2月11日(月)G1サミットの四日目の朝を迎えた。毎年、2月か3月の3連休に開催されるG1サミットは、夜遅くまでリーダー達の交流が行われる。自ずと、最後の日の朝になると活動量が下がる。それでも熱い議論が交わされるのが、G1サミットの特徴だ。<br />
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朝8時から始まった第9部分科会では、早朝から熱い議論が各分野にて行われた。分科会9-A「大学改革」 パネリストに、東京大学理事・江川雅子氏、慶應大学総合政策学部長・國領二郎氏、同志社大学法学部長(次期学長)村田晃嗣氏。そしてモデレータが、波頭亮氏だ。<br />
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<p>「国立大学は独立法人化し、経営の視点を入れていくことが促進されている。が、例えば人事制度を変えることをしたくても、様々なものが国の制度とまだつながっており、簡単ではない。課題は多いという認識がある」。(東京大学理事・江川氏)<br />
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慶應総合政策学部(SFC)は創設が1990年代で、人生で失業する可能性や海外に放り出されるようなことも想定し、「生きていける能力」をつけることを目標としているので、ゴールが明確だ。それより以前に創られた大学は目的や戦略などが、今の時代の環境と整合していないのが課題。(慶應大学総合政策学部長・國領氏)<br />
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今の日本の大学は改革疲れしているようにも思える。また首都圏の大学と首都圏以外の大学は別に論じられるべきではないか? 首都圏以外の大学がどう活性化するかも大事な論点。少子化が地方の大学に及ばす影響もある。例えば3人子供がいると、親は金銭負担も多く、地方の国立大学に行かせようとするが、1人だと、東京の大学に行かせることができる。地方の大学はどう付加価値をつけるかを考えなければならない。(同志社大学法学部長・村田氏)<br />
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今、グローバル人材育成の重要性などが叫ばれているが、今の日本の教育システムはそれに対応できていない。大学は中学、高校から人材を引き継いで育てるわけだが、それまでに受験勉強以外の人生経験を多くさせることも大変重要。(東京大学・江川氏)<br />
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慶應SFCは入試に特徴がある。一つのモノサシで上から順番に序列をつけるのは大学にとっても危険。批判を受けてもAO入試をしつこく続けているが、多様性からの刺激は重要で、その確保が大切。実際に卒業生の活躍がそれを証明していると思う。(慶應大学・國領氏)<br />
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大学改革で最も大切なのは職員。ジェネラリストとスペシャリストの両方の側面が求められる時代。モチベーションをあげることができるようなキャリアパスを明確にしていくのも重要。(同志社大学・村田氏)<br />
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分科会9-B「スポーツの感動と使命」セッション。競泳の北島康介さん、ハードル為末大さん、野球の古田敦也さん。司会はジャスト・ギビング・ジャパンの湯本優さんだ。<br />
<a href="http://t.co/nrfq0yPD">http://t.co/nrfq0yPD</a><br />
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古田さん「サインに首を振る投手もいる。『強打者に得意な球で勝負したい』、いい話に聞こえるかもしれないが、スカーンと打たれたらチームでやってるので困る。『勝負したからいいです』、では困る」<br />
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アスリートのセカンドキャリアについて。為末さん「選手のマインドが重要。スポーツに集中して、引退してから考えろという指導も影響している。アマチュアスポーツだとお金が貯まらないから、引退した瞬間から働かなければならない」<br />
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古田さん「プロ野球選手会長時代に、オフにキャリアセミナーをやった。700人に案内を出して来たのは4名。報道陣が10倍いた。最近は選手も変わってきた」<br />
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分科会9-C「行動宣言IV:政治 “政治”を変える」みんなの党・浅尾慶一郎氏、自民党・平将明氏、民主党・福山哲郎氏、民主党の田嶋要氏だ。このセッションは、ネットで中継された。G1サミットの特徴は、超党派で日本を良くする議論だ。批判より提案。思想から行動の精神だ。<br />
