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経営理念と戦略レベル~『グロービスMBAマネジメント・ブック』

投稿日:2015/02/07更新日:2021/10/27

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このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、重要パートを厳選して、抜粋掲載していく、ワンポイント学びコーナーです。

第1弾として、初版上梓以来、累計約40万部のベストセラーとなっている経営学教科書の定番『グロービスMBAマネジメント・ブック』(グロービス経営大学院編著、ダイヤモンド社刊)から、毎週末、1項目ずつご紹介します。経営学やMBAで学ぶ知識に興味のある方は、ぜひじっくり読み込んでください。

文末に、『グロービスMBAマネジメント・ブック』(改訂3版)の目次と、本シリーズで紹介していく項目を★印で示しておきます。

今回は、「経営戦略」の章から「経営理念と戦略レベル」をピックアップします。経営戦略が企業経営においてどのような位置を占めるのか、戦略にはどのような種類があるのか、しっかり理解しておきましょう。

経営理念と戦略レベル

【POINT】
経営理念やビジョンは企業の存在意義や使命を普遍的な形で表したものであり、経営戦略はそれを具現化するための基本的な枠組みだ。経営戦略は全社戦略、事業戦略、機能戦略から構成される。それぞれの戦略レベルにおいて、経営理念やビジョンとの一貫性や、他の戦略レベルとの整合性を持たせることが重要だ。

◆経営理念/ビジョン

経営理念(企業理念とも呼ばれる)は、企業の存在意義や使命を普遍的な形で表した基本的価値観である。経営理念を通じて、経営者は「会社や組織は何のために存在するのか、経営をどういう目的でどのような形で行うのか」といった基本的な考え方をステークホルダーに知らしめ、従業員に対して行動や判断の指針を与える。そうした価値観に対して従業員の共感が得られれば、企業内の求心力が高まり、働くインセンティブにもつながる。このように経営理念は企業文化の形成においても重要な役割を果たしている。

経営理念は行動規範や成功の必須条件、経営姿勢、企業の存在意義などさまざまな形で表現されるが、一般的には時代の流れを超えた長期的な視点で、社会(顧客)と従業員に関する考えを語ったものが多い。

これに対してビジョンは、経営理念で規定された経営姿勢や存在意義に基づき、ある時点までに「こうなっていたい」と考える到達点、つまり自社が目指す中期的なイメージを、投資家や従業員や社会全体に向けて示したものだ。

◆戦略レベル

経営理念やビジョンは経営者の意志や従業員の夢を表しているが、企業の現実の姿との間にはギャップが存在するものである。経営戦略はそのギャップを埋めるための具体的な方法論を示すものだ。経営戦略は通常、全社的な視点(全社戦略)、個別事業の視点(事業戦略)、機能別の視点(機能戦略)という3つの戦略レベルで策定される。それぞれ検討すべき内容や役割は異なるが、いずれのレベルでも、経営理念やビジョンとの一貫性、戦略レベル間での整合性を保つ必要がある。

■全社戦略: どの事業領域(事業ドメイン)で戦い、何を競争力の源泉とし、どのような事業の組み合わせ(事業ポートフォリオ)を持ち、どのように経営資源を各事業に配分するかを決定する。単一の事業しか持たない企業であれば全社戦略と事業戦略は一致しているが、複数の事業を手がける企業(多角化企業)の場合、事業ごとの戦略以外に企業全体としての視点が必要になる。その理由は、各事業への資源配分において全社最適化しなくてはならないからだ。

たとえば、成長分野に多くの新規事業を持っている企業の場合、各事業が個別に最適な戦略を追求すると、会社全体として経営資源の制約を超えてしまうおそれがある。具体的には、その事業で必要とする人材と会社としてその部門に配置できる人材の質や量が一致しなかったり、投資が重なって財務面での許容範囲を超えてしまったりすることが考えられる。こうした事態を避けるために、全社的な視点で事業間の調整を図り、資源配分の優先順位を決定する必要がある。

