MBA学長が茨城ロボッツオーナーになりB1昇格するまで5年間を振り返る②4C戦略によるパワーアップ

(2021年5月16日B1昇格を決めて最後に挨拶をする堀オーナー)

5月15日、16日についにバスケットチーム・茨城ロボッツがB1昇格を決めた。5年前、売上高、成績、観客動員ともにリーグ最下位だったロボッツが、B1昇格を果たすまでを本コラムで振り返る。前回は、組織として取り組んだことを紹介したが、今回は僕個人としてやってきたことを紹介する。

4C戦略でファンとつながる

ロボッツが組織上とってきた戦略は、前編の通り効果的に遂行された。スポンサーを獲得して、観客動員を増やし、スクールを拡充して、グッズを広げることなどだ。これらは、殆どがMBAの手法を使えば方法は見えてくる。それらの遂行のために僕はオーナーとして前面に立って応援してきた。特に東京方面のスポンサー営業は、汗をかいてお願いをして実現したものが多い。この場を借りてスポンサーの皆様に感謝したい。

また、コロナの時には、億単位の増資や損失補填をしてロボッツを支え続けた。だが、オーナーとしてできることはそれだけでは無いはずだと思っていた。もっと広告塔として、ロボッツを広げられないかを常に模索してきた。

僕はいつもロボッツの青いユニフォームで取材を受け、テレビにも出るし、SNSにも写っている。そして、ホームアリーナでは、得点の度に立ち上がって盛り上げる。これらには明確な意図がある。僕個人が考えた戦略、名付けて「4C戦略」の一環だ。「4C」とは何だろうか?経営の3Cとは、Customer、Competitor、Companyを指す。では、堀義人の「4C」戦略とは?それを解説していきたい。

Costume

僕は茨城に足を踏み入れた瞬間から、ロボッツのユニフォームを着ると決めている。知事・市長との面談や母校での140周年記念スピーチ、さらには街中を歩く時も堂々とユニフォーム姿で居続ける。茨城以外でもバスケット関係の場や、NHKなどのメディアの取材を受ける際(メディアの規定がなければ)やSNSにはいつもロボッツのユニフォーム姿で映ることにしている。

「堀さんがいつも青いユニフォームを着ているけれど、何だろう?」と気がついてもらうことで、ロボッツを知ってもらえることもある。またユニフォームスポンサーをしてくれているアダストリアさん、メルカリさん、常陽銀行さんの露出が増えて価値も上がる。知名度も上がり、スポンサーが喜ぶのだ。しかもユニフォーム=制服だから、フォーマルでもある。

今では、どこにいってもユニフォーム姿なので、ロボッツユニフォームが市民権を得た感じとなっている(さすがにお葬式の場ではユニフォームを脱いだが)。

コスチュームを通した発信でアイコン的に目立つのが4C戦略の1つ目だ。

Communication

2つ目のCがCommunicationだ。茨城は全国で唯一地方テレビ局がない県だ。ラジオAM(とFM補完)一局しかないので、ロボッツの存在を知ってもらうことに苦労した(今は茨城放送をLuckyFMとしてリブランドしてロボッツ傘下に収め、ロボッツを取り上げてもらえる機会が格段に増えた)。

そこで僕個人のTwitter、Facebookを中心としたSNS(フォロワーは全部合わせると50万人ほどになる)で徹底的に発信をすることにした。このコラムも同様だ。僕は、原則テレビに出ない主義だが、茨城県だけは例外だ。NHK水戸支局の「いば6」のレギュラーコメンテーターとして2019年から2020年まで1年間出演し、今も非定期的に出演している。要はひたすら発信をし続けているのだ。

「ロボッツ」でエゴサーチをして、出てきた投稿に片っ端から「いいね」を押して、ファンの方とコンタクトをとったり、バズらせたり、時には炎上したりしながら、ロボッツの名前を外の方に届くようにしている。「悪名は無名に勝る」と本当に信じている。どんどんオーナーが前面に出て目立つことによって発信力が増していくのだ。

B1昇格を成し遂げたことによって、NHK水戸支局の特番やニュース、茨城新聞を含む各紙が取り上げてくれて、茨城放送は中継や速報を放送することによって茨城県内での知名度は抜群に上がり、全国的にもロボッツはB2の枠を超えた知名度が高いチームになってきていると思う。まさにCommunicationだ。

(5月16日の試合前に中央に集まり気合いを入れるロボッツ選手達)

Community

3つ目のCは、Communityだ。当時はコアなブースター(ファン)は少数だがいたが、それほど強いコミュニティにはなっていなかった。ファンクラブなどの組織化は会社で行ったが、僕個人としては、ブースターとの触れ合いを大事にしてきた。