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分科会9-Dは、「日本の防衛~領土・主権~」パネリストは、小野寺五典・防衛大臣、北岡伸一・国際大学学長、長島昭久・前防衛副大臣、そしてモデレーターが、評論家の潮匡人さんだ。小野寺防衛大臣は、北朝鮮の核実験、さらには尖閣諸島で緊張感が高まる中、東京からネット中継でご参加頂いた。大臣にはこの場を借りてお礼を申し上げたい。なお、このセッションは、時節柄完全にオフレコで行われたので、ツイートが残っていない。</p> <br />
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そして最後の分科会が始まった。分科会10-A 「日本の外交 ~米中関係と日本~」 パネリストが、川島真・東大教授、グレン・フクシマ氏、前原誠司・元外務大臣、そしてモデレータが、村田晃嗣同志社大法学部長だ。村田先生は、2セッション連続での登壇だ。<br />
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武器輸出三原則の見直しは地味だが評価できると思う。米国との関係が維持拡大できる。武器の共同開発など防衛装備面で協力していくことにより、日本が米国にとってなくてはならない存在になっていくことに貢献する。(前原氏)<br />
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オバマ大統領はアジアの重要性を本当に信じていると思う。彼はハワイ、インドネシアで育っていることも影響があるかもしれない。日本が能動的にアメリカに働きかけることも重要。(フクシマ氏)<br />
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東アジア太平洋地域では1979年以降国家間紛争が起こってこなかった。今後もこれを守れるか、ということ、そしてアメリカの東アジアでの軍事的なプレゼンスを今後も確保することができるのか、というのが我々にとっては非常に重要になってくる。(同志社大・村田氏)<br />
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日本が努力しないと日米関係はマネージできないと思う。その一つがTPPであり、沖縄の問題。中国は日米離間政策のため、様々なことをしてきた。中国は日本にTPPに入られたくないだろう。中国が嫌がるから入るというわけでは決してないが、TPPには戦略的な判断で入る必要がある。早くテーブルにつき、一緒にルールメイクをしていくことが重要。(前原氏)<br />
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中国にとって嫌なことは、日米、さらにオーストラリアから包囲網をかけられる感覚をもたされること。中国は日米関係を離間させようと情報戦も含めてかなり力を入れているので、日本は米国を安心させるようにしなければならない。(東大・川島氏)<br />
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中国国内の激しい権力闘争も背景にあり、海洋資源上、尖閣の問題のみならず、今後は沖縄にも波及する可能性すらある。それは彼らの戦略上の変化で、彼らは一旦決めたことはそれが事実となる。過去のことをいくら言っても聞く耳はもたない。尖閣のビデオも最初見ようともしなかった。(前原氏)<br />
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中国が抱えている問題は、1)社会の格差、2)共産党体制の維持、3)社会における成功の懐疑。経済重視でまずは富を得るべきという発展派の協調路線と、まずは分配を優先すべきという強行路線という対立がでてきている。今後中国は経済を武器にした外交戦略をとってくる可能性がある(東大・川島氏)<br />
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安倍政権へのオバマ政権の期待は、経済回復と日米関係の修復、懸念は他の国との関係悪化など。オバマ政権下で、アジア、特に中国への関心が高まっている。実際にワシントンに10人いるスタッフのうち8人が中国の専門家。日本については自分だけ。(フクシマ氏)<br />
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分科会10-Bは、「LCCは地域に富をもたらすのか~空の規制緩和と地域振興~」だ。パネリストは、岩片和行エアアジア・ジャパン前会長、大串博志・衆議院議員、冨塚優・リクルートライフスタイル社長、星野佳路・星野リゾート社長、そして、モデレーターが御立尚資・BCG日本代表だ。<br />
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分科会10-C「メディアの使命~日本を良くするために」のパネリストは、近藤洋介・衆議院議員、瀬尾傑・「現代ビジネス」編集長、丹羽多聞アンドリウ・BS-TBS事業部長兼統括プロデューサー、「プレジデント」編集部・面澤淳市氏。そしてモデレーターが、日経新聞論説委員の関口和一氏だ。<br />
