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・・・見てるんだ

投稿日:2014/05/07更新日:2022/06/22

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春が来た。2月の雪はとっくに消え、桜もすっかり散った。街に出かけると、すっかり春の装いに変わっていることに気付く。そう、最近は色々気づけるようになってきた・・はずなのだ・・・が・・・

男性読者の諸君には経験あるだろう。「ねえ、何か気づかない?」という女性からの恐怖の質問。

が、残念ながら、そういう時に限って何も気づいていない。自慢じゃないが、気づかない。でもそのまま黙っていると、また色々過去の話が出てくる恐れがある。だから、敗北心を感じながら「ごめん。わかんないや。何が変わったの?」と聞くことになる。聞けば正解は教えてくれるのだが、明らかにがっかりしているのが伝わってくる。いや、ちょっぴり軽蔑も入っている気がする。

この話は、とても有名だ。「男性は女性の髪形が変わっても気が付かない」という話だ。だから、最近の男性は、いつも女性の髪形を気にしているように思うし、自分も正にそうだ。相手の女性のヘアスタイルが見るからに変わった場合は、「ラッキー!」と思う。そのまま「新しい髪型、似合いますね」と言えばいいからだ(・・・ただし、そのヘアスタイルを相手の女性が気に入っていない時は・・・・想像したくない(ブルッ))。

・・・ということで、「忘れる」から始めた本連載、今回は、「見ている」という話題でいきたい。

今回も、前回まで紹介してきたインタビューから特徴的な会話を紹介しよう。

「知識」なんだよね、感じるんじゃなくて

Iさん:こちらが気にしているところとそちら(男性)が気にしていることが合ってないことがあるな、と。髪の毛を切ってきれいにしたのに、そこは全然、見てなくて、「今日のネイルはきれいだね」って言ってみたりして。そこじゃないって。

今回も少し説明が必要だと思う。この会話は「男性のどこが好きか」という話から始まって「何を大事だと思っているのかが合っているかが結構、重要」という風に話題が進んだ時に出てきた発言だ。

要は、女性が大事だと思っていることを男性が見ていないと、そこがすれ違い、「この人とは合わない」という感覚につながっていく、と。こうした小さなすれ違いは、消えずに徐々に「溜まっていく」というのは、前回に述べたとおりだ。

先のIさんの発言を前後の会話も含め、もう少し詳しく見ていこう(あ、ちなみに、今回もカッコ内は私の心の声である)。

Iさん:男性って、女性に対して「ここがダメだと絶対にダメ」っていうところを持ってません?髪の毛がすごい汚いとか、眉毛がボサボサだとか。というのも、私、前に付き合っていた人から「眉毛だけはどうしても整えていて欲しい」と言われたことがあって。「他はどんなでもいいけど眉毛だけは許せないからちゃんと処理をして欲しい」って。そのとき、「なんか変なところ見てるんだなー」と思ったんですよね・・・

溜田:(私も、眉毛は、気になるけど・・・)確かに変なところを見ているわりに、見てほしいところを見ていないって言われることは多い気はするなぁ。(髪の毛、切っても気づかないし)

Iさん:こちらが気にしているところとそちら(男性)が気にしていることが合ってないことがあるな、と。髪の毛を切ってきれいにしたのに、そこは全然、見てなくて、「今日のネイルはきれいだね」って言ってみたりして。そこじゃないって。

溜田:いやー、そういうの、知識としては知っていて、ちゃんと褒めなきゃいけないとは思っているんだけど、その中のどれを褒めなきゃいけないのかがわからないんだよね・・・

Kさん:あー、そうそう。「知識」なんだよね、感じるんじゃなくて。

溜田:(えっ?感じる?それって感じるものなの?)

