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循環論法とは?意味、例、避け方——それって論証になっている?

投稿日:2010/07/07更新日:2019/08/15

今回は、「循環論法」を取り上げます。循環論法とは、論証しなくてはいけない事柄が、その論証の根拠となってしまうという不完全な論理展開です。

アカデミックの世界などでは、循環論法は、最も避けたい論理展開のひとつとされています。たとえば、かつてマルクスが主張した労働価値説(価格は、投下された労働の量で決まる)は、べーム・バヴェルクによって循環論法であると指摘されました。バヴェルクの主張の詳細はここでは割愛しますが、一時隆盛を極めた労働価値説は、循環論法とされたことで、「不完全で説得力のない説なのでは」という疑念を生み、一時の強い支持を失ってしまったのです(ちなみに、後世、日本の経済学者である森嶋通夫によって、労働価値説は循環論法であってもそれ自体は否定されないことが示されましたが、時すでに遅しでした)。

循環論法を事例でさらに理解しよう

以下の会話で、X氏の論理展開の問題点は何でしょうか。

X氏: 「この企画については、彼女に任せるのが一番成功するだろうね」

Y氏: 「彼女か。意外な気がするね」

X氏: 「全然意外じゃないよ」

Y氏: 「どうして彼女を推薦するんだい?」

X氏: 「まあ、一言で言えば、彼女は僕が見込んだ人間だからさ」

Y氏: 「ふーん。じゃあ、彼女のどこを見込んだの?」

X氏: 「説明は難しいけど、かいつまんで言えば、どんな企画でも成功させそうなところだよ」Y氏「えっ?」

X氏: 「今回の企画も彼女なら成功させるだろうね」

循環論法のポイント

今回のケースのように、「AなのはBだからだ。BなのはAだからだ」といった程度の循環論法なら、おそらくほとんどの人はすぐにおかしいと気づくでしょうから、大事には至らない可能性は高いと言えます。たとえば、Y氏はX氏の最後の発言を受けて、「なぜ彼女がどんな企画も成功させそうと思ったのか、その詳しい根拠を教えてくれ。君が見込んだとかではなく」と言えば、X氏はその理由を再考せざるを得ないでしょう。

しかし、これが次のような論理展開だったらどうでしょう。「AなのはBだからだ。そしてBなのはCだから。Cの理由はDで説明できるし、DはEから導ける。Eの根拠としてはAが挙げられる」。説明の仕方にもよりますが、口のうまい人間に、立て板に水のようにこう一気呵成に説明されると、なかなか循環論法と気付く人はいないのではないでしょうか。

それでも、勘の鋭い人なら、最後にもう一度根拠としてAが出てきた段階で、「何かおかしい」と感じるでしょう。しかし、これが、Aと同じ意味でも表現を変えてA’の形で言われると、循環論法と見破るのは難しくなります。たとえば、Aが「NVP(正味現在価値)がプラスだ」という表現であるのに対して、A’が「IRR(内部収益率)がハードルレートを超えている」という表現のような場合です。内容は基本的に同じことであり、ここだけを取り出すとトートロジー(同義語反復)なのですが、表現が全くことなるため、循環論法と気付きにくくなってしまうのです。

循環論法を避ける方法

循環論法にならないためには、頭の中だけで考えるのではなく、理由づけをチャートの形で表すことが有効です。たとえば、根拠を「→」で示してチャートを書きます。その結果、下記のようなチャートになれば、それは循環論法と言うことになります。その際、同じ意味を表す先のような例は、同じ言葉で表現するようにしましょう。ビジネスパーソンであれば、極力、ビジネス上の同義語は押さえておきたいものです。

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なお、上記の図表は、いわゆるコーザリティ分析(因果関係分析)の中で、グッドサイクルやバッドサイクルの例を示す際にも登場します。コーザリティ分析は、基本的に原因と結果を示すものですから、こうした循環構造が現れてもそれほど問題ではありませんし、事実、よく現れます。避けるべきは、論証、つまり理由づけの循環です。この差異はしっかり認識しておいてください。

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