エピクテトス先生2つの根本原理
「その悩み、エピクテトスなら、こう言うね。」
タイトル見ると、易しそうじゃないですか。
装丁も、吉祥寺あたりの雑貨店に置いてあってもいい感じ。
1900年前の古代ローマの哲学者エピクテトスの教えを、「上司にムカつく30代男性の相談」や「高校三年生の進路の悩み」を題材にして語る親切さ。YouTubeチャンネルで「
哲学の劇場」を主催する著者お2人の、軽妙洒脱な対話形式の文章。当然、読みやすいですよ。
しかし、中身はガツンと骨太。読み切れば、ストア学派の真髄が腹落ちすると同時に、哲学における「理性」、「論理学」、「倫理学」、「自然学」なんかも理解できちゃう(ただし第7章を飛ばさずに読み通せば)。
高校時代、世界史や倫理でちょっとかじって、哲学訳わかんない、何の役に立つんだかと放念してしまった人にこそ、読んでみてほしい。一息つくと押し寄せてくる将来への不安、今日の不安、過去への後悔に対処する、根本的な原理を教えてくれる。
エピクテトス先生はこんな風に言っているのだ。
「打てないボールは、打たなくていい」。あ、間違えた。これは松井選手の名言。しかし、これが、問題解決のための根本原理なのだ。「悩み事を権内にあるものと権外にあるものにわけよ」と先生はおっしゃった。権内/権外とは、自分でどうにかできること(権内)とできないこと(権外)を表す。そして、自分の力ではどうにもならないことをくよくよ思い悩む暇があったら、自分でできることに注力したほうがいいよと。
もう一つの根本原理が「心象の正しい使用」だ。エピクテトス先生は、「神は心象の正しい使用だけは我々の権内に置いたが、その他のものは置かなかった」と述べている。心象とは、現実があなたの心に映る形といったら良いだろうか。つまり起きている問題をどう見るかはあなた次第なので、これを正しく見て行動しなさい。神は「正しい見方」すなわち「理性」を、問題を解決する唯一の能力として権内に置いてくれたのであると。
1900年前から悩みはちっとも減らない。人間のための哲学
現代に生きる、ネットばかり見ている我々は、フェイクニュースに大慌てしたり、フィルターバブルの中で自分の耳に心地いい意見だけ聞いていたりしてしまうが、その心象に惑わされることなく、論理的に思考し(論理学)、正しく自然を認識し(自然学)、よく生きる(倫理学)ことが大事なのだ。ん?これはビジネススクールで教えていることの根本原理ではないか!
哲学(英語で言うフィロソフィー)は、学問する対象を絞っておらず、語源に遡って直訳すると「知を愛する活動・学問」という意味である。
エピクテトス始め古代の賢人の教えは、本人の著述ではなく、「子曰く」的な弟子との問答形式で残っているものも多い。これは、知というものが、問いと答えを繰り返す中で生まれ、知を愛するとは、正しい問いを立て続けることに他ならないからではないだろうか。
現代では、哲学が誕生した古代とは社会も大きく変わり、自然科学の知識は増え、テクノロジーも進化した。哲学は古代から連綿と自然から倫理まで幅広い分野をカバーしてきたが故に、茫洋として手に負えないと感じる人が多いかもしれない。しかし、我々が悩み事に対処する力はそう大きく変化してないようで、悩みはちっとも減らない。エピクテトスの提示した根本原理は、(山本さんによれば不測の事態で自滅してしまわないように、普段から練習しておかなければならないそうだが)全く古びず、我々のお悩み解決の助けになるだろう。
ところで、著者お二人の軽妙な解説に比べて、不器用な私の文章では、いかにこの教えをご自身の人生の悩みに活かせばいいのかわからないに違いない。
そこで、豪華企画。著者のお二人(+エピクテトス先生)にあなたのお悩みや質問に答えていただく対談を行います。
詳細は、下記になります。ぜひ、ご応募ください。
*お悩み・質問募集*
【〆切ました】詳細は、
【お悩み募集】哲学者エピクテトスに聞いてみたいお悩みを募集します!「エピクテトスなら、どう言うの?」対談企画|知見録公式noteをご覧ください。
*回答編はこちら
*
【お悩み回答】「ビジネスの悩み、エピクテトスなら、こう言うね。」対談
『その悩み、エピクテトスなら、こう言うね。』
著者:吉川浩満氏、山本貴光氏 発行日:2020/3/13 価格:1540円 発行元:筑摩書房