本庶佑博士がノーベル賞、オープンイノベーションが拓く新しい可能性

ノーベル賞本庶佑京都大学名誉教授が本年度のノーベル医学生理学賞を受賞されました。おめでとうございます。ちなみに、筆者が学生だった1980年代にはすでに「利根川進博士の次に免疫関係の研究でノーベル賞を獲るのは彼だろう」と言われるくらいの実績がありましたから、個人的にはようやくという印象です。しかも、受賞理由がそうした初期の研究ではなく、1992年、50歳の時の発見である「抗PD―1抗体」を活用した免疫によるガン治療薬というのが彼のスーパーマンぶりを物語ります。

抗PD―1抗体を用いて実際に市場に出されたのは小野薬品工業の「オプジーボ」という薬です。株式投資がお好きな方は、薬価がどうなるか、適用範囲がどう広がるかでさまざまな観測が出、小野薬品の株価が乱高下したことをご記憶の方も多いでしょう。

このオプジーボですが、メラノーマ(悪性腫瘍)向けの薬として承認されたのが2014年、肺ガンへの適用拡大はその翌年ですから、最初の発見から非常に長い時間がかかったことがわかります。

さて、企業にとって自社シーズからではなく、外部の企業や大学などと行う共同研究(場合によっては買い取った技術)から生まれるイノベーションをオープンイノベーションと言います。近年、製造業を筆頭に、業界を問わず行われている活動であり、多くの成果が生まれています。P&Gの「コネクト・アンド・デベロップメント(つなげる+開発する)」のように、オープンイノベーションを製品開発戦略の核に据えた企業もあります。

医薬品は開発費が巨額なことから比較的オープンイノベーションが進んでいる業界です。しかし、なぜ本庶博士のパートナーが国内1位の武田薬品工業などではなく、関西でも中堅の小野薬品だったのでしょうか。もちろん古くからの付き合いということもあったのでしょうが、小野薬品で特筆されるのはその研究開発費の高さです。近年を見ても売上高研究開発費率は概ね30%程度で推移していますから、いかに研究マインドの高い企業かがわかります。逆に言えば、彼らが業界でサバイブするためには、オープンイノベーションに早期から取り組み、筋の良さそうな案件にはトコトンこだわる必要があったと想像されます。

一方で、誰もが注目する研究であれば、これも争奪戦になってしまいます。その点、抗PD―1抗体は当初他の治療法(手術など)よりも効果が低いとされていたことが結果的に小野薬品にとっては幸いしたとも言えます。ハイリスク・ハイリターンではあったと思いますが、この技術を選んだことは小野薬品にとっては結果的に大きな成功だったと言えるでしょう。

オープンイノベーション2

なお、オープンイノベーションは無闇に進めればいいというものではありません。パートナーの探索・選定やプロジェクトマネジメント、開発ポートフォリオの組み方はもちろん、知財等の諸条件の調整、「これはダメだ」と思った時の見切りのタイミングやエグジット方法、さらには研究開発組織を始めとする社内の意識変革など、多岐にわたるハードルを乗り越える必要があります。その最適なバランスを取るのは容易ではありませんが、うまく行えば、投資対効果を大きく高める可能性を秘めます。

もともと製品開発は不確実性の高い活動です。しかも世の中はますます不確実性を増しています。そうした時代だからこそ、企業はオープンイノベーションに本格的に取り組む必要があるのです。今回のケースは1つの成功事例として大きな参考になるでしょう。

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