今年5月発売の『MBA 言語化トレーニング』の「Part4 Lesson18 コンピテンシーを言語化する」の一部を紹介します。
コンピテンシーとは、特定の仕事や活動を効果的に遂行するために必要な行動特性のことです。コンピテンシーは単なるスキルや知識ではなく、優れたパフォーマンスを残す人に共通する行動特性です。これを言語化しておくと、採用や育成のヒントにすることができます。
特に近年のビジネスにおけるキーワードは「標準化」です。
個性は活かしつつも、一定レベルのコンピテンシーを備える人材を多数擁する企業が再現性高くパフォーマンスを残し続けられるのです。
(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、PHP研究所のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)
仕事に必要な行動特性を棚卸ししてみよう
コンピテンシー(Competency)は、特定の仕事や活動を効果的に遂行するために必要な行動特性を指します。通常は組織において高い業績を残している個人を観察したり、ヒアリングしたりすることによって特定していきます。個人が職務を適切にこなすために必要な能力の総体を表しており、職場でのパフォーマンスの質や、当人のキャリアの成功を左右する要素とされています。
職務によって求められるコンピテンシーは異なりますので、その職務において重要なキーワードを洗い出していくことが第一歩となります。
たとえば、商品開発担当者であれば、「自社技術の理解」「顧客志向」「リサーチ力」「アイデア創出」「プロジェクトマネジメント」「部門横断的コミュニケーション」「費用対効果に対するこだわり」などです。
ケースにもよりますが、観察・ヒアリング対象の共通項に着目し、20個程度の要素を挙げたたうえで、特に優先順位が高いものを絞り込んでいくことが多いです。
コンピテンシーは、行動のベースとなる価値観や思考・性格などの要素を重要視する点が特徴です。また単なる知識とは異なり、定量化、可視化をしにくいという特徴があります。それゆえ観察やヒアリングに基づいた具体的で丁寧な言語化が求められます。
たとえば、商品開発者の「リサーチカ」に関するコンピテンシーであれば、次のように記述したりします。観察・ヒアリング相手に共通する度合いが高かった要素に特に注目します。
「市場のトレンド、顧客ニーズの深掘りに特に時間を使っている。表層ニーズのみにとどまらず、潜在的なターゲット顧客とコミュニケーシヨンをとることで、深層心理を探ろうとしている。競合製品の動向やその特性、顧客の評判なども満遍なく収集している。また、効果的なリサーチ手法の習得にどん欲に取り組んでいる。これらを活用することによって、新製品の開発過程において有用な情報を提供している」
端的にいえば、「それって具体的にはどういうこと?」を意識した記述が求められるのです。状況によっては、レベルごとにコンピテンシーの記述を行うこともあります。たとえば5段階で「5」の人にはこのような行動特性がある、「4」の人は……と記述するのです。コンピテンシーがしっかり定義されていると、企業としては高いレベルの行動を再現性高く提供することが可能となります。特に会社を規模化するうえで、コンピテンシーを言語化して定義することは非常に大切な営みとなります。
演習問題1
設定
あなたはある金融機関の人事課スタッフ。上司から、「優秀な営業担当者」のコンピテンシーを定義してほしいと依頼を受けました。
回答例・解説
ここで、以下のような書き方では不十分です。
「NG例」
高い顧客志向を持つ:顧客のニーズを正確に捉え、最適な商品やサービスを提案する能力を持つ。(他の項目略)
回答例や他の演習問題をごらんになりたい方は本書をご覧ください。
『思考力を高める 人を動かす MBA 言語化トレーニング』
著:グロービス 執筆:嶋田 毅 発行日:2024/5/22 価格:1,870円 発行元:PHP研究所