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サービス組織のマネジメント: 従業員満足と顧客満足は互いの鏡像

投稿日:2015/06/06更新日:2019/04/09

このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、重要パートを厳選して、抜粋掲載していく、ワンポイント学びコーナーです。

『グロービスMBAマネジメント・ブックⅡ』からのピックアップ第4回目となるとなる今回は、「サービス・マネジメント」章から「サービス組織のマネジメント」を選びました。サービス業では、サービスの提供にあたって、従業員と顧客が直接接する機会が多いという特徴があります。そのため、従業員の高いモチベーションは顧客に伝わりやすく、また顧客の満足度の高さがさらに従業員の満足度を高めます。それを自然発生に任せるだけではなく、採用や評価といった人事の仕組みの中に、こうした好循環を加速するような工夫を埋め込むことが強く求められます。

サービス組織のマネジメント

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【POINT】
サービス業には、顧客満足と従業員満足が相互に影響を与え合うサティスファクション・ミラー(鏡面効果)の考え方がある。顧客満足を高めるためにも、従業員満足を高めるように理念を浸透させ、エンパワーメントや人事システムを機能させることが重要である。

◆サティスファクション・ミラー(鏡面効果)

サービス業において、顧客満足と強い相関があると言われているのが従業員満足である。従業員が提供するサービスによって顧客が満足し、従業員に感謝を伝えると、その従業員は自分の仕事に誇りと愛着を持つようになることでモチベーションが高まり、さらに良いサービスを顧客のために創意工夫するようになる。

そして、より高品質なサービスを受けた顧客はさらに満足し、ロイヤルティを高めてリピーターになり、それがさらに従業員の満足度を向上させていく。このように顧客満足と従業員満足が相互に影響を与え合う、良循環の関係にあることを、サティスファクション・ミラー(鏡面効果)と言う。

◆理念浸透とトップのコミット

サービス業において、エンパワーメント(現場への権限・裁量移譲)を従業員満足度の向上につなげ、個々人の実力を最大限に発揮させるには、ミッション・ステートメント(企業理念や行動指針)の浸透が不可欠である。なぜなら、エンパワーメントされた従業員が現場で、自分の裁量で判断するためには、そのよりどころとなる判断の軸が組織全体で統一されている必要があるからだ。

ただし、その判断軸をルールや規則のみでしばってしまうと、現場で状況に合わせて工夫する余地がなくなり、場合によっては、提供するサービスが顧客の求めるものとはならず、結果として顧客満足度の低下につながりかねない。

判断軸のもとになるべきは従業員個人の価値観であり、個人個人がそれに従って自律的に判断し、行動する。その状態にするためには、従業員が会社の理念を自分の価値観に組み込んで体現すること、言い換えれば個々人の価値観と企業理念が同期していることが重要であり、それが高い顧客満足度の実現につながるのである

◆従業員満足度向上の施策

顧客満足度を高めるカギが従業員満足度にあるのだから、サービス企業は顧客だけでなく、従業員にもきちんと目を向ける必要がある。従業員のニーズに焦点を当てて満足度を向上させる経営アプローチを、インターナル・マーケティングと呼ぶ(顧客向けのマーケティングはエクスターナル・マーケティングと呼ぶ)。従業員満足度が向上すれば、クチコミなどでさらに優れた従業員を呼び込む効果も期待できる。従業員満足度を高めるうえでは、エンパワーメントに加え、人事システムにおける採用・育成・配置(業務付与)・評価・報酬のそれぞれにおいて工夫が必要である。

従業員が自分の力を最大限に発揮できる組織をつくり、従業員満足度の高い企業では、以下のような工夫がよく見られる。

(1)採用:学歴や技能、専門知識、経験だけでなく、価値観や性格を重視する。

(2)育成:スキルを強化する教育・研修のみならす、企業として目指すべき崇高な理念を明示し、その浸透に向けて十分な時間と手間をかけた教育・研修を行う。また、個々人のスキルレベルを可視化する工夫を取り入れ、スキルアップを動機づける。

(3)配置(業務付与):マニュアルやルールによってサービス品質を担保しつつ、業務付与においてはルーティンワークを超えた活躍を従業員に促す。現場から入った従業員が、その後の活躍や適性次第で管理職や経営職へと昇進する機会を与える。

(4)評価:定量的な結果指標による評価だけでなく、そのサービスの目的(理念)にかなう行動を評価・称賛する。また、アンケート等によって定期的に顧客の評価を受ける仕組みをつくり、社内では上司からの評価だけでなく、同僚や他部門の従業員も含めた360度評価による多面的評価を行う(個人の行動は見えにくいため)。

(5)報酬:金銭的報酬のみならす、非金銭的報酬(周囲の仲間からの感謝・称賛、ワークライフバランス、自己成長・能力開発の機会付与、労働環境の整備等)も含めたトータル・リワードという考え方で報いる。

(本項担当執筆者:グロービス・コーポレート・エデュケーション 内田圭亮)

サティスファクション・ミラー

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出典:ジェームズ・ヘスケット他著『カスタマー・ロイヤルティの経営』(日本経済新聞社)を参考にグロービスで作成

次回は、『グロービスMBAマネジメント・ブックⅡ』の「テクノロジー・マネジメント」から「テクノロジーとテクノロジー・マネジメント」を紹介します。

ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載しています)

 

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