システム・ロックイン(System lock-in)
アーノルド・C・ハックスとディーン・L・ワイルド2世が提唱した戦略オプションの1つ。デルタ・モデルの重要な部分を占める。補完者のロックイン(囲い込み)、競合企業のロックアウト(締め出し)、業界標準をとることを主眼とする。他の戦略に比較して極めて高い収益性を上げることが可能となる。
この戦略では製品や顧客のみならず、システムにおける重要な参加者すべてを考慮する。特に補完者を引き付け、維持することがカギとなる。補完者とは、企業が提供するものを強化する製品・サービスの提供者である。コンピュータやスマートフォンのハードウェア・メーカーとソフトウェア・メーカー、音楽ソフトと音楽再生機、通信機メーカーと通信キャリアなどの関係がこれに該当する。
重要なのは、システムのアーキテクチャ全体を見渡し、デファクト・スタンダード(事実上の標準)を実現することである。
デファクト・スタンダードを実現した企業は、他の業界参加者が自社の製品・サービスを補完すべく行っている投資から恩恵を受ける。典型例は、1990年代後半のマイクロソフトとインテル(ウィンテル)である。顧客からすると、大多数のアプリケーションを利用したいのなら、マイクロソフトのOS製品Windowsを買うしかなく、実際にほとんどの顧客がそうした。一方で、アプリケーション・プロバイダーは、これらの顧客にアクセスしたければ、マイクロソフトのWindowsと互換性を持つ製品をつくる必要があり、実際に多くの企業がそうした。顧客もアプリケーション・プロバイダーも、Windowsを利用することで便益を得られるため、スイッチングコストは非常に高くなる。
Windowsが必ずしも最優秀のOSではなかったという点は特筆に値する。OSでも製品でも、アップルの方が優れていると言われていた。それにもかかわらず、マイクロスフトは業界標準となることで業界を長期にわたって独占したのだ。
システム・ロックインに至るまでには、「ドミナント・デザイン」の開発、顧客のロックイン、競合企業のロックアウト、業界標準の確立の4つのステップを踏むとされる。