突然ですが、皆さんのビジネスにおける「競合」って一体どの企業でしょうか?
もちろん、日々意識されているライバルの姿が2~3社は浮かぶのではないかと思います。しかし、それは本当の競合でしょうか?この「競合がどこか?」という問いかけは、実は思ったほど簡単には答えられるものではありません。自分のビジネスをどう定義するのか、そして自分たちはどこで戦うべきなのか、ということに対する認識が組織内で深まっていない限りは、答えは出しにくいのです。具体例を用いながら、競合の定義について段階的に考えていきましょう。
たとえば、フィットネスクラブを運営していると仮定します。まず普通に考えうる競合は、同じフィットネスクラブを運営している他のスポーツクラブとなるでしょう。これが第1段階の競合です。つまり、今回の例でいけば、直接的に「運動したい」というニーズを解決するプレイヤーはどこにあるのか、ということから考える、ということです。
第2段階では、もう少し抽象度を上げて考えてみます。そもそも、人々が運動したい理由は何でしょうか。たとえば「痩せたい」というのが主要因であれば、そのニーズを解決するプレイヤーが2段階目の競合になりうるはずです。具体的には、ダイエット食品や書籍、ダイエット方法、ダイエット器具あたりが該当するかもしれません。
最後にもう1段階上がってみましょう。人々が痩せたい理由は何でしょうか。たとえば「キレイになりたい」という理由であれば、その便益を提供するプレイヤーとしてエステなどの美容関係が浮かび上がってきます。
通常は第1段階の競合を中心に考えると思いますが、第3段階まで競合の範囲は幅広く存在します。無意識に競合の範囲を決めることなく、まずは柔軟な姿勢で広く競合を考えてみることが大切です。
もちろん、第3段階のレイヤーにいるプレイヤーを、いわゆる「競合」として認識するのは難しいかもしれません。しかし、環境の変化が激しい現在、ニーズを解決するツールは日進月歩で変わっていきます。そのツールだけを限定的に捉えて、その限られた枠内だけで考えてしまうリスクにも想いを巡らせるべきでしょう。つまり、第1段階における勝負には勝ったものの、そもそもそのレイヤーに残された市場自体がほとんどなくなっている可能性もあるわけです。これを避けるためにも、定期的に上流まで遡って競合を見てみることが大切なのです。
そして、お気づきの方もいると思いますが、この考え方は、きっかけが「競合」であるだけで、本質的に考えていることは、「お客さんのどういうニーズに応えたいのか」という問いを考えることに他なりません。「競合分析」に過度に走ると、競合だけを意識しすぎて、自分たちが本当にやりたいことや大切にしたいお客さんを見失うことにもつながりかねません。
もっとも大事なことは、「自分たちがどういう存在でいたいのか」「どういうお客さんのどういうニーズに応えたいのか」という問いに向き合うことです。
その難しい問いに答える最初のきっかけとして、「競合はどこなのか?」ということを段階的に考えてみてはどうでしょうか。
※本記事は、FM FUKUOKAのラジオ番組「BBIQモーニングビジネススクール」で放送された内容をGLOBIS知見録用に再構成したものです。音声ファイルはこちら >>
イラスト:荒木博行
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