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「手抜き」って実は難しい?

投稿日:2016/09/09更新日:2019/04/09

みなさんは「手抜き」という言葉から、どんなイメージを思い浮かべるでしょうか。「手抜き工事」「手抜きの食事」など、日常で使うときには良い意味で使われることはまずありません。多くの方が思い浮かべるのは「○○せねばならないのに、やらなかった」というマイナスのイメージではないでしょうか。それが囲碁の用語となると、「手抜き」は必ずしも悪いことではなくなります。

では、囲碁の「手抜き」とはどういうものでしょう?

ご存知の方も多いと思いますが、囲碁では「手」という言葉は、「一手」「着手」など盤上に石を置くことを意味します。「手を抜く」とは、とある局面での応酬で相手の着手に呼応して次の手を打つのではなく、一見まったく脈絡のない別の個所に転じることを言います。必然性がありそうな個所に打たれないため、「手抜き」と呼ばれるわけです。

ただし、この「手抜き」は必ずしもマイナスになるわけではありません。他のもっと価値が高いものを選択したと、プラスに解釈される場合が多いのです。もちろん、それまで着手していた個所では「手を抜いた」ことに変わりはなく、相手に続けて打たれれば不利になります。とはいえ、新しい個所に転じることでより大きな価値を得られれば、「手抜き」は悪手にならないどころか、むしろ際どいやりとりを正確に見極め、全体として価値を増した高度な戦略として称賛されるというわけです。

囲碁の「手抜き」は、ビジネスにおける「優先順位」付けと同じ

この考えはビジネスにも応用できます。ビジネスでは多くの場合リソースが限られているため、何かを選択し、何かを捨てる必要があります。いわゆる「優先順位」の考え方です。そこで囲碁と同じように上手に「手抜き」ができればトータルプラスの効果を生むことができるはずなのですが、実は、これが案外難しいことなのです。私はその理由は2つあるように思います。

1つは、人間は目の前で起きている事柄から頭を切り替えるのが難しいため、です。囲碁も同じですが仕事でも、現在進行中のことに対する次の着手が“自動的に”選択されるケースがとても多いです。その場合、他の着手は意識に上ることすらありません。実際には目の前の着手は、選択肢の1つでしかないのですが、そう気付かれることすら稀なのです。目の前にないことを選択肢として俎上に載せて比較検討するためには、常にさまざまな可能性をリストアップしておき、一手進めるたびにゼロベースで見直すことが必要です。このプロセスはエネルギーがかかるためか、残念ながら省略されてしまうことが多いようです。

逆に、他の選択肢を考え出すと目の前のことがおろそかになってしまうケースも多いです。転職が良い例でしょう。いざ行動を起こすと、新しい会社を選ぶことばかりに思考が取られ、自社に残ることも一つの選択肢であることがすっかり忘れられてしまいます。一度頭が切り替わってしまうとそちらが「目の前のこと」になってしまうのです。

もう1つの理由は、他の選択肢に意識が及んだとしても、2つの異なるアクションの価値を比較できないため、です。多くの場合、異なる仕事は、異なる目的を持ち、異なるプロセスを取るため、両者を比較することは極めて難しいものです(コストや効果も異なる場合が多いです)。両者に共通な尺度が必要になりますが、そのためには上位の目的に照らしたより大きなスケールで判断する必要が出てきます。実務ではこれができずに結局、前例踏襲に落ち着くケースが多くなります。

このように、「手抜き」をするためには、実は色々なことを考える必要があります。常に複数の選択肢を比較しながら、より価値のある手を選ぶのは容易なことではありません。

良い「手抜き」とは結構難しいものなのです。

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