キャンペーン終了まで

割引情報をチェック!

【特集|withコロナ時代 変わるビジネス】ファイナンスの見るべき指標

投稿日:2020/05/07更新日:2020/05/15

withコロナ時代、ビジネスはどのように変わるのでしょうか。テーマごとにグロービス経営大学院の教員がオピニオンを紹介します。本記事のテーマは、個人のスキルです。

コロナがもたらす、ESGに即したファイナンス的指標を考える

筆者:鷲巣大輔 (グロービス経営大学院 教員)

もはやESG(環境・社会・ガバナンス)は経営上当たり前の言葉となったが、コロナウイルスの拡大によってその取り組みへの本気度合いに焦点が当たりそうだ。特にダイバーシティや従業員の労働環境に焦点を当てた「S:Social=社会」の観点は、コーポレートファイナンスにおいてもより重要性を増す様相を見せている。

大和証券のレポート(*1)によれば、全世界の資産運用会社、NPO投資家、企業年金が集まる投資家連合(275社、運用資産7.7兆ドル)は、コロナ問題に対する企業に「労働者の健康が最優先」「一時帰休の際には十分な金銭保証を」「自社株買いは停止し、役員報酬も制限せよ」と要求している。この傾向はコロナウイルスによってもたらされた危機に直面している今だけではなく、むしろその危機の中での「良い経験」「悪い経験」によって、これから将来にわたって付き合う企業やブランドが決まりそうだ。

コーポレートファイナンスの観点からいえば、「経営者の仕事とは、投資家・債権者の期待リターン以上のパフォーマンスをビジネスから生み出すこと」であり、その本質はESGの重要性が深まったとしても不変である。ただし、その視野と視座は、より長期的なものになり、継続して顧客をはじめとするステークホルダーの「共感」を得ることができるかどうか、という点にシフトするようになる。

このパラダイムシフトは、当然のことながら、1年や四半期といったスパンで測定する「短期的な収益」以上に、長期にわたって継続的に経済的価値を高められるかということがより重要になる。サブスクリプションモデルではLTV(Life Time Value:一人の顧客がそのライフサイクル内にどれだけの経済的価値をもたらすか)が重要指標とされていたが、これからはほぼすべての企業において、顧客との関係性を長期にわたって継続する、このLTV的発想に基づいたKPIデザインが求められるのであろう。

(*1)「コロナ後の世界」でESG投資の「社会」がより重視されるワケ

withコロナの時代のキャッシュの重要性

筆者:溝口聖規 (グロービス経営大学院 教員)

キャッシュは言うまでもなく事業継続にとって不可欠です。安定した企業活動のためには、ある程度の資金的余裕を確保するのが望ましいでしょう。特に、今回の新型コロナのように、予期せぬ経済環境の変化で企業活動が止まってしまった場合には、キャッシュを持っていることが非常に重要になります。

一般にキャッシュは、貸借対照表(B/S)では「現金及び預金」と流動資産の「有価証券」の合計と考えることができます。そして、「現金及び預金」と「有価証券」の合計が売上高の何か月分に相当するかを表す財務指標を、「手元流動性」と言います。

手元流動性(月)=(現金及び預金+有価証券)÷売上高(月次)

(*)手元流動性は、日単位で表す場合もあります。

通常の経済環境下では、一般に手元流動性は1か月が目安とされています。月中の諸経費等の支払いに備えて売上高の1か月分のキャッシュを確保しておけば、とりあえず事業継続は安全ということです。

しかし、現在のように新型コロナの影響で経済状況の先行きに不透明感が増すと、不測の事態に備えて会社はできるだけ多くのキャッシュを確保しておきたいと思うでしょう。また、機動的な借り入れができるように、日頃から金融機関との関係を構築することも有効になります。

先日、トヨタ(1.5ヵ月分)、ANAHD(2.2ヵ月分)等の大企業が、融資枠や借入金等を増加させ、財務安全性を高めるとの発表がありました。また、サイゼリヤ(3.4ヵ月分)のように、キャッシュが潤沢な会社が数百億円規模の融資枠の設定を検討する等、現在の経済環境の厳しさが伺えます。
*2020.4.24付け記事を再編集したものです。

  • 鷲巣 大輔

    グロービス経営大学院 教員

    一橋大学商学部卒業。学位:学士(商学)。FP&A(Financial Planning & Analysis)スペシャリスト。
    1995年大学卒業後にP&G日本法人に入社し、以後一貫してコーポレートファイナンスの仕事に携わる。P&G社を退職した後は、スタートアップ企業CFOや北米メジャービール会社モルソン・クアーズ社のAPAC地区CFOを歴任。2018年からは活動の舞台を日本企業に移し、投資ファンドがスポンサーとなる企業の経営企画を担当し、株主であるファンドと経営チームの橋渡し的立場で仕事をしている。
    経営の意思決定に大きな影響を与える「ファイナンス・ビジネスパートナー」を日本にも浸透させるために、複数企業のFP&A(経営企画)を担いながら、その課題や効果的な策を体系立てている。
    2007年からはグロービス経営大学院でファイナンスクラスの講師に従事し、多くの「ファイナンス・ビジネスパートナー」の創出にも力を入れている。

  • 溝口 聖規

    グロービス経営大学院 教員

    京都大学経済学部経済学科卒業後、公認会計士試験2次試験に合格し、青山監査法人(当時)入所。主として監査部門において公開企業の法定監査をはじめ、株式公開(IPO)支援業務、業務基幹システム導入コンサルティング業務、内部統制構築支援業務(国内/外)等のコンサルティング業務に従事。みすず監査法人(中央青山監査法人(当時))、有限責任監査法人トーマツを経て、溝口公認会計士事務所を開設。現在は、管理会計(月次決算体制、原価計算制度等)、株式公開、内部統制、企業評価等に関するコンサルティング業務を中心に活動している。 (資格) 公認会計士(CPA)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、公認内部監査人(CIA)、地方監査会計技能士(CIPFA)、(元)公認情報システム監査人(CISA)

サブスクリプション

学ぶ習慣が、
あなたを強くする

スキマ時間を使った動画学習で、効率的に仕事スキルをアップデート。

17,800本以上の
ビジネス動画が見放題

7日間の無料体験へ もっと詳細を見る

※ 期間内に自動更新を停止いただければ
料金は一切かかりません

利用者の97%以上から
好評価をいただきました

スマホを眺める5分
学びの時間に。

まずは7日間無料
体験してみよう!!

7日間の無料体験へ もっと詳細を見る

※ 期間内に自動更新を停止いただければ
料金は一切かかりません

新着記事

新着動画コース

10分以内の動画コース

再生回数の多い動画コース

コメントの多い動画コース