Iさん:だからマニュアルちっくな感じがするんですよね。

溜田:(それだ)

ドキッとさせられたのは、自分が正にそうだと思ったからだ。どうも、マニュアルというか、理屈で動いている傾向がある気がする。髪型にしてもそうだ。「髪型が変わった事を気づかないというのはダメなんだ」という一般的に言われている情報を元に、髪型の変化を観察しているだけの気がする。

だが、女性が求めているのは、どうやらそんな事ではないらしい。それはいったいなんなのだろう。インタビューの続きの中に、ヒントが隠れているかもしれないので、もう少し先の会話まで振り返ってみよう。

「このプチトマト旨いね」って言われてキレた

Fさん:それと、物を褒めるじゃないですか。
溜田:(えっ?それ、嬉しくないの?)物を褒めるのはおかしいの?
Fさん:だって、私じゃなくて、物を褒めるんだって思うじゃないですか。
溜田:「良い物、持ってるね」っていうのは、男同士だと褒め言葉になるんだけどなー。「そんな良い物みつけてきて趣味がいいね」ってことだから。

実は、このインタビューには続きがある。それはこんな具合だ。

Fさん:あー、そういう意味だったんだ。でもその前に、他に褒めるところないのかな、とか、私自身に褒めるところがないから物を褒めてるんだ、って思うじゃないですか。
Aさん:わかる。似た話で、お弁当を作っていって、「このプチトマト旨いね」って言われてキレたことがある。
Iさん:うちでも、お父さんがお母さんに「君が作る料理で自分が1番好きなのはマカロニサラダ」って言うんですけど、お母さんは「そこじゃないんだよな・・・」って(笑)。
溜田:(お父さんの気持ち、実によくわかる・・・)長年連れ添っても、男性は、わからないことは、ずっとわからないんだよね。料理なんかは、作った経験がないとますますそうで、何を褒めていいか、本当にわからないんだと思う。でも、今のはすごくドキッとしたね。大事にしているものが違う、っていうのが見えてきた。

要は・・・男性は「何か褒めないといけない。言わないと面倒なことになる」、「女性に、いろいろ気を使っているということをアピールできれば気が利く男と思われる」ということは「知って」いて(或いはそういう“都市伝説”を「信じて」いて)、「マニュアルちっくに」、例えば、「髪型」の場合は、「変わったら(たとえ似合っているかわからなくても)声をかける」し、「手作りの料理が出てきたら(相手の期待がどこにあるかはわからないけど)とにかく褒める」という風になる。

問題は、それを実際に「相手がどう思うか」まで思考が回っていないという所にありそうだ。

女性が考えているのは、「ちゃんと自分の事を見ていれば、髪型が変わったことくらい、普通、わかるのではないのか」、「私が心を込めて、かつ手間をかけて作っている料理と、そうでもない料理は、普通、食べればわかるのではないか」ということ。

この女性にとっての「普通」が、男性にとっては全然、「普通」じゃないこと。つまり、見ているポイント、見るべきポイントが噛み合っていないことが根にありそうだ。

だって、こんな歌だってあるくらいだ。男性グループJ-WALK(現在はJAYWALK)が歌う『何も言えなくて・夏』。
「きれいな指してたんだね知らなかったよ、となりにいつもいたなんて信じられないのさ・・・」

要は、近くにいたって男は女性の見るべきポイントがわかっていないということ(と、開き直ったとしても、何にも解決しないのはわかっているけど)。

じゃ、お互い、何を見ているんだろうか?そういえば子どもの頃はどうだったっけか。会社に入ってからは、仕事ができるかどうかだけを見ている気がするな。人間性とか関係なくなっているかもな・・・

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男性はアウトプットしか見てない。女性はプロセスも見ている

話を元に戻そう。実は、先ほどの会話の続きに、重要なヒントが含まれている。それはこういう具合だ。

Kさん:さっき、Yさんが言っていたみたいに、男性はアウトプットしか見てない。女性はなにか見た時に、たとえばマカロニサラダ1つとってみても、材料が何種類で、それを作るまでに何工程あって、何分ぐらいかかるか、とかいうプロセスを要素分解しているんですよ。

「Yさんが言っていた」こと、とは、「デートのときのレストランの選び方で、だいたい(相手がどの程度の男かが)わかるよね」という会話の中ででてきた発言で、ざっとこんな含意だった。

Yさん:その日の気分とか、状況とか、私のキャラクターとか・・・そういうのと、選んでくれたレストランが合っているかってこと。こういうレストランの選び方をするんだとすると、他もこうだろうなとか、ああだろうなとか、究極的に、私との付き合い方もそうなんだろうな、って。アウトプットからインプットを見ているかも。

