正規分布(Normaldistribution)
自然現象や社会現象でよく見られる、確率分布が、平均を中心に釣鐘状になる分布のこと。無作為に選んだサンプルの身長や体重、英語の試験成績などが、正規分布となりやすい典型例である。生産現場で一定の数値(製品の重量や特定の製造プロセスに要する時間など)をターゲットとしている場合なども、結果として出てきた数字が正規分布(もしくは、ほぼ正規分布で近似できる形で)のバラツキとなっているケースは多い。
正規分布は、計算処理などが比較的簡単である。そのため、社会科学の予測などでは、将来の結果の確からしさを予想する際に、ある事象が厳密にこの分布に従う従わないは別として正規分布が前提としてよく用いられる。販売予測や在庫管理のシミュレーションの際などにも、正規分布を前提として用いることが多い。
正規分布においては、平均値X近くでいちばん度数が高く、その標準偏差をσ(シグマ)としたとき、平均値をはさんだ特定範囲における存在確率(全体の中でその範囲に含まれてくるデータの比率)は下記のようになる。Excelでは、NORMSDIST関数を用いて計算する。
X-σ≦X≦X+σの範囲に分布全体の68.27%
X-1.5σ≦X≦X+1.5σの範囲に分布全体の86.64%
X-2σ≦X≦X+2σの範囲に分布全体の95.45%
X-2.5σ≦X≦X+2.5σの範囲に分布全体の98.76%
X-3σ≦X≦X+3σの範囲に分布全体の99.73%
この性質は、ビジネスにおいて品質管理を行う上で大きなパワーを発揮する。
たとえば仮に、A社が製造するある部品は、機能上2.0gの重さにそろえる必要があったとする。工場で生産された部品の平均重量は2.00g、標準偏差0.01gである。また、長年の経験上、部品の重量が2.03g以上あるいは1.97g以下になったときに不具合が発生しやすくなり、そのうち10回に1回は顧客クレームにつながることがわかっている。1日に1000個の部品を生産しているとすると、その1000個のうち1.97gから2.03gの範囲に997.3個が含まれている。言い換えれば、1日に2.7個はこの範囲外の部品が作られている。この品質管理のレベルでは、10÷2.7=3.7日に1回、顧客クレームが発生する。
ここでプロセス改善により、標準偏差が0.0075gになったとする。今度は1.97gから2.03gの範囲に1000個中999.94個が含まれることになる。1.97g〜2.03gの範囲をはみ出すのは15日に1個程度になるから、クレームはさらにその10分の1で、年に1、2回の頻度にまで減ることになる。標準偏差のわずかな低下によって、劇的な品質向上へとつながることがわかる。
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