東海地区に拠点がある企業の人材育成や組織づくりに向けたご提案をしていると、自動車部品メーカーをはじめとする多くの製造業のお客様から以下のようなお悩みが聞こえてきます。
「郊外にある本社・工場と自宅をクルマで往復する毎日。刺激がなくマンネリ化している」
「製造部門に属しており、気がつくと同じことの繰り返しの日々になっている」
「業務改善の活動を頑張っているが、形骸化して機能していない」
「女性活躍促進って注目されているけど、製造業では難しいよね」
とても気持ちは分かるのですが、これって「思考停止の罠」にはまっていませんか。目先のことをこなすのに精一杯、現状への不満などが先に立って、自分が本当にやるべきことを見失いかけている状態のことです。そんな時こそ、考える時間をとりましょう。でも、漠然と考えても悶々とするばかりで、なかなか結論が見えてきません。考えるための方法論が必要となります。その基本中の基本が「クリティカル・シンキング」という手法です。
そこで問い続けられるのは“イシューを押さえる”ということです。イシューとは「何を考え、何を論じるべきか」という問いのことです。実は、イシューを押さえ続けるということはなかなか難しいことで、うかうかしているとすぐに外れていってしまうのです。これはMBAのクラスだけではなく、仕事でも、キャリア構築でも、人生という長い道のりにおいても同じです。イシューを外すと、考えても考えても堂々巡り、前向きな答えは一向に出てきません。
自宅と職場の往復の毎日で刺激が不足しているという人は、「そもそも、自分は何のために仕事をしていて、仕事を通じて何を実現したいのか、どういう自分になりたいのか?」といった問いを立てて、自分の仕事観や人生観を深く考えてみてはどうでしょうか。もしかしたら、通勤のクルマの中でオーディオブックを聴いて勉強するといった新たな行動につながるかもしれません。
業務改善を一生懸命に取り組んでいるけれども形骸化していると感じている人は、「そもそも、私たちは何のために業務改善の活動をしているのか?」という原点に戻って考えてみてはどうでしょうか。自分たちが陥っている現状を正視することで、何が足りないのか、不足を埋めるためには何をすべきかという思考につながっていくかもしれません。
では、自分自身のイシューを押さえ続けるためには、どうしたら良いでしょうか。企業における人材育成をお手伝いする中で、私が個人的に心がけている3つのコツをお伝えします。
(1)迷った時は「そもそも」に戻る
目先のことにとらわれすぎているな、現状への悩みや不満が多くなっているな、と感じたら、「そもそも、自分は何を目指しているのか?」と、大きく自問してみませんか。
(2)考える時間や場所のマイルールを作る
私は「月」を見ることが好きです。仕事で余裕が無い時は、 帰宅途中に夜空を見上げて「そもそも、自分は何を志しているのか?」と、自分自身に問いかけるようにしています。ほんの隙間時間でいいのです。そんなマイルールを作ってみませんか。
(3)いつもとは違う人に会う、違う場所に行く
トヨタグループの創始者である豊田佐吉翁は、「障子を開けてみよ、外は広いぞ」という言葉を残しました。自分のエリアから一歩踏み出して、視野を広げましょう。ちなみに、グロービスには、仕事上の利害関係の無い、志高きビジネスパーソンが、様々な業種・業界から集まり学び合っています。私たちは、この刺激に満ちた場を「他流試合」と呼んでいます。
そもそも、あなたは何を志していますか?――
ぜひ、今日から自分に問いかけてみてはいかがでしょう。
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