることが非常に重要になっている。
自動車も、金融も、ヘルスケアも、あらゆる産業が再発明される。古い世代が進化して適応することもあるだろう。新しい世代が中心に座ることもあるだろう。いずれにしても、とんでもなく大きなチャンスだ。
僕は、新しく起こる具体的な変化は分からないが、どっちの方向に向かうのか、人がつまずきそうなところというものには直感力が働く。グーグルのCEO(最高経営責任者)にエリック・シュミット氏が就いた時、「アダルト・アドバイザーが必要だから引き受けた」と言ったが、僕の役割はこれから突っ走る皆さんがつまずかないようにすることだ。
インターネットはエンパワメント、あるいはデモクラタイズである。最前線で頑張る人にパワーを与える。多様性に溢れる中小企業、匠の技を持つ職人たちが再び力を得て、日本は強くなれる。日本が面白いのは組織内個人の豊かさだ。アパレルなどでの「カリスマ店員」はインスタグラムなどのフォロワーが数多くいて、店舗や会社よりも1人の店員のほうが圧倒的な影響力を持っていたりする。プラットフォームが、そうした個のパワーを活かすのだ。
これからの時代において、日本が世界と戦うための突破口について話したいと思っている。
(文・構成: 水野博泰/GLOBIS知見録「読む」編集長)