悪魔の証明とは【事例で理解】ーそれって私が証明しないといけないの? 

悪魔の証明とは、「ないことを証明する」ことです。本来自分が証明しなければならないことを相手に転嫁する証明責任(立証責任)の転嫁と合わせて議論されることがよくあります。本記事では、この悪魔の証明の意味を詳しく解説し、事例も紹介して理解を深めます。悪魔の証明をつかった論法を冷静に見極められるようにし、また自分ではどうすれば使わずに済むのか、考えてみましょう。

悪魔の証明とは

悪魔の証明とは「○○がないことを証明できないなら、○○は存在する」「△△であることを証明できないなら、△△だ」といった、「ない」ということを証明しようとする論法のことを指します。未知証明と呼ばれることもあります。

「ある」ということを証明するのであれば、実際に事例を紹介すれば事足ります。しかし、通常、「ない」ということを証明するのは容易ではありません。想定されるすべての可能性をつぶさねばならず、それは通常、ほぼ不可能に近いからです。また、それを利用して、相手に証明責任を転嫁することもしばしばあります。

なお、法律の世界では、訴訟において所有権を主張する際、帰属の証明の困難性を指して悪魔の証明と呼ぶこともありますが、ここでは世の中で一般的に用いられている用法について説明します。

悪魔の証明の例

悪魔の証明を持ち出される議論の例を読んで、どこが問題なのか見極められるようになりましょう。AさんとBさんの「UFOは存在するかしないか」の会話を見てみます。

A: 「僕は、UFOは存在すると思うよ」

B: 「その意見には同意できないな」

A: 「どうして?この広い宇宙だ。人間以上の知性が存在する確率は十分に高いと思うがね」

B: 「もしそうだとしても、数十億年の宇宙の歴史の中で、たまたま人類と同時期に生存できた可能性は小さいんじゃないのかな」

A: 「その意見もわからなくはないが、高等な知性をもってすれば、そうした時間の壁を乗り越えることも可能だろう」

B: 「それはSFの世界の話だよ」

A: 「どうしても君はUFOの存在は認めたくないというわけか。じゃあ、UFOが存在しないという明確な証拠を示してほしいな」

B: 「存在しないという明確な証拠?」

A: 「ああ。もし君がそれを証明出来ないということは、UFOはやはり存在するということさ」

どこが問題か、気づけましたでしょうか。Aさんが最後「UFOが存在しないことを証明せよ」と言っていますが、これは悪魔の証明を押し付けていることになります。存在しないことを証明することの難しさは想像がつくと思いますが、次でより細かく見てみましょう。

「ない」ことの証明は容易ではない

今回のUFOのケースであれば、仮に、極めて多大な労力を払って、過去の数千件のUFO目撃事件をすべて論破したとしても、あるいは、確率論的に知的生命体の存在確率をゼロに近いと示したとしても、「過去の目撃はそうかもしれないが、これから本物が出てくる可能性がある」「ゼロではなく、多少なりとも可能性があるなら、やはり存在しうるということだ」などと言われてしまえば、もうそれ以上反論することはできません。つまり、現実的に、証明することは不可能なのです。

オカルトなどを信じる方には、この論法を使う方も少なくありません。以下が典型的な事例です。

「幽霊が存在しないことを証明出来ないわけだな。ということは、幽霊は存在するということだ」

「ネッシーが存在しないことを証明した人は結局いなかった。やはりネッシーは実在したのだ」

「死後の世界が存在しないことは誰にも証明出来ない。つまり、死後の世界は存在する」

「202X年に人類は滅びる。これは誰も明確に否定できない。よって、間違いなく、202X年に人類は滅亡してしまうのだ」

こういう論法を使われたら、納得する前に、ないことの証明の難しさを思い出すといいでしょう。

ちなみに、刑事ドラマなどでおなじみのアリバイ(不在証明)は、通常、そこにいなかったことを直接証明するのは難しいので、『他の場所にいた』ことを示すことで間接的に証明します。

議論で気を付けたい、証明責任の転嫁とは?-自分に有利に進めてない?

悪魔の証明は、証明責任(立証責任)の転嫁と合わせて議論されることがよくあります。

証明責任の転嫁とは、上記で示した論法の事例のように、本来、自分が証明しなくてはならないにもかかわらず、その責任を相手に転嫁し、証明が難しいために相手がすぐに証明出来ないと、「やはり自分の論の方が正しい」などと主張するやり方です。ビジネスの世界でもよく登場します。

たとえば、ある事業について新規参入すべきと主張するなら、本来、自らが、参入すべき理由を示すべきです。しかしここで、「参入すべきでない理由を示してくれ。もしその理由が示せないなら、やはり参入すべきということだ」と言ったとしたら、これは典型的な証明責任の転嫁と言えるでしょう。

あるいは、「□□社との合併に反対する人がいるが、合併した時に起こる問題が、本当に起こるか示してくれ。示せないだろう。であれば、□□社との合併に反対する理由はない」というパターンも同様です。

世の中には、無意識にこういう議論をする人もいますが、証明が難しいこと、あるいは時間がないことを見越して、証明責任を相手に転嫁し、「証明出来ないなら、自分の論の方が正しい」というように、確信犯的に悪魔の証明を自分の有利になるように用いる人が少なからずいます。

何かを決める時、誰が証明責任を持つべきなのか、あるいは、悪魔の証明を押し付けられていないか(あるいは押し付けていないか)を冷静に見極めたいものです。

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