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感情に働きかける(1)

投稿日:2013/03/01更新日:2021/10/27

前回「対立をマネジメントする」でも触れましたが、ファシリテーションの対象は人であり、論理だけでは動かない存在です。むろん議論を適切に進めるためには、論理的に議題を分析し、適切な論点を設計することが不可欠ですが、それだけで議論の場を上手く仕切れるわけではありません。

「論理を武器とした議論の仕込み、さばき」がファシリテーションという車の片輪だとすると、「人の感情に働きかける」というもうひとつの車輪があります。ここをあわせて理解、実践することにより、集団の知恵と意欲を引き出す真のファシリテーションが完成します。今回からは、この「感情」について考えていきましょう。

議論の場における「感情」

人は論理で思考すると同時に、様々な感情を持ち、判断、行動は感情に強く影響を受けます。また、人が集団をつくり、その中で互いに関係を持つとき、そこには他人や集団に対する様々な感情が生まれます。こうした側面を無視して物事を進めようとしても大概上手くいかないものです。そこで、議論の場に参加する人の感情に気を配り、また適切な感情の状態になるように誘くことが必要となってきます。

感情には、怒りや喜びなど比較的強く明確なものと、なんとなく気分が乗らないといった「気分、空気」のようなものがあります。議論の場における感情の扱いは、大きく分けて、参加者が持つ強い感情にどう対応するかという面と、場の空気をどのように創り、どのように影響を与えていくかという面があります。まず気分や空気といったところから見ていきましょう。

「自由、活発、安心」の空気をつくる

議論の場を活性化するうえで、その場の空気には細心の注意を図る必要があります。人はある場に入った瞬間、そこの空気を素早く察知し、無意識にそれにあわせた行動をとるものです。そしてこうした適応は、本人は明確に意識していないことが多いため、かえってその人の判断や言動に強い影響を及ぼします。

では、どのような「空気」が議論の場に相応しいでしょうか?全員がピリピリして発言を躊躇するような空気、なんとなく沈滞した空気の下では、人びとの思考は活性化されず、議論の盛り上がりは期待できません。この場では自分の考えを自由に発言できる、発言したいと感じさせる自由かつ創造的な雰囲気、多くの意見が多数の参加者から出て、スピーディに議論が進む活発な空気、そして自分が場の一員として他のメンバーから受け入れられ、自分の発言が価値あるものとして受け取られるといった安心感を持たせることが重要です。

■場の空気の初期設定に気を配る

場の空気を創るうえで重要なのは、会議の冒頭、もしくは会議が始まる前の雰囲気です。人は無意識に、最初に「この場がどういう場か」を察知、適応してしまい、その影響は一定期間続くので、初期設定を失敗するとなかなか挽回できません。会議前、皆が黙って各自のPCに向かって自分の仕事に集中している状態と、参加者が三々五々雑談や言葉を交わしている状態をイメージしてください。後者の方が自由、活発、安心と感じるのは明らかです。

ファシリテーターが早めに会場に入り、笑顔で参加者に声をかけ迎える。会議冒頭に元気よく、明るい声と表情で第一声を発し、テンポよく議題や議論の目的を伝える、議論の始めは、できるだけ多くの人が発言できる話題を選び、発言する時間を確保するなどして、場の初期状態を適切な方向にセットすることを意識しましょう。加えて、参加者一人ひとりが心地よさを感じる物理的環境を整えることも重要です。たとえば、狭すぎる部屋や広すぎる部屋、照明が暗かったり、雑然とした部屋などはそれだけで場の空気を冷やします。一方、明るい色彩の絵画を懸ける、リラックスできる音楽を流すといったことも場の空気をポジティブに保つうえでとても効果的です。

■言動で適切な空気をつくり、維持・強化する

会議の中でのファシリテーターの言動も場の空気に強い影響を与えます。

たとえば、意見を求める際、席順に意見を述べてもらうのと、各自が自由に発言するのでは、場の「自由度」に対する認識が変わります。自発的な発言を活性化したいのであれば、あえて発言の順番は決めず、できるだけ自由に、多くの人が発言できるように、またそれぞれの発言をあまり長引かせず、テンポよく多くの人が発言するようにファシリテーションをすべきです。また、座ったまま話をするのではなく、ファシリテーターが立ちあがってダイナミックに動きながら、参加者から出てくる意見どんどんホワイトボードに書いていくといった行動によって「場の空気を撹拌する」のも、活発な場の空気を創るうえで効果的です。

一方、「安心感」を感じてもらううえでは、存在を認められている、場のメンバーに受け入れられているという感覚をいかに持ってもらうかに心を砕くべきです。しっかり相手の目を見て話を聴く、名前を呼ぶ、考え発言する時間的な余裕を与える、出た発言はまずしっかり受け止め、まずは発言内容の是非に係らず、発言したことへの感謝と共感を示すといった振る舞いを心がけるとよいでしょう。

こうしたことは一見どれも当たり前に見えますが、効果的に実践できていることは稀です。自分の会議における態度や表情、振る舞いが無意識に場の空気を沈滞させていないか、一度チェックしてみることをお勧めします。たとえば、自分の思っている意見と違う意見が出ると、眉をしかめたり、下や横を向く人もいます。そうした態度は発言者や他の参加者に多大がネガティブな影響を与えていることを認識すべきです。

次回は、参加者の持つ、もう少し「強い感情」にどう対処し、どう扱っていくかを考えてみたいと思います。(⇒続きはこちら

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