新刊『MBA心理戦術101』の1章「認知や意思決定に影響を与える心理バイアス」から、「3の法則」を紹介します。
人間は、なぜか3という数字に誤魔化される性向があります。特に何かを主張する際に、「根拠は3つあります」といわれると、「この人はちゃんと考えているのだろう」と錯覚しがちです。しかし筆者の経験では、根拠は3つといいながらも、実は最後のものは説得力がなかったり、同じことの言い換えが少なくありません。別の角度からの根拠が3つ揃っているか。しっかり吟味しないと相手の術数に嵌ってしまうことも少なくないのです。
(このシリーズは、グロービスの書籍から、文藝春秋社了承のもと、選抜した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)
3の法則
定義:根拠が3つあるとそれらしく感じる傾向
洋の東西を問わず、3という数字には何か謎めいた力があります。たとえば「世界3大○○」や「日本3大○○」(例:世界3大美人=クレオパトラ、楊貴妃、小野小町)といったものは数えきれないくらいあります。
スポーツなどでも、野球はなぜか3ストライクや3アウトなど鍵となるルールに3という数字が多数登場しますし、サッカーでも1試合で3点取ればハットトリックとして褒め称えられます。「真善美」や「心技体」、「速い、安い、うまい」といった言葉も3つの要素から成っています(もちろん、「○○四天王」や起承転結、スポーツのクォーター制度に見られるように4を始め、他の数字でもよく用いられるものはありますが、3に比べるとかなり少ないです)。
3が好まれる理由としては、人間の脳のキャパシティ的にも覚えやすく、かつ思いだしやすい数字であることなどが指摘されています。
これを利用したのが、「何かの提案を行う際には、『理由は3つあります』と言え」という教えです。根拠が1つや2つでは弱いですし、4つや5つでは覚えきれないというのがその理由です。ロジカル・コミュニケーンの書籍などでも推薦されています。
ただ、中には「自信がなくても『理由は3つあります』と言えば説得力が上がるので、決め台詞としてそれを使え」などと書いている指南書もあるので要注意です。
本来、根拠というものはイラストに示したように、しっかり主張を支える柱のようなものである必要があります。しかし現実には、そのうちの1つが非常に弱い根拠だったり、そもそも根拠たりえないというケースはよくあります。「理由(あるいは根拠)は3つあります」に騙されない批判的思考を持つことが大事です。