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「商業主義とジャーナリズムとの矛盾の中で動いている。記者自体の問題の前に経営能力を疑うべきでは」、と言う意見も出ていた(代々木学園・一色氏)<br />
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分科会10-Dが、「行動宣言IV:ソーシャル・アントレプレナーシップ~役割と新たな挑戦~」だ。ディスカッションリーダーが、大西健丞・シビックフォース代表理事、佐藤大吾・ジャスト・ギビング・ジャパン代表理事、白木夏子・HASUNA代表、藤沢久美・ソフィアバンク代表だ。<br />
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そしていよいよ、最後の全体会「G1サミットの行動宣言」だ。パネリストは、〔女性の活用〕岡島悦子・プロノバ社長、〔発信力〕梅澤高明A.T. カーニー日本代表、〔地方自治〕熊谷俊人・千葉市長、〔政治〕田嶋要・衆議院議員、〔社会企業〕佐藤大吾ジャスト・ギビング・ジャパン代表理事だ。モデレーターは、僕が務めた。<br />
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「G1サミット行動宣言:女性の活用」では、岡島氏より2016年には、女性のリーダーに占める割合を30%にする、という宣言がなされた。やるべきかどうかの意見が分かれたが、一つの目安として実現に向けて最大限の努力をしたいと思う。<br />
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「G1サミット行動宣言:政治」田嶋要氏より、自民党は政権交代で野党の悲哀を経験し、民主党は政権与党の責任を痛感し、同時に第三極がでてきている今の日本は、政治を大きく変えて行く上で大きなチャンスだと思うとの話があった。宣言は、真の国益を考え、大臣等の外遊をしやすくする。外交日程や内政を優先できる国会審議を実現する、インターネット選挙、党派を超えた議員立法、一票の格差を無くす等。<br />
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「G1サミットの行動宣言:地方自治」熊谷・千葉市長より、首長が集まると国への主張をまとめるのが中心だが、G1首長ネットワークは実際に現場から行動し、「同時多発的」に変えて行く場にしたい。会場の岡山県知事からは、企業経営者への要望として、社員が出馬する際の休職制度をもっと取り入れて欲しいという意見が出た。<br />
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「G1サミットの行動宣言:ソーシャル・アントレプレナーシップ」ではソーシャル・キャピタリストのプラットホームを創る、G1ソーシャルアワード、教育プログラム、NPO情報公開法整備を進めるなど、表明があった。<br />
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他には、日本の発信力の行動宣言の部でも、「東京オリンピック・パラリンピック招致」等の様々な意見が出た。G1サミットの行動宣言は、近々<a href="http://g1summit.com/about.html"><strong>G1サミットのウェブサイト</strong></a>にアップされる予定だ。<br />
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前日の全体会でモデレートしていた石倉洋子さんより、次のツイートがアップされた。「G1サミットの行動宣言のライブストリームを見ていると、協働や連携の可能性がたくさん見られます。具体的なアイディア、誰が何をしているのか、がわかるので、効果的」。<br />
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そして最後のクロージング・セッションを迎えた。その場にいたG1サミットのボードメンバーが全員壇上にあがり、締めの挨拶をした。とても感動的であった。<br />
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グロービスの鎌田英治が、第五回目のG1サミットをブログにこうまとめてくれた。<br />
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「この5年間のG1サミットの進化は著しい。参加者の多様性と規模、参加者同士の関係性を深めつつ、自覚とコミットを引き出す場づくり。最終的に行動に落とし込もうとする実践重視の姿勢など、多くの面でG1サミットは進化したと思う。集中環境とリラックス環境を交差しながら、参加者の頭・体・精神はいい塩梅で柔らかく、そしてストレッチしていったのだと思う。とにかく様々な面で素晴らしく進化していた。<br />
