決算書を読むことは、数字の裏にある会社のストーリーを読み取ること
私が決算書の面白さを実感したのは、入社3年目の頃。証券会社の経営企画部で毎月自社の決算書分析を行っていた時のことだ。財務情報からあらゆることを推理し、自身が立てた仮説が正しいか、定性情報などを合わせて立証していく――この一連のプロセスがパズルを解くようで、実に楽しかった。
さらに、会社のあらゆる活動が記録されている決算書を見れば、何もかもが分かるのも面白かった。例えば、「どれほど大規模な投資準備を進めているのか」や、「どの部門がどれだけ接待費を使って、どれだけの売上が立っているのか」や、「今後どれ程のリストラクチャリングを予定しているのか」など、机にいながら、会社の全容を手に取るように掴むことができた。そして、経験を積むにつれ、決算分析のスピードと正確性が増していくのが実感できた。
決算書は、関係者の行為の一つ一つで構成される。決算書は会社の歴史そのものであり、また、関わっている人の人生の一部だとさえ感じた。決算書を分析し、調べれば調べるほど、様々な情報が入手でき、感動した憶えがある。
「決算書はむずかしいもの」と思い込んでないか?
本書は、そんな方にこそ読んでいただきたい。「本当に100分で決算書がわかるようになるのか?」という疑問は当然だ。だが、一般のビジネスパーソンは、決算書の細部を理解する必要はない。ざっくりとした決算書分析の大枠を掴み、決算書のメカニズムさえ理解すれば良い。
これを身に付けたら正に一生もののビジネススキルになる。決算書を「作る」ことは会計の専門知識がないとできない。だが、決算書を「読む」ことは、コツさえ学べば誰でもできるようになる。それを効率的に「超速」にやってのけるには、本書がオススメだ。本書でいくつかの企業のケーススタディを分析すれば、きっと実感できるはずだ。
決算書を「人間の体」に例える――「佐伯メソッド」で学ぶ意義
本書がユニークなのは、決算書の特徴や会社の状態を「人間の体」に例えて表現している点だ。損益計算書(P/L)は「運動成績表」、貸借対照表(B/S)は「健康診断表」、キャッシュ・フロー計算書(C/S)は「血液検査表」と表されている。企業の運動量はどのくらいか、適度な筋肉や脂肪は付いていて機能しているか、血液の量は適正できちんと循環しているか、といったように表現されていて、イメージしながら読み進めることによって、決算書を感覚的に理解できるようになる。
人間は、食べた物や生活リズムなどにより、体つきに差が出る。同様に、決算書も企業の活動次第で変わる。どのようにお金を集めるか、集めたお金を何に使うかなどにより、企業の体つきは変わってくる。そして、一つ一つの意思決定が取引となり、決算書の構成要素となる。
ケーススタディでの実践―経営者目線で妄想しながら決算書分析を体感
決算書分析の力を身に付けるにあたり必要なのは、会計の基礎的知識と、ケーススタディでの実践だ。本書では現在活躍中の5つの企業を事例として取り上げ、実際の企業のエピソードに沿って詳細に解説している。生きた教材である決算書を読んで、自分が経営者ならと、あれこれ妄想する楽しさを存分に体感していただきたいと思う。是非、好奇心を持ってお読みいただき、一生もののビジネススキルをわずか100分で身に付けていただきたい。
『100分でわかる!決算書「分析」超入門2020』
著:佐伯 良隆 発売日:2019/9/20 価格:1210円 発行元:朝日新聞出版
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