福岡ソフトバンクホークスの強みはどこにある?「差別化」要因分析の落とし穴

2つの仮説:福岡ソフトバンクホークスの強み

今年のプロ野球は、日本シリーズ*で福岡ソフトバンクホークスが3連覇を果たしたことで幕を閉じました。これでソフトバンクは過去6年間で5度目の日本シリーズ勝利(うち3度はリーグ優勝も達成)と、正に黄金時代を築いていると言えます。

日本シリーズ*:セ・リーグとパ・リーグの各上位3チームがクライマックスシリーズを戦い、その優勝者が争い日本一を決める。先に4勝したチームが勝ち。

特に今年の日本シリーズ後は、ソフトバンクの4勝0敗と一方的な展開となったことに加え、過去10年でパ・リーグ球団が9度の優勝となったこと(下表参照)や、毎年5、6月にあるセ・パ交流戦でもパ・リーグの勝ち越しが続いていることも相まって、「なぜパ・リーグは(ソフトバンクは)こんなに強いのか」という点が球界で話題となりました。

さて、ある限られた市場の中で継続的に競争優位に立っているプレイヤーがあるとき、「その強みは何か、他との差は何か」というのはビジネスの世界でも非常に重要なイシューです。その観点から「なぜパ・リーグは(ソフトバンクは)こんなに強いのか」をもう少し掘り下げてみましょう。

強みとしてよく言われているのは、パ・リーグのみがDH制(攻撃時、投手が打つ代わりに、打つこと専門の選手を出場させることができる制度)を導入していることです。巨人の原辰徳監督も日本シリーズ終了後、セ・リーグのDH制導入に賛成の旨の発言をして注目を集めました。多くの球界関係者が賛同するほど実感に合う話なのでしょうが、この仮説の弱点は、DH制の有無がセパで分かれたのは1975年と古いのに対し、2010年より前はこれほどのパ・リーグ有利では無かったことです。

もう一点よく指摘されるのは、ソフトバンクが育成選手*を数多く抱え、三軍制を敷いて若手選手に多くの試合経験を積ませているという点です。

育成選手*:プロ野球では、各球団の選手数は一軍二軍合わせて70人までと定められていますが、一軍の試合に出られない条件で、その枠を超えて契約することができ、これを育成選手と呼びます。育成選手のうちで球団に認められれば、70人枠に“昇格”し一軍の試合に出ることができます。

これによって一芸に秀でた選手を若いうちに囲い込めるだけでなく、実戦経験の豊富さや一軍昇格をめぐる競争の厳しさによって、より鍛えられるというロジックです。実際に、ソフトバンクではエースの千賀滉大投手、中継ぎで活躍するキューバ出身のリバン・モイネロ投手、正捕手の甲斐拓也選手ら、「育成」出身の選手が何名も主力を形成しており、この仮説にはかなりの説得力があります。

注意すべき「差別化」の二面性

グロービスの近刊書『ダークサイドオブMBAコンセプト』では、競争戦略における基本的な考え方である「差別化」について、ライバルが簡単にまねできないようでなければ差別化とは呼べないとしています。

育成選手という存在自体は現在12球団全てにありますが、三軍を作って積極的に対外試合を重ねる体制を築いたソフトバンクが大きく先行しており、多数の選手(及びそれに対応するコーチやスタッフ)を抱えられる資金力という点で、一部の球団しか追随できていません。この観点からも、多数の育成選手はソフトバンクの強みとする見方はより説得力を持つといってよいでしょう。

ただし、同書では、差別化要因を分析する注意点としてもう一点、「ビジネスとして成功するだけの顧客数に響くこと」を挙げています。

往々にして、ライバルと違うこと、差をつけることだけが目的化してしまい、肝心の顧客に響かないところの差別化競争に陥ってしまう危険があるということです。これを裏返せば、差別化要因を探る際には「アウトプットとして対ライバルで差がついているのはどこか」という観点から分析すべしということになります。

これを今回のテーマに当てはめてみると、各年の日本シリーズで具体的に誰が勝利という結果を出すことに貢献したのか、そこに着目してみましょう。下表は、この10年の日本シリーズの表彰選手一覧です。なお、敢闘選手賞とは、敗れたチームから選抜されます。

網掛け部分がソフトバンクの選手ですが、眺めてみると目立つのは外国人選手の登場率です。17人中6人と3分の1を超えており、これは1試合に登録できる外国人選手は4人が上限(日本人選手含めた全体28人中)とされていることと比べると、かなりの高率です。

もちろん、チームが外国人選手を獲得するのはそれだけ卓越した結果を期待してのことですから、表彰選手に選ばれる率が高くても不思議ではないのですが、日本野球に対応できなかったりケガをしたりと外国人選手が期待通りの成績を残せないケースは毎年珍しくありません。日本シリーズという短期決戦の場で期待通りの実力を発揮しているのは大したものといえるでしょう。

しかも、顔ぶれをみると6人中3人は、日本球界に来たはじめは他球団で、その後ソフトバンクに加入した選手(サファテ、李大浩、デスパイネ)です。上述のように、外国人選手は日本野球に対応できるかどうかで成績のばらつきが大きいのですが、いったん他球団で何年か活躍した選手となれば、そのリスクは大きく軽減できます。一方で、そうした選手は年俸評価も上がりますから、移籍させて獲得するには相応の資金力と交渉力が必須です。

こうしてみると、他球団で活躍した外国人選手に着目し“集めて”これる資金力と交渉力こそが、勝利という結果に直結し、かつライバルが簡単に真似できないという条件に合致した、ソフトバンクの差別化要因と言えるのではないでしょうか。なお、上述の「育成選手」について言えば、育成出身選手のうち、日本シリーズの表彰選手に選ばれたのは昨年の甲斐選手ただ1人です。チーム力の下支えにはなっているとしても、日本シリーズの勝敗を左右した度合いは大きくないようです。

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