また、事業間には一般に相乗効果(シナジー)が働く。この効果を考慮して戦略を構築すれば、単独で事業を運営するよりも大きな成果が得られる。たとえば、ある事業で培われた技術力やブランドを他事業に転用したり、ノウハウや人材を事業間で移転・共有することで、経営効率は高まる。

■事業戦略: 個別の事業分野において競争に勝ち抜くための戦略を考える。全社戦略では多数の事業を対象とするため、事業ごとに競合企業や顧客が異なる場合がある。これに対して、事業戦略では具体的な事業分野や事業を扱うので、特定市場における企業間の競争を分析することが可能だ。分析結果をもとに、より具体的なアクション・プランを策定・実施することが求められる。

■機能戦略: 営業戦略や財務戦略、人事戦略などのように事業戦略を実現させるための施策を機能別に落とし込み、機能別の視点から戦略をいかに実施していくかを考える。事業戦略と機能戦略は図のようなマトリクスの関係にある。

経営理念・ビジョンと戦略レベル

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次回は、事業戦略の章から「内部分析:バリューチェーン(価値連鎖)」を紹介します。

グロービス出版
グロービス電子出版

『グロービスMBAマネジメント・ブック』(改訂3版) 目次

(本シリーズでは、ダイヤモンド社のご厚意により、★印をつけた項目を厳選して紹介していきます)

< 第1部 経営戦略 >
1. 経営戦略の意義
1  経営戦略の意義と企業の目的
2  経営理念と戦略レベル ★
3  戦略策定プロセス

2. 全社戦略
4  全社戦略の構成要素(1):ドメイン
5  全社戦略の構成要素(2):コア・コンピタンスと資源配分
6  事業ポートフォリオと事業ライフサイクル
7  ポートフォリオ・マトリクス
8  事業拡大と多角化の基本戦略

3. 事業戦略
9  競争優位を築くための基本戦略
10 事業の経済性分析
11 外部環境分析
12 業界分析:業界構造と「5つの力」
13 業界分析:アドバンテージ・マトリクス
14 内部分析:バリューチェーン(価値連鎖)★
15 競争上の地位に応じた戦略
16 事業ライフサイクルに応じた戦略

4. 経営戦略トピックス
17 戦略形成に関する見方
18 M&Aとアライアンス
19 バリューチェーンの再構築
20 グローバル化と規格競争
21 CSR(増補)
22 社会起業家(増補)

< 第2部 マーケティング >
1. マーケティングとは何か
1  マーケティングの発想
2  マーケティングの役割
3  マーケティング・マネジメント ★

2. マーケティング環境分析
4  市場の機会の発見
5  マーケティング・リサーチ

3. 市場戦略
6  セグメンテーションとターゲティング
7  ポジショニング

4. マーケティング・ミックス
8  製品特性
9  ブランド
10 新製品開発
11 製品ライフサイクル
12 価格と事業経済性
13 戦略的価格設定
14 流通チャネルの意義
15 流通チャネルの構築プロセス
16 購買決定プロセスとコミュニケーション手段
17 広告戦略
18 セールス・プロモーションと販売戦略

5. 新しいマーケティング潮流
19 顧客維持型マーケティング ★
20 B to Bマーケティング
21 レピュテーション(増補)

< 第3部 アカウンティング >
1. 企業経営とアカウンティング
1  企業経営とアカウンティング
2  アカウンティングの目的 ★

2. アカウンティングの基礎
3  収益および費用の認識
4  財務諸表の成り立ち
5  損益計算書
6  貸借対照表(資産)
7  貸借対照表(負債+純資産)
8  キャシュフロー計算書

3. 会計トピックス
9  連結会計
10 税効果会計と退職給付会計
11 有価証券(時価会計)

