今年6月発売の『グロービス流 あの人頭がいいと思われる 考え方のコツ33』から「7.イメージで考える」の一部を紹介します。
人間は物事を考える際に、言語だけではなく、ぼんやりとしたイメージを持ちながら考えるものです。抽象度の高い事柄(例:「無とは何か」)を考える際には多少ぼんやりしたイメージで考えても大丈夫ですが、ビジネスでは、具体的なイメージを持ちながら考えたり議論することで、より良いソリューションに到達できることが少なくありません。たとえばマーケティングで用いられる「ペルソナ」の手法を用いることで各人がイメージする顧客像のブレを大幅に低減することができます。ベンチャーの「リーンスタートアップ」やデザイン思考で用いられるプロトタイプも、それがあるからこそ具体的な改善点等が浮かびやすくなります。ビジネスの結果は、結局最後には具体的な行動や数字などとして表れます。抽象と具体を行き来することも意識しつつも、具体的なイメージで考える方がいいときには徹底的に具体にこだわることが思考や議論の質を高めるのです。
(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)
◇ ◇ ◇
具体的なイメージは良い議論につながる
マーケティングではペルソナという、サービス・商品の典型的なユーザー像をかなり具体的に設定することがあります。たとえば、「名前は山岡優香。東京都文京区本郷に住むアラサーのビジネスウーマン。IT企業で営業職をしている。年収○○万円。独身、彼氏あり。夜は自宅でネット動画を見ることが多い……」といった感じです。具体的にイラストを描くこともあります。
これなどは、より具体的な顧客イメージを組織内で共有し、議論するための仕掛けともいえます。「この山岡さんがこの製品を使うとしたら、こんな機能も欲しがるんじゃないのかな」といった議論がしやすくなるのです。具体的なイメージで考えることの力は偉大なのです。
固有名詞で反応をイメージする
ある制度を提案した場合、どのような反応が起きるかをイメージで考えることも有効です。「Eさんなんかは露骨に嫌な顔をしそうだ。Fさんは大賛成だろう」など、キーパーソンの反応などは固有名詞レベルで具体的にイメージしてみてもいいでしょう。30人程度であれば、固有名詞で考えることはそこまで大変ではありません。
大企業になるとさすがに全員の反応を固有名詞レベルで考えるのは難しいですが、それでも典型的な社員像を何パターンかイメージし、検討することは有効です。「30代の中堅社員には絶対に受けないだろう。この層にも受け入れられるような施策も盛り込んで改変すべき」といった感じです。施策というものはあまりに朝令暮改を繰り返すのも好ましいことではないので、事前にしっかりその反応をイメージしておくことが必要です。
ケースによってはソシオグラムという関係者の相関図を書くこともあります。その際、影響を与える人をモレなく書くことが必要です。そのうえで、そこに書かれた関係者がどのような反応を示しそうかを頭の中でイメージしてみるのです。
『グロービス流 「あの人、頭がいい! 」と思われる「考え方」のコツ33』
著:グロービス 発行日:2021年6月16日 価格:1,650円 発行元:ダイヤモンド社