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日本を良くするには様々なセクターが力を合わせる必要がある。まさにマルチステーク・ホルダー(民間企業、ベンチャー企業、政治、地方自治、官僚、アカデミック、NPO、文化、スポーツ)が集う多様性に満ちた場だった。多様性のある場だから、アイディアに広がりが出て発想が飛ばせる、タブーにも挑戦できる、そして新結合(イノベーション)が生まれる訳だ。<br />
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世代も広がっている。そして年齢に関係なく「若者から学ぶ」し「先達から学ぶ」。相互学習ができるコミュニティになってきている。世代を超えた相互学習は、相互の刺激となり、やがて変革行動が生まれていくイメージが連想できる。<br />
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G1は、まさに一歩一歩はずみ車を押しながら、活力と影響力を持った強固なコミュニティに進化・変貌を遂げてきた。そして、これからも進化を続けるだろう。<br />
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今回注目したいのが『思考から行動』を具現化する『行動宣言』だ。5つの領域でのイニシアチブが決まった。『ダイバーシティ』、『日本の発信力』、『地方自治』、『政治』、『ソーシャル・アントレプレナーシップ』だ。これらが動き出すと日本が動き出す。各領域は実は互いに関係し合う、そんな全体統合的な関係性を有している。相互に刺激し、フォローアップしながら、力を合わせ、支え合いながら動いていくのだろう。<br />
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宣言したことを結果に繋げ、その為にフォローアップと、モチベーション(アドレナリン)を維持し続ける仕組みづくりも今後手が打たれるだろう。<br />
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フロアを巻き込んだ議論と行動宣言、ネットの配信を通じた社会への発信(=G1参加者にとってのパブリックコミットメント、何百万人という視聴者のインスパイア、勇気の拡散)、こうした形でダイナミックに、G1参加者はオーナーシップとコミットメントを高めている。これがコミュニティが持つパワーであり、新たな社会変革のメソドロジーにもなりうる。<br />
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桜井よし子さんから出たキーワード『摩擦を起こせる人は社会の宝』<br />
竹中平蔵さんから出たキーワード『日本の景色を変えよう。そして世界を変えよう』<br />
堀のキーワード 『ひとりひとりがリーダーの自覚を。同時に仲間で支えあおう』<br />
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最終セッションで、堀が今回の3つのキーワードをこう束ねた。<br />
『我々が摩擦を起こしつつ、日本の景色を変えよう。一人一人がしっかりと行動を起こしつつも、変革に向き合う時には孤独感を感じることもある。だから支える仲間がいる。ここにいる仲間で力を合わせて、やっていこう!』<br />
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そして、クロージング・セッションで、井上英明氏が、前夜の飲み会での堀の言葉を紹介した。『子供達の為に日本を良くしたい。これがG1にコミットする理由だ。もしも、ここにいるリーダー達にできないならば、日本は変われない。だからこそ“僕らがやらなければ”と強く思うのだ。ただ、一人でできることは限られている。だからこそ仲間が力を合わせ、支え合ってやるのだ。』<br />
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まさに! と多くの参加者が感じただろう。最終セッションでの堀の言葉に正直グッとこみ上げるものを感じた。これがG1をここまで創ってきた男の動機なのだ」。<br />
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こうして、クロージング・セッションが閉幕した。僕は、フェアウェルランチで、参加者一人一人に声をかけて、午後2時半ごろにバスに搭乗した。雪のため、磐越西線は不通となっており、高速道路も閉鎖されていると言う。バスの中で、僕は、今までの緊張感を一挙に解き放つかの様な勢いで、仲間と放談しながら、楽しく過ごした。そして、郡山からの東北新幹線では、爆睡して東京駅に辿りつき、家族と帰り道でG1の思い出をシェアしながら夕食を共にし、静かに帰宅した。<br />
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達成感と熱い高揚感を胸に、ネットでG1の反響を読み続けた。その夜はなかなか寝付けなかった。<br />
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<p>2013年2月20日<br>
二番町のオフィスにて執筆<br>
堀義人