4. 指標分析
12 総合力分析:ROAとROE
13 収益性分析
14 安全性分析
15 株式市場が企業を評価する指標

5. 財務諸表分析の注意点
16 たな卸資産
17 減価償却と固定資産

6. 管理会計
18 損益分岐点分析
19 原価計算
20 マネジメント・コントロール ★
21 内部統制(増補)

< 第4部 ファイナンス >
1. 企業経営と企業財務
1  企業経営と企業財務

2. ファイナンスの基本概念
2  ファイナンス理論の体系
3  金銭の時間的価値:現在価値
4  DCF法

3. 投資の意思決定
5  投資評価のさまざまな方法 ★
6  分散投資の効果(1):ポートフォリオ理論
7  分散投資の効果(2):効率的フロンティアと資本市場線
8  分散投資の効果(3):CAPM(資本資産価格モデル)

4. 資金調達と資本政策
9  企業の資金調達手段
10 資本コスト ★
11 株主資本コストの推定
12 市場の効率性
13 企業の最適資本構成(1):理論
14 企業の最適資本構成(2):実際
15 配当政策

5. 企業価値
16 フリー・キャッシュフロー
17 企業価値の算出
18 株式評価モデル

6. 今後の企業財務
19 EVA(R)
20 オプション理論の基礎
21 企業買収防衛策(増補)
22 投資ファンド(増補)

< 第5部 人・組織 >
1. 企業経営と人・組織のマネジメント
1  企業経営と人・組織のマネジメント
2  人・組織のマネジメントに影響を及ぼす要因
3  組織行動学と人的資源管理 ★

2. リーダーシップ
4  リーダーシップとマネジメント
5  エンパワーメント
6  パワー

3. 個人と集団の行動
7  モチベーションとインセンティブ
8  集団のメカニズム
9  チーム・マネジメント
10 コミュニケーション
11 コンフリクト

4. 組織と人事システム
12 組織文化と企業経営 ★
13 組織設計
14 組織形態
15 人員配置
16 報奨
17 評価
18 能力開発

5. これからの人・組織のマネジメント
19 変革のマネジメント
20 組織学習
21 ワーク・ライフ・バランス(増補)
22 メンタルヘルス(増補)

< 第6部 IT >
1. 企業経営とIT
1  企業経営とIT
2  企業活動とIT利用領域
3  技術進化のとらえ方 ★
4  情報リテラシーと情報構造

2. 業務システムの革新
5  BPR
6  ERP
7  サプライチェーン・マネジメント
8  ロジスティクス

3. インターネット
9  インターネットのインパクト
10 インターネット・ビジネス
11 バーチャルとリアル
12 マーケティングへの影響
13 情報時代の顧客関係構築

4. ナレッジ・マネジメント
14 ナレッジ経営と競争優位 ★
15 ナレッジ経営の要件

< 第7部 ゲーム理論・交渉術 >
1. 企業経営とゲーム理論
1  企業経営とゲーム理論

2. ゲーム理論の基礎概念
2  ゲームの類型
3  同時進行ゲーム(1):絶対優位の戦略・絶対劣位の戦略
4  同時進行ゲーム(2):囚人のジレンマ
5  同時進行ゲーム(3):男女の争い
6  同時進行ゲーム(4):混合戦略
7  ミニマックス定理
8  交互進行ゲーム

3. ゲーム理論の応用
9  情報非対称ゲームの考え方 ★
10 ゲームの転換

4. 企業経営と交渉
11 ビジネスパーソンと交渉

5. 交渉の基礎概念
12 交渉の構造と類型
13 交渉構造分析の基本概念
14 複数争点交渉

6. 効果的な交渉
15 交渉と説得の3層構造

7. 心理バイアス
16 交渉の準備プロセス:4ステップ・アプローチ ★
17 合理的な交渉を妨げる心理バイアス(1)
18 合理的な交渉を妨げる心理バイアス(2)

8. 交渉の応用
19 交渉の諸戦術
20 交渉スタイル

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