ジョン・コッターのリーダーシップ論と変革の8段階のプロセス

ジョン・コッターのリーダーシップ論とは

近年のリーダーシップ論の第一人者であるジョン・P・コッター(ハーバードビジネススクール名誉教授)は、多くの企業が変革に失敗している点に着目し、その理由を解明するとともに、いかにその成功確率を高めるかということを研究しました。

外部環境の変化が激しい現代では、変革しなければ企業は生き残れません。けれども、その変革を導けるリーダーが不足しているとコッターは主張します。そこで、提唱されたのが、リーダーシップとマネジメントの違いと、変革のための8段階のプロセスです。変革を起こすリーダーは、このプロセスを安易にスキップすることなく、適切に踏襲していくことが求められるのです。企業変革の必要性がますます高まる昨今、意識しておきたいものです。(本記事は、2021/12/08に加筆編集しています)

リーダーシップとマネジメントの違い

1980年代のアメリカでは、多くの企業が変革に取り組みました。その背景には、それまで経済の中心だった製造業が勢いを失い、日本企業など新興勢力が台頭するという外部環境の変化があります。多くの企業が変革に取り組み、失敗していくなかでジョン・コッターは「変革を成功させるリーダー」について研究します。

そこでコッターは、組織にはリーダーが圧倒的に不足していることが問題だと主張します。さらに、組織ではリーダーシップを発揮しようとして犯したミスを罰したり、リーダーを育成しようとしてマネジャー向けの育成手法をとっていると言っています。

コッターは、リーダーシップとマネジメントは別物であることを理解することがまず重要だと主張します。リーダーシップもマネジメントも、やるべきことを決定し、課題の達成に資する人脈や人間関係を築き、組織メンバーにきちんと仕事をさせるという点では、共通しますが、その具体的な手法が全く異なります。

マネジメントとは

マネジメントの役割は、「複雑な状況にうまく対処すること」です。複雑な状況をマネジメントするために、まず計画と予算を策定し、それを達成する能力を開発するために組織づくりと人員配置を行います。実行の段階では、状況をモニターする仕組みをつくり、計画とのギャップがあれば問題解決の計画を立て、組織を効率的に管理運営していきます。

リーダーシップとは

リーダーシップの役割は、「変化に対処すること」です。方向性を決め、ビジョンを描き、戦略を練ります。そして、ビジョン達成のためにメンバーの心を1つにし、人間の欲求や感情など根源的なものに訴え、変革を阻む困難を乗り越えて人と組織を導きます。大規模な変革時にはあらゆる階層でリーダーシップが必要になります。

リーダーシップとマネジメントの違い

上記のような違いを表にまとめると以下になります。

共通点 リーダーシップの具体的手法 マネジメントの具体的手法
①課題の特定(アジェンダ設定) 進路を設定(将来ビジョン) 計画の立案と予算策定
②課題達成を可能にする人的ネットワークの構築 1つの目標に向け組織メンバーの心を統合 組織化と人材配置
③実際に課題を達成させる 動機付けと啓発 コントロールと問題解決

出典:『新版グロービスMBAリーダーシップ』(ダイヤモンド社)

コッターはリーダーシップの不足に警鐘を鳴らしてきましたが、リーダーシップだけが重要だといっているわけではなく、マネジメントも同じくらい重要であると言っています。これらは補完関係にあり、優れたリーダーシップと強いマネジメントをバランスさせることが重要だと主張しています。

ジョン・コッターの8段階のプロセス

コッターのリーダーシップ論は、変革的リーダーシップ論の代表です。そこで提唱されたのが、リーダーが変革を成功させるための8段階のプロセスです。

変革を阻む8つのポイント

コッターは大規模な変革が進まないのは、8つの「つまずきの石」が原因であると言いました。すなわち、次の8つです。

  1. 内向きの企業文化
  2. 官僚主義
  3. 社内派閥
  4. 相互の信頼感の欠如
  5. 不活発なチームワーク
  6. 社内外に対しての傲慢な態度
  7. 中間管理層のリーダーシップの欠如
  8. 不確実に対する恐れなど

