日本人駐在員にとって、最も磨くべきスキルは「言語化能力」であろう。こう言うと英語力を高めることをイメージする人がいるかもしれないが、そうではない。もちろん一定の英語力があることは大前提だ。さらに、見落としがちなところでは会話量を増やすことも海外でビジネスをする上では必須条件だ。しかし、もっと重要な要素があるのだ。
なぜ会話量が重要なのか?
本題に入る前に、先述した会話量の重要性についても触れておきたい。日本人が日本語で伝えられる情報量を100%とすると、英語だとどれくらいになるだろうか。せいぜい60%だろう。また、アジアなど英語が母国語でない地域で仕事をしているとき、相手にとっても英語は第2言語であるから、母国語でのヒアリングと比べ60%程度の理解度になる可能性がある。
このような状況下で行われているコミュニケーションの相互理解度は、「60%×60%=36%」だ。つまり、第2言語として英語を使うもの同士で仕事をする場合、日本人同士が日本語で仕事をしているときと比較して、36%程度しか互いに理解していない可能性があるといえる。
ゆえに、相互理解度を高めるためには、まずは3倍話すことを意識するといい。海外駐在の際に、日本語で話すよりも会話量を多くするのは非常に重要である。
言語化能力とは?
では、言語化能力とは何を指すか。ここでは、1と2の要素を満たしたうえで、3の周囲が納得感を得られるように伝える力と定義する。
- 戦略的な判断をする
- 明確な判断軸を持つ
- 納得感が得られるように伝える
1は優先順位付けをし、結果を出すために必要なことが何かを決める能力だ。これはビジネスの原理原則を理解し、それに基づいて現状をしっかり分析し決断する能力だ。日ごろ多忙な海外現地駐在員にとって、「緊急度×重要度」のマトリックス上の「緊急度の高い」ものだけに追われないようにすることも必要だ。
2は人を巻き込んでいく際に非常に重要だ。「なんとなく経験上から」という判断軸のままでは、人は納得しない。「判断軸を明確化する」ことが非常に重要なのだ。
最後に3の「納得感が得られるように伝える」能力も必要だ。あるエンゲージメントランクの高い企業によると、エンゲージメントを高めるために「make sense=納得感」を従業員の中に醸成しているとのこと。正しいか正しくないか、良いか悪いかではなく、納得感が重要なのだ。
1と2を満たせば自然と3の納得感が増すはずだが、1点気を付けるべきことがある。日本人は「暗黙の了解」「行間を読む」「忖度」などの文化があるため、推測する能力を鍛えてきた。しかし、日本から一歩出ると、明確に言わないと伝わらないことが多い。コミュニケーションをとるときは明確に、そして前述したように十分な会話量で伝えることを意識して欲しい。
【駐在員の皆さんへ】
●英語でのコミュニケーションでは、日本語でのコミュニケーションの3倍話すことを意識しているか?
●判断軸を明確にすることを意識しているか?
●判断軸と決断を、相手が納得感を感じるように伝えているか?
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