決算書から見えてくるGAFAの意外なビジネスの姿
GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)のサービスを利用せずに一日を過ごすのは難しい――それほどにGAFAは私達の生活に大きな影響を与えています。そんなGAFAの特徴を皆さんはどんなふうに説明しますか?ビジネスの仕組みが凄い?売上や利益をあげている?様々な観点から説明が出来ると思います。
本書は、GAFAの決算書を読むことでGAFAそれぞれのビジネスの特徴を正しく理解することができます。たとえば、次のような事実は意外に感じる方が多いのではないでしょうか。
・Appleは事業を通じて得られた巨額の利益を用いて証券投資を行い、なんと資産合計の46%を投資有価証券が占めている
・Amazonの研究開発費はGAFAの中でも断トツのトップ、それが故に営業利益率は2~5%程度の低い水準で推移
・2017年から2018年にかけてFacebookはネットワーク機器インフラやデータセンターを一部自社で保有する方針にシフトし、有形固定資産額は倍増
決算書をいざ読もうとすると、分かりやすい「売上」や「粗利」に目を奪われがちですが、その他の科目を読み込むと、実はビジネスの特徴がよく表れていることがわかります。私達がなかなか気付くことが出来ない、GAFAの活動の真実を決算書は物語ってくれる――そんな面白さを本書で感じることができるでしょう。
目的をおさえ、効率的に決算書を読む
では決算書を読む際のコツは何でしょうか?本書では、決算書を読むことはツール(道具)であり、決算書を読む目的(過去から現在までの収益性の良し悪しや今後の見通し等)をおさえる必要性が強調されています。
本書ではあまり強調されていませんが、「対象となる企業のビジネスに関して仮説を持ち、決算書を読むこと」も重要ではないでしょうか。本書では筆者が丁寧にGAFAのビジネスの特徴を整理し、そこから考えられる決算書数値の仮説を提示してくれています。
実務において、忙しさのあまり無目的にお客様または自社の決算書を読み始めてしまう事があります。しかし、無目的に決算書を読み始めると、直感的に気になった決算書の数値ばかりに意識が集中してしまい、結果的に読み解きにもの凄く時間がかかってしまうのではないでしょうか。
決算書を読む目的を押さえ、その目的を達成するうえで自分なりに仮説を持ちながら決算書を読むプロセスを踏む事が効果的だと私自身振り返っていました。ビジネスモデルの理解を深めること、そして仮説思考を鍛える必要性にも改めて気付かされます。
決算書を読むコツを掴むと、更に嬉しいことがあります。それは、同業2社の決算書を比較し、細かい違いを浮き彫りに出来る事です。本書でもGAFAと近しい事業を展開している日本の企業(SONY、楽天、Yahoo! Japan、LINE)との違いを解像度高く紹介しています。
・在庫を持たない楽天より、在庫を持つAmazonの総資産回転率の方が良い
・Googleは売上の内85%を広告ビジネスが占め、Yahoo! Japanは売上の内65%をコマース事業が占める
同業2社の将来的な方向性も含め、似ているようで実は全く異なるビジネスを行っているのが決算書を通じて手に取るように分かります。
超エリート企業の決算書の中身を知るだけでなく、私達が決算書を用いて行う仕事の質をより良くしてくれるヒントが詰まった一冊です。
『GAFAの決算書―超エリート企業の利益構造とビジネスモデルがつかめる』
著者:齋藤浩史 発行日:2020/6/24 価格:1980円 発行元:かんき出版