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売上高営業利益率――イノベーションなくして劇的向上はない

投稿日:2020/11/20

今年8月発売の『KPI大全–重要経営指標100の読み方&使い方』から「074 売上高営業利益率」を紹介します。

売上高営業利益率は、その企業の事業本体の儲けの度合いを示す数値であり、経営者のみならず、投資家なども非常に気にする数字です。大手企業の中では、キーエンス(センサー等製造販売)やオービック(システムインテグレーション他)、ジャフコ(ベンチャー・キャピタル)などが50%以上あるいはそれに近い数字を残しており(2019年度)、「本業の収益が非常に良い会社」となっています。日本では通常、10%を超えればまずまず優秀とされますので、これらの企業の営業利益率がいかに高いかがわかります。この数値は地味にコスト削減をするなどでも改善することができますが、劇的に大きくするためには、極めて差別化されたイノベーティブな製品開発をする(アップルなど)、あるいはユニークなビジネスモデル、特に収益モデルを構築する(フリーミアムで高収益を誇った頃のDeNAやグリーが代表例)などの工夫が必要になります。その意味では、同業他社に比べてこの数値が高いだけで満足するのではなく、他業界なども参考にイノベーティブな取り組みができないかを考えることが必要と言えるでしょう。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、東洋経済新報社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

売上高営業利益率

一定の売上げに対していくらの営業利益があるかを示した数字。単純に「営業利益率」と呼ぶことも多い。営業利益は粗利から販売費(広告費など販売にかかる費用)および一般管理費(総務などの管理部門の費用)を差し引いたもの

KPIの設定例

新規事業とはいえ5年目、間接部門の経費は概ね6%程度は配賦されてくるから、コントリビューション(貢献利益)レベルで6%を目指し、営業利益レベルでトントンになるように頑張ろう

数値の取り方/計算式

営業利益÷売上高

ただし、事業部単位の評価においては営業利益のかわりに粗利から直接費を差し引いたコントリビューションを用いることも多い

主な対象者

経営者、財務責任者、事業責任者

概要

営業利益は全社のみならず、事業レベルや製品レベルでも本業の儲けそのものを示す重要な利益とされています。欧米で多用されるEBIT(Earnings Before Interest and Taxes:利息および税金控除前利益)とほぼ同じ意味を持ちます。その意味で国際比較しやすい数字でもあります。売上高営業利益率の高い会社は俗にいう「儲かっている会社」といえるでしょう。

KPIの見方

この指標も業界によって多少の差はありますが、高低の大まかなめどはあります。一般に、5%程度なら「まずまず」、10%なら「かなり順調」、15%なら「高収益」、20%以上なら「笑いが止まらないくらい儲かっている」といった感じです。営業利益ベースでの赤字は一般には好ましくない状態といえます。

事業ごとにこの指標を見ることもできますが、その際には事業間で共有している間接費(本社部門の人件費など)の配賦(振り分け)が大きな問題となります。

KPIの使い方

ここでは事業ごとの売上高営業利益率について考えましょう。事業ごとにこの指標を使う場合、先に示したように間接費の配賦が大きな論点となってきます。よくあるのは「売上げに比例させて配賦する」というやり方ですが、これはビジネスモデルや粗利率が違う場合、不公平感を生みかねません。超簡便版でもいいのでABC(活動基準原価計算)などを用いて納得感のある配賦をすることが必要です。

実務的によく用いられるのは、その事業で使ったことが明確な直接費(その事業部の人件費など)のみを差し引いた事業部ごとのコントリビューションの比率を見る方法です。事業部長から見ると、直接費は自分の裁量でかなりの部分コントロールできる費用ですから、それを重視するわけです。企業内の売上げ構成や本社人件費に大きな差がない場合は、過去の数値を参考にし、例えば「あとで配賦される間接費はこのくらいだから、それと目標売上高から逆算して、売上高に対するコントリビューションの比率は10%を目指そう」などと考えるわけです。

売上高コントリビューション比率は事業ごとに見ていくことが大切ですが、事業の位置づけや成長ステージによって、当然ばらつきが出ます。例えば新規事業は、最初数年はコントリビューションがマイナスということが多いですが、会社としてある程度は新しい事業に取り組まないわけにもいきません。そこで通常は、全社としての目標営業利益率と、想定される各事業部の売上高とコントリビューション比率、そして間接部門のコストなどを勘案したうえで調整が図られるのが一般的です。

補足・注意点

営業利益率も粗利率同様、いたずらに経費削減で高めようとしてはなりません。しっかりとした営業活動を行うからこそ売上げが生まれるという場面も多いからです。一方で、会社の中には無駄な経費もたくさんあるものです。冗費を削り、売上げに結び付く活動にしっかりお金を使うという方向性は維持する必要があります。

関連KPI

コントリビューション、売上高経常利益率

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