春休み中のお子さんと一緒に本を手にとってはいかがでしょうか?おすすめの書籍をグロービス経営大学院の教員が紹介します。
『あいぼうはどこへ?』
推薦者:荒木博行
対象年齢:小学生(低学年)
ニューヨーク公共図書館の門番を務める2頭のライオン像の物語。
知的好奇心を育むことの大切さを感じさせてくれる素敵な絵本です。
たとえ生きている世界が狭くても、「本」という扉を開ければ、世界の無限の広がりを体験できる。そんな大切なことを、この絵本は教えてくれます。
読んだ上で、親子で一緒に図書館や本屋に行って、できれば今まで触れたことがないカテゴリーの本を探しに行ってください。
新しい世界の扉は意外に私たちの身近なところにあるのですから。
著者:ジョシュ・ファンク 絵:スティーヴィ・ルイス 訳:金柿秀幸 発行日:2019/9/19 価格:1760円 発売元:イマジネイション・プラス
『数の悪魔——算数・数学が楽しくなる12夜』
推薦者:岡重文
対象年齢:小学生(高学年)
「1の不思議」、「0はえらい」からスタートし、素数、階乗、フィボナッチ数列など、数字に関すること、多面体、オイラー、トポロジーなど図形・立体に関すること、大人でも忘れてしまっている内容を小学生にも分かるよう【数学用語を使わないで】「数の悪魔」が楽しく教えてくれます。
そして、ポイントは、ただ、読むだけではなく、
●文中に出てくる「全ての3よりも大きな偶数は2つの素数の和として表すことができる」(ゴールドバッハの予想)を一緒に確認したり……。(勿論証明ができれば是非!)
●0,1,1,2,3,5,8,13,21,34,……、「前の2つの数を加えると次の数になる」フィボナッチ数を探したり、ちょっとネットで検索するとでてくる、「螺旋」や「黄金比」などへ発展させて、一緒に考えることができること。
プログラミング教育が小学校で始まり、AI化が進む社会の中で、「数学」=「データ(数字)」+「ロジック」は、今後、重要性が増してくるリテラシーのひとつ。
子供には「きっかけ」を、大人には「復習の機会」となる1冊です。
著者:ハンス・マグヌス・エンツェンスベルガー 訳:丘沢静也 発行日:2000/4/1 価格:1760円 発売元:晶文社
『鹿の王 上 ‐‐生き残った者‐‐』
推薦者:河村有希絵
対象年齢:小学生(中~高学年)以上
2015年本屋大賞を受賞した作品です。上下巻に分かれた大作です。中~高学年くらいから大人まで、大いに楽しめるのではないかと思います。我が家では、長男が4年生のお正月休みに親子で読みました。
鹿を操る「独角」という集団の頭であるヴァンと、少女ユナ、医術師ホッサルらがおりなすファンタジー。謎の疫病から始まるこの物語は、今の時期に多少刺激は強いかもしれませんが、友情、愛情、家族、仲間、そして医療……多様なテーマについて楽しみながら考えさせてくれます。第4回日本医療小説大賞も受賞されています。
また、著者の上橋菜穂子さんは、子どもも読めるシリーズ作品を他にも多く書かれていますので、上橋ワールドに触れるきっかけにもなるのではないでしょうか。
著者:上橋菜穂子 発行日:2014/9/24 価格:1450円 発売元:KADOKAWA
『いつか、すべての子供たちに――「ティーチ・フォー・アメリカ」とそこで私が学んだこと』
推薦者:君島朋子
対象年齢:中学生~高校生
小学生の娘が図書館で「伝記」を借りてきた時、私は「娘が将来の夢をふくらませられるような、女性の伝記を読ませたい」と思いました。が、女性の伝記は、マザー・テレサ、ナイチンゲール、ヘレン・ケラーなど、わずかしか見つかりませんでした。
もっと等身大の、現代社会での活躍をイメージできるものは?と悩んだまま、娘の小学校時代は終わりました。今、成長した娘に「あなたも社会を変えられる」と伝えたい、そんな気持ちを託す1冊が、この本です。
