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MBA学長が茨城ロボッツオーナーになりB1昇格するまでの5年間を振り返る①選手、スタッフ、地域の満足度の向上

投稿日:2021/05/27更新日:2021/05/28

(2021年5月16日にB1昇格を決めた後の記念写真)

5月15日、16日についにバスケットチーム・茨城ロボッツがB1昇格を決めた。5年前、売上高、成績、観客動員ともにリーグ最下位だったロボッツが、B1昇格を果たすまでを本コラムで振り返ってみたい。(全2回、前編。後編はこちら

ドン底からのスタート

5月15日、16日は忘れられない日になった。苦しい接戦のあとの逆転、それを死守しての勝利に最後の笛がなったときには、アリーナが歓声で包まれ、感動で倒れこむ選手、かけよって抱き合う選手、ブースターもスタッフもみんなが一緒になって喜びあった。
(参考)茨城ロボッツハイライト  

                           (5月16日昇格が決定した瞬間、歓喜の選手達)

とはいえ、ここまでの道のりは簡単ではなかった。僕がバスケットチーム茨城ロボッツの経営に参画したのは2016年4月だ。当時ロボッツを、2014年に経営破綻した前身チームを買い取った山谷社長が一生懸命存続させてくれていた。けれども、前運営会社の破綻により地域からの信頼を取り戻すことがままならず3つの「ビリ」が揃う、厳しい状況だった。

成績はNBL(Bリーグの前身)に所属する12チーム中12位。見に来てくれる人もまばらで、観客動員数も最下位。経営状況も数千万円程度の売上で、こちらも最下位だ。

僕はふるさとである茨城のチームということで全面的に応援することを決めたのだが、まさにドン底からのスタートだった。2016年4月と6月と2回に分けて3000万円ずつ合計6000万円増資して50%の株式を取得、1億2千万円の資本に対して累積赤字が1億1600万円超で、かろうじて債務超過を免れたのが実態だった(その後コロナを経て全株式を(株)グロービスが買い取り100%子会社とした)。

こうした状況だったから仕方がないが、選手やスタッフが置かれた環境も快適とは言い難かった。そこで僕はまず選手に徹底的にヒアリングすることにした。シーズン最後、選手を含めたスポンサー感謝会に出席させてもらい、お開き後に選手一人一人から話を聞かせてもらった。そこで浮かびあがった課題が3つだ。

まず1つめが、「移動をもう少し快適にしてほしい」ということ。他のチームは長距離の遠征では飛行機や新幹線などで移動していたが、ロボッツは経費を削減するために長距離の遠征でもバスで移動していた。バスでの長距離移動では疲労も残り試合に集中できない。遠征の交通手段をしっかりしてほしいということだった。

次に出てきたのが報酬などの「待遇」だ。他のチームと比べても年俸が低く、サプライなども充実しておらず、これでは大事にされているとは思えないという意見だった。

そして最後が「練習環境」。他のチームにはいつでもシュート練習等ができる体育館を持っているところがある。ロボッツは練習の場所も固定していないし、時間もまばらだ。これでは練習に集中できないというのだ。

要はスポンサーも観客も少ないために売り上げが少なく赤字だったから、かけるべきところに費用をかけられていなかったのだ。その結果、満足度も下がり良い選手がなかなか定着しないのだ。話を聞いた後に全選手に「全て要望を叶えます。次のシーズンもぜひロボッツに残ってほしい」と伝えて握手をした。

だがロボッツはBリーグではトップリーグからの降格を余儀なくされたこともあり、結局翌季に残ってくれたのは2名だけだった。実力のある選手は1部リーグに移籍するなどしてロボッツを去っていった。  

組織構築と地域に根差すための「M-SPO」

 そこで僕は、山谷社長、上原GMとも相談して不満を徹底的になくすことにした。優秀な選手とスタッフが入ってきてくれるように環境整備を行い、組織構築をした。そしてつくばから水戸に移転したロボッツの象徴として「M-SPO」を建てた。具体的に行ったのは、次の3つだ。