ここから、また仮説を考えてみよう(仮説は初回からの続き番号である)。

「男性はアウトプットしか見てない。アウトプットしか考えていない」「女性は、アウトプットを産むプロセスにまで思いを馳せている」。つまり、

仮説8:男性は、結果で評価する
仮説9:女性は、プロセスも評価する

という事だ。

これが、本当だとすると、その意味するところは、企業における評価にもつながっていく予感がする。そこで、「髪型」の話に立ち戻り、もう少し分解して考えてみよう。

今夜の晩御飯はプロセスを要素分解して褒めてみよう

まずは、女性が髪型を変えるまでのプロセスを仮説的に分解してみたい。

STEP1:髪型を変えたくなる事象が発生する(たとえば、気分を変えようと思う。季節ごとの服装に合わせたいと思う。単に今までの髪型がウザくなる、など)。
STEP2:髪型を本当に変えるか考える
STEP3:髪型が変わった後に発生する事象を想像する(素敵な人に声をかけられる。周りに「似合いますね」と褒められる。など)。
STEP4:いいイメージが浮かんだので、実際に変える事を決心する
STEP5:髪型を変える

こんな具合だ。

ここで、髪型を変えた女性を見たときに、男性と女性はそれぞれどんなことを考えるのだろうか?私の予想では以下のようになっているのではないか?(あ、ちなみに、今回のカッコ内は、それぞれの心の声である)

男性:(髪型が変わった)→(髪型が変わったことがわからない無神経な男性とは思われたくない)→(だから言葉にしておこう)→「髪型変えたのですね。素敵ですね」

女性:(なんとなく雰囲気が変わった)→(髪型が変わってる。あとネイルも変わってる。服装にも合ってるな)→(何があったのだろう)→(そういえば、最近、忙しかったみたいだもんな)→(仕事が一区切りついたのかな?それでデートかな?そういえばしばらく彼氏とも会えてなかったはずだしな)→「ねえねえ、何かいいことあるんじゃない?(といって、一応デートの話という雰囲気で聴いてみよう)」

ちょっと妄想が過ぎたかもしれないが、ポイントは、男性は、目の前に見える事象を元にアクションを決める。一方で、女性は、そこに至るまでの過程にまで思いを馳せて、その上でアクションを決める、ということ。

ここで、今までの発言を整理してみよう。

(1)髪の毛を切ってきれいにしたのに、そこは全然、見てなくて、「今日のネイルはきれいだね」って言ってみたりして。そこじゃないって。(Iさん)
(2)それと、物を褒めるじゃないですか。(Fさん)
(3)お弁当を作っていって、「このプチトマト旨いね」って言われてキレたことがある。(Aさん)
(4)お父さんがお母さんに「君が作る料理で自分が1番好きなのはマカロニサラダ」って言うんですけど、お母さんは「そこじゃないんだよな・・・」って。(Iさん)

発言の(1)は、Iさんが「自分の全部をきちんと見てよ。できたら、どうしてそうしたのか(たとえば、あなたにきれいと思われたいから、とか?)もきちんと理解してよ」と考えているからこの不満が出てくる。発言の(2)も、基本的には多分、同じだ。「全部をきちんと見てよ。どうせ褒めるなら、どうしてこれを身につけているのか(たとえば、仕事で頑張って“自分にご褒美”で買ったバッグだった、とか?ずっと傷んでいるのが気になっていたけれど、ようやく時間ができて買いにいけてよかったね、とか?)のほうをきちんと理解してよ」と。発言の(3)、(4)は、まさにKさんの言ったとおりだ。「切って茹でてマヨネーズで混ぜるだけ、誰がつくっても大体同じ味になるマカロニサラダの前に褒めるものがあるだろう。あまつさえ洗って入れるだけのプチトマトを褒めるとは何事だ」と。

多分、そうだ。いや、そうに違いない。

これには自信がある。なぜなら、今まで一度だって、妻に対する褒め言葉が有効に働いたことないからだ(ふふんっ!)。

よし。この仮説をもとに色々考えてみよう。まずは今晩の晩御飯からだ。あっ、でも、お刺身だったらどうしよう・・・

ちなみに、ここまでの原稿を読んだK女子からは、冷めた口調で、こんな発言。「溜田さん、やっぱりわかってないですね。プロセスは考えるんじゃないんですよ。感じるんです。まだまだだなぁ・・・」

■次の記事
・・・エッ、靴買いに行ったんじゃないの?

 

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