権威(Authority)
チャルディーニが示した影響力の原理のうちの1つ。その道の権威には無批判的に従うという人間の性向。優れた知識や力がある権威者に従うことは本人にとっても利益につながるため、幼少時から大人に権威に従うよう教育されていることが影響しているとされる。権威の実態がなくても、シンボル(肩書きや服装など)に対してでも反応してしまう傾向もある。偽警官であっても、制服に騙されてしまうのはその例だ。
権威に関する有名な実験に、心理学者チャールズ・ホフリングの実験がある。ある病院の様々な病棟のナース・ステーションに、自分がその病院の医師だと名乗って電話をかけ、特定の患者にアストロゲン薬剤を20mg投与するよう看護師に指示した。その薬剤はその病院で使用許可が出ておらず、かつ20mgという処方は通常の1日分の2倍に相当するものだった。看護師は、この量を投与すると危険であることを知っていたにもかかわらず、95%の看護師が医師を騙るホフリングの指示に従い、薬剤を投与しようとしたのである。病院においては、権威と専門性を持つ医師の判断や要求に、人は多少の疑問を抱いたとしても服従してしまいがちなのだ。