トマムの朝、窓の外は一面の銀世界である。朝もやと、松の木に被さった雪とが、モノトーンを生み出し、長谷川等伯の『松林図屏風』の水墨画の世界を彷彿とさせる。本日午後から本格的に、日本再生のためのビジョンを描き、共有するための、議論が始まる。
この「サミット」を始めたのは、実は昨年である。参加者は、同世代の仲間だ。政治、ビジネス、学術、メディア、文化、スポーツ、NPOなどの各界の次代を担うリーダーが集い、僕らの世代が日本を引っ張るときに向け、ビジョンの共有とネットワークをつくることが目的であった。いわゆる「日本版ダボス会議」だ。
各界の第一線で活躍する同世代の仲間が、政治・経済・ビジネス・環境・地域・科学技術・教育・文化など、多岐に亘る領域を、参加者全員が立場を超えて議論することによって、学び、具体的なアクションにつなげていきたいと考えている。
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今年の僕の挨拶文には次の通り記されている。
「このサミットに参加された方々の中から、ゆくゆくは総理大臣が生まれ、ノーベル賞学者も輩出されるでしょう。財界の旗手として活躍する経営者、科学・学術・文化の領域で目覚しい活躍を続ける仲間が続々と輩出されていくでしょう。
僕は、『世代の責任』というものを、認識しています。緩やかな衰退期に入り、諸問題を抱える日本を再生する責任を、僕らの世代が負うことになります。僕らは、日本の方向性を大いに議論し、明確な再生ビジョンを持ち、連携しながら、一歩一歩前に進んでいく必要があります。そして、日本を良い方向に導いていく責任があります」。
先日、中曽根康弘元総理にアポを取得して会いに行った。「ダボス会議で有能なリーダーに会う機会があったが、日本を引っ張ってきたリーダーに会っていない。是非、会って学ぼう」、と思い立ち、同世代の仲間とともに会いに行ったのである。
そのとき、ふと思ったことがあった。最高権力者の地位に5年間も在位された方でも、「やりたかったけれどできなかった事があった」と静かに語られたときである。「権力だけあっても、この国は動かないのだ」、と僕は強く認識した。
日本を良い方向に持っていくには、有能な政治家リーダー、それを支え・引っ張る各界のリーダー、そしてそれを支持し導く世論の組み合わせが必要だ、と強く認識した。当然、動かすには国民的危機意識の共有と、やるべき課題・方向性の共通理解というものが重要なことは言うまでも無い。
ツイッターにより「世論」が形成され(「オピニオン:世論形成の場としてのツイッター・ブログ」参照)、このサミットを通して次代のリーダーのネットワークができる。当然参加者の中には、有能な政治家が多数いる。あと必要なのは、日本が進むべき方向の提示だ。これが所謂「提言活動」となる。この構想の詳細は、実際に行動の緒についたときにシェアすることとしよう。
トマムは、まだ朝8時前。このサミットは、連休中に開催されるので、家族同伴OKとしている。ファミリー・フレンドリーな会合である。妻は妻同士、子供達は子供達同志でネットワークをつくっている。子供達が起きてきたので、この辺で「パパ」に戻ることにする。
2010年3月20日
堀義人