変革の8段階のプロセス

そしてこれらのつまずきの石を乗り越え、大規模な変革を推進するために、以下の8段階のプロセスが有効であると主張します。

ジョン・コッターの8段階のプロセス

出典:『新版グロービスMBAリーダーシップ』(ダイヤモンド社)

1) 危機意識を高める

市場と競合の状況を分析し、自社にとっての危機や絶好の成長機会を見つけ、検討していくことにより、変革に携わる関係者の間に「危機意識」を生み出すことができます。これがまず、変革を成功させる第1ステップになるとコッターは強調します。

2) 変革推進のための連帯チームを築く

変革をリードするための十分なパワーを備えたチームを築いていくために、変革の担い手を集めます。変革推進チームには、変革の主導に必要となるスキル、人脈、信頼、評判、権限があることが望ましいとされています。

3) ビジョンと戦略を生み出す

変革に導くためにビジョンを生み出し、ビジョンを実現するための戦略を立案します。成功した変革では、変革推進チームが簡潔で心躍るビジョンや戦略を策定しています。

ビジョンとは何でしょうか。コッターはビジョンを「将来のあるべき姿を示すもので、なぜ人材がそのような将来を築くことに努力すべきなのかを明確に、あるいは暗示的に説明したもの」と定義します。

さらに、優れたビジョンに備わる特徴として、次の6つを挙げています。

目に見えやすい…将来がどのようになるのかがはっきりとしたかたちで示されている
実現が待望される…従業員や顧客、株主などステークホルダーが期待する長期的利益に訴えている
実現可能である…現実的で達成可能な目標から生み出されている
方向を示す…意思決定の方向をガイドするために、明確な方向が示されている
柔軟である…変化の激しい状況において個々人の自主的行動とさまざまな選択を許容する柔軟性を備えている
コミュニケートしやすい…5分以内で説明することが可能である

4) 変革のためのビジョンを周知徹底する

シンプルで琴線に触れるメッセージをいくつものチャネルを通して伝え、ビジョンや戦略を周知徹底する。あらゆる手段を活用して、継続的に新しいビジョンと戦略をコミュニケートすると同時に、変革推進チームのメンバー自らが、従業員に期待する行動のモデルとなることも重要です。

5) 従業員の自発を促す

ビジョンが周知徹底されることで自発的に行動する人が増えていくように、変革を阻む障害を取り除くことが重要です。障害となりうる組織構造やシステムを変革することで、従業員がリスクを取り、いままで遂行されたことのないアイデア、活動、行動の促進が可能となります。

6) 短期的成果を実現する

業績上で目に見える短期的成果を生む計画を立案し、実際に短期的成果を生み出します。これらの短期的成果に貢献した人々をはっきりと認知し、報酬を与えます。

7) 成果を生かして、さらなる変革を推進する

短期的な成果をテコとして変革に勢いをつけ、変革のビジョンに馴染まないシステム、構造、制度を変革する。また、変革ビジョン推進に貢献する人材の採用、昇進、能力開発を行い、当初の変革を定着させる。

8) 新しい方法を企業文化に定着させる

変革ビジョンに基づいた新しい方法と企業の成功の関係を明確に示し、各階層のリーダーが変革を根づかせます。また、リーダーや後継者の育成を進めていくことで、変革を企業文化として定着させます。

コッターはこの8段階について、第1段階から順を追って進めることが重要で、途中のプロセスを飛ばしてはいけないと強調しています。

<参考>

*『第2版 人と組織を動かす能力 リーダーシップ論』ダイヤモンド社

*「ジョン・コッターの8段階のプロセス」については、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている『グロービスMBAリーダーシップ』の第1章より、ダイヤモンド社のご厚意により、一部編集し転載しています。本項担当執筆者:グロービス経営大学院 林恭子。

【新版】グロービスMBAリーダーシップ

著者:グロービス経営大学院 発行日:2014/4/18 価格:3,080円 発行元:ダイヤモンド社

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