――大学生のウェンディは、貧困地域の学校出身のクラスメイトが学習に苦しむのを見て教育の格差を体感し、「いつか、すべての子供たちに、優れた教育を受ける機会を」と願い、優秀な大卒者が2年間だけ教師になるというアイデアを思いつきます。そして、実現に向けて立ち上がります。
この本には、貧しい地域の学校に大きな変化をもたらし、今やアメリカの大学生の人気の就職先となったNPO「ティーチ・フォー・アメリカ」の立ち上げの生々しい軌跡が、創設者のウェンディ・コップ自らにより書かれています。
「社会の役に立つ仕事がしたい」と考える中高生に、ぜひ読んでみてほしい、自分の手で社会を変える物語です。
著者:ウェンディ・コップ 監修:渡邊奈々 訳:東方雅美 発行日:2009/4/7 価格:1760円 発売元:英治出版
『おおきくなるっていうことは』
推薦者:許勢仁美
対象年齢:小学生(低学年)
「ようふくがちいさくなるってこと」から
「おもしろいことがどんどんみつけられるってこと」
「ちいさなひとにやさしくなれるってこと」まで、
そうそう!と共感できる文章が続きます。
子どもにそうあってほしいという期待と、親の自分はそうできているかなという自問を行ったり来たりしながら読むひと時。
「この一年、何をがんばった?何ができるようになった?」
「次の一年は、何ができるようになるかな?何をがんばってみようかな?」
読み終わった後の会話も楽しい一冊です。
子どもも大人も、おおきくなった自分を味わいながら、新年度への期待に胸を膨らませて。
うっかり大人気ないことをすると「おおきくなるっていうことは?」と突っ込みが入りますので、要注意!
著者:中川ひろたか 絵:村上康成 発行日:1999/1/25 価格:1430円 発売元:童心社
『ミライの授業』
推薦者:長尾景紀
対象年齢:中学生(と大人の両方)
「未来を予測する最善の方法は、それを発明することだ」
とは、パソコンの父といわれるアラン・ケイ(計算機科学者、教育者、ジャズ演奏家)の言葉である。
同様に、本書は「未来に生きる子供たちの未来は、子供自身がつくるものである」という考えから、ミライのつくり方を教えてくれる本。
14歳前後の世代を中心に語られているが、かつて14歳だった大人がまず読み、それから子供に渡してもらいたい。
なぜなら、ミライがあり、可能性があるのは、14歳も大人も同じ。
子供に対しては、大人のモノサシで測りきれない可能性探しに目覚めさせてあげましょう。
同様に自分のミライも。
著者:瀧本哲史 発行日:2016/7/1 価格:1650円 発売元:講談社
『モモ』
推薦者:平野 善隆
対象年齢:小学生(高学年)〜中学生
新型コロナウイルスで窮屈な生活を強いられているお子さんたちは、時間の使い方が難しく感じる日々を過ごされていることでしょう。
そこで、「時間」をテーマにした小説、ミヒャエル・エンデ作の「モモ」をご紹介します。この小説は、時間どろぼうと、ぬすまれた時間を人間にとりかえしてくれた女の子のふしぎな物語で、「時間とは何か?」「豊かな時間とは、どんな時間か?」といった問いに向き合わせてくれる本です。主人公の女の子、モモが成長していく姿に引き込まれ、最後までワクワクドキドキさせてくれます。
ただ本書は400ページもあるため、苦手意識を持つ子もいるかもしれません。そんな子にオススメの読み方があります。「目次を見て、各章がどんなお話になりそうかを書きだしてから読む」です。(21章ありますが、30分以内で書きだす。うまく書けなくてもOK!)
参考)【子どもも大人も】読書が2倍楽しくなる”読み方”|「GLOBIS知見録」編集部公式note
この読み方は、「仮説・検証」と「妄想力」のトレーニングになります。ビジネス書もそうですが、本を読む際に目的をもって仮説を立て、仮説を検証するイメージで読み進めると、読むスピードが上がり、理解も高まります。
お父さんお母さんも、この本を読んでいないようでしたら、一緒に妄想して「マイ物語」を作ってから、本を読んでみてください。
著者:ミヒャエル・エンデ 訳:大島かおり 発行日:2005/6/16 価格:880円 発売元:岩波書店