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パス・ゴール理論とは?~『グロービスMBAリーダーシップ』から紹介

投稿日:2015/11/07更新日:2023/11/01

『グロービスMBAリーダーシップ』の第1章から「パス・ゴール理論」を紹介します。

1950年代までのリーダーシップ研究は、「普遍的に有効なリーダーの特性」も「普遍的に有効なリーダーの行動」も定義しきれませんでした。そこで登場したのが条件適合理論です。これは、仕事の難しさや部下の状況などの環境条件によって適するリーダー像は変わるというものです。これは直感的にも理解しやすく、リーダーシップ研究はさらに発展を遂げることになりました。条件適合理論の1つがパス・ゴール理論です。この理論では、部下の動機付けに当たり、どのようなパス(道筋)をたどればよいかをリーダーが把握する必要があるとされました。納得性は高い一方で、リーダーは部下の状況を正しく認識し、それぞれに対して適切な対応が求められるようになりました。リーダーの仕事はますます難しくなっていったのです。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

パス・ゴール理論とは

オハイオ州立大学の研究の流れをくむハウスたちは、「リーダーシップの有効性は、リーダーのとる行動によって、部下が動機づけられるかどうかによる」と考えた。また、部下が動機づけられるには、「部下がうまく目的・成果(ゴール)に到達するために、どのような道(パス)をたどればよいのかをリーダーが把握し、有効な働きかけをすることが必要だ」とした。リーダーシップを動機づけ理論、なかでも期待理論(努力をすれば成果が出て、成果が出れば魅力的な報酬がもらえる、とつなげてイメージできればモチベーションが高まるとするもの)と結び付けて考えたのである。1971年に発表されたこの理論を、パス・ゴール理論という。

この理論では、達成したいゴールに向け、リーダーが部下に有効なパス(道筋)を示すときには、2つの条件を念頭に置かねばならないとしている。1つは、集団がどのような環境的条件(直面している課題。権限体系、組織等)下にあるか、もう1つは、部下の要因(能力や性格、経験等)である。これらの組み合わせにより、そのときに有効となるリーダー行動は変わるとした。

リーダーの行動スタイルと影響を与える要素

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出典:スティーブン・P・ロビンス 『[新版]組織行動のマネジメント』 ダイヤモンド社、2009年 *引用者注:自己の行動の決定権限がどこにあるかという意識

ハウスは、リーダーがとりうる主な行動には、「指示型」「支援型」「参加型」「達成志向型」の4つのスタイルがあるとしている。そして、これら4つのリーダー行動が、それぞれどのような条件下で有効となるかは、下図のように考えられている。

リーダーの行動スタイルと効果的な条件

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出典:スティーブン・P・ロビンス 『[新版]組織行動のマネジメント』 ダイヤモンド社、2009年を参考にグロービスで作成

桜井(注)のケースに当てはめてみると、部下たちの報告に厳しく「ダメ出し」をするが、望ましいやり方を手取り足取り教えるでもなく、良い調査結果や提案を部下が上げてくるのを待つというスタイルは、しいて分類すれば達成志向型といえよう。しかし、部下の動機づけがうまくいっていないため、なかなか行動につながらないという状況である。

桜井自身が若い頃に接した達成志向型のリーダーシップを良いものとして記憶しているのも、当時の彼は強い動機を持っていて、その状況にうまくはまったという面が大きい。それを普遍的なものとして捉えたところに問題があったのだ。

ここでは、桜井チームのタスクは(困難ではあろうが)明確になっているので、もっと支援型の行動をとるべきだったということになろう。また、部下の自発性があまり高くない状況に着目すれば、指示型の行動も必要だったといえる。

このように、1人のリーダーであっても、自分がとる行動を状況に応じて変えるべきだとするのが、ハウスらの主張である。パス・ゴール理論では、それを環境要因と部下の要因という2つの条件から導き出した。

一方、部下の要因という条件をさらに深く掘り下げてリーダー行動を選択すること考えたのが、オハイオ州立大学のポール・ハーシーとケン・プランチャートである。

注)理論編に先立つケースの主人公

(本項担当執筆者: グロービス経営大学院 林恭子)

次回は、『新版グロービスMBAリーダーシップ』から「ジョン・コッターの8段階のプロセス」を紹介します。

◆グロービス出版


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