可能な限り一人ひとりの名前を覚えるようにして(全員は覚えられていないけれど)、アリーナでは行き交う人全員とハイタッチをして、試合前にはブースターが集まるラウドエリア(応援席)に行って一緒に騒いで歌って盛り上がり、SNSでつながったファンの懇親会に乱入させてもらったこともある。ファミリーとしてみんなが親しくなるように積極的に声をかけている。

今はコロナで疎遠にならざるを得ないのが本当に悲しい。本当はファンの皆さんと抱き合いたい(これってセクハラかな?)、ハイタッチしたいのだ。僕にとっては、ブースターの皆様は、一緒に戦う「戦友」(これも古いかな?)みたいなものなのだ。ロボッツの戦いを盛り上げてくれる仲間なのだ。

Contents

4つ目のCが、Contentsだ。エンタメで一番重要なのは、コンテンツだ。つまりスポーツエンターテイメントの一部として、僕自身が1つのコンテンツになることを決めたのだ。スポーツエンタメの一番のコンテンツは、試合そのもので、主役は選手だ。その次のコンテンツは演出でありRDT(Robots Dance Team)などのショーである。そして、それらと同等に重要なのがアリーナの観客というコンテンツだ。アリーナが盛り上がっているのが最高のコンテンツなのだ。オーナーがそのコンテンツの一部となり盛り上げるのが、Contents戦略だ。では、具体的にどうするのか?

先ず重要なのは、座る場所だ。オーナーは、通常スーツを着てVIP席で静かに応援するものだが、僕はコートサイドのど真ん中を選んだ。ユニフォーム姿で試合に臨み、得点したら立ち上がって拍手をする。コートサイドで率先して応援することで、選手にエナジーを与え、アリーナ全体に熱と楽しさを波及させ、盛り上げていくのだ。

そのおかげか、こんなSNS投稿を見たことがある。「ロボッツで誰が好き?」と子どもに聞いたら、「〇〇選手と堀オーナー」というので「堀オーナー??オーナーって何をする人かわかる?」と聞くと「選手を盛り上げる人でしょ」と返ってきた、というのだ。子どもたちが楽しむコンテンツになっているようで、嬉しかった。

また、「堀オーナーが来ると盛り上がる」、「アリーナに来ると堀オーナーが来ているかどうかを先ず探してしまう」という声も耳にする。まさに、オーナーがコンテンツの一部なのだ。そのうち、背番号28番のユニフォームやグッズが売り出されるのではないかと期待してしまう。(笑)

(5月16日に昇格を決めて高橋市長と喜ぶ堀オーナー)

今季は、ロボッツは全国各地のアウェイで29試合戦った。そのうち22試合を応援に行った。ホーム28試合のうち23試合を応援に行った。グロービス経営大学院の学事日程とG1イベント以外は全て参加したのだ。プレーオフの全7試合も全て応援に行った。何と年間で52試合も応援に行ったのだ。

ホームでは完全にコンテンツの一部となり盛り上げた。だが、アウェイでは、コロナということもあり、対戦チームに配慮して大人しくすることにした。アウェイでもアウェイの応援団が盛り上がった方が、エンタメのコンテンツとしては面白い筈なのだが、それを不快に思う人・チームもいるから仕方が無い。

さて、この通り4C戦略を遂行してきた。この4Cは個人としての付加価値である。組織としては他の様々な施策を打っている。4Cが良いか悪いかの評価は分かれるであろう。僕の判断基準はユニークでインパクトあるのが良いと思っているので、今後とも4Cは続けるつもりだ。ちなみに、僕が一番良くないと思っているのが、普通で他と一緒である。

さて、このタイミングで、2014年からロボッツを育て、バートナーとして経営してくれた山谷社長が退任する。これからは、元グロービス社員で、その後京大アメフト部の監督や滋賀レイクスターズの代表取締役COOを歴任した西村大介さんが社長となって引っ張ってくれることになった。

ロボッツを存続させてくれたこと、ここまで成長させ、B1に昇格してくれたことに対し山谷さんに深く感謝したい。これからの第二幕は、西村体制で進むことになる。早速新体制でB1に向けた新たな戦略を練っているところだ。僕は、B1昇格が決まった時に、10年以内に日本一になることと、Bリーグ2026年構想の新B1に最初から参戦することを宣言した。

みなさん、これからの第二幕も一緒にロボッツを楽しみながら、応援していきましょうね。(^^)/

(本コラムでは触れなかったが、2016年からロボッツ再生のための戦略は、MBA学長が「バスケチーム」を率いてみた結果に詳しい)

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