●選手の満足度向上

選手から要望があった移動をスムーズにするため、専用のバスを用意し(久信田観光さんに感謝です)、加えて長距離移動は飛行機や新幹線を利用するように改善した。年俸も可能な限りアップした。水戸移転に伴って那珂総合体育館や青柳体育館を使わせてもらい、選手が満足できる環境になるよう最大限努力した。2017年にロボッツ専用アリーナが完成し(後述)、2019年にはアダストリアみとアリーナも完成して、練習を行える環境が整った。3つの不満を解消するべく努力をした。今や、Bリーグ屈指の環境だと思う。

(2019−20シーズン前に自宅に選手スタッフを招いてのランチ)

●スタッフの満足度を向上させる

優秀なスタッフに入ってもらうために、水戸のど真ん中に事務所を移転し、小さいけれどビルのワンフロアを借り切って事務所とした。以前は、トイレも男女兼用である郊外にある雑居ビルであった。また、経費の圧縮という理由で移動の手段として特急に乗ることも控えていたが、もちろん特急乗車もOKにした。

可能な限り、できる範囲内で働きやすい体制をつくっていった。2020年には茨城放送内にワンフロアを借りて、メチャクチャ格好いいオフィスを作った。オールスターで水戸に来られたBリーグ関係者には、「Bリーグで一番格好いいオフィスだね」と言われた。とても嬉しい褒め言葉だ。 

●地方創生の魁モデル:象徴としてのM-SPOの設立  

ロボッツは、2016年7月にBリーグ発足とともに、本拠地をつくばからB2のアリーナ要件を満たす水戸に移転してきた。従い、水戸では知名度も低く、それほどファンもスポンサーもいなかった。

僕がロボッツの経営に参画したのは、そもそもが「水戸ど真ん中再生プロジェクト」がきっかけだった。つまり、地方創生の魁モデルを作ることが目的で、その一環でロボッツに出会ったのだ。水戸の地域に根差して応援してもらうために、地方創生の象徴的なものをつくりたいと考えた。そこで、「水戸ど真ん中再生プロジェクト」で常に問題として認識されていた、水戸ど真ん中の2000坪弱の空き地に目をつけて、ロボッツがそこを再開発することにした。

ここはデパートが撤退した跡地で、水戸市内で最も交通量が多い好立地にあるのだが(東京で言えば銀座4丁目の角に相当する)、昼は砂利で空き地であり、夜は灯りもなく真っ暗になってしまう場所だ。その空き地のために、ど真ん中が寂れていったと言っても過言ではない。そこをロボッツが再開発できたら街中の再生に活かせるし、ロボッツの知名度も上がり、水戸市民・茨城県民の士気も上がる。一挙両得で問題が解決するのだ。スポーツチームが街中を再開発するなど、聞いたことが無い。前例が無いことをやるのが、ロボッツなのだ。

僕は土地の所有者である住友不動産に直談判して、ロボッツの本拠地として、仮設アリーナとカフェ、スタジオの複合施設「M-SPO」として再開発することにした。「M-SPO」はロボッツファンやファミリー連れでにぎわい、「M-SPO」を通して、選手、社員、そして地域の人に誇りを持ってもらえているのではないかと思っている。

その後、M-WORK(高校の後輩であるエニグモ須田社長との共同プロジェクト)、M-GARDEN(千波湖を見下ろす迎賓館)、ハーバード歴史博士による『水戸維新』(PHP研究所)の出版、茨城放送の経営参画など矢継ぎ早にロボッツは、スポーツ以外の分野で「地方創生の魁モデル」を実施すべく活動している。

これらの努力が実り、売り上げと観客動員数も伸び、双方ともB2ではトップクラスとなった。まさに「ビリチーム」からB2の「トップチーム」に躍り出た。これを僕一人の力で成し遂げたとは微塵も思っていない。この成果はひとえにチーム・スタッフの皆さんの頑張り、さらにはスポンサー・ブースター・自治体等の協力があってのものと深く感謝している。僕はあくまでも方向性を示して、ガンガンに応援してきただけなのだ。

さらに、幸いなことにB2の枠を超えた評価を得ることもできた。2021年のオールスター招致にも成功することができた(コロナで残念ながら中止となってしまったが)。また、2020年に茨城ロボッツは、第3回スポーツビジネス大賞のライジングスター賞を受賞するに至ったのだ。

後編に続く

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