『君たちはどう生きるか』――変化の激しい時代に豊かなキャリアを築くために 

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本書が出版されたのは1937年、日中戦争がはじまった年でした。国そして世界が大きな戦争の渦にのみ込まれ、言論や思想の自由は厳しく制限されていく。しかし、次の時代を担う存在である子どもたちには、自由で豊かな文化のあることをなんとか伝えなくてはならない。そのような思いのもと、岩波書店で日本初の新書「岩波新書」を立ち上げ、雑誌『世界』初代編集長としても知られている吉野源三郎氏により書かれたのが本書です。

「コペル君」という15歳の少年のさまざまな出会いや経験(貧困やいじめ、裏切りなど)と、相談役である「叔父さん」との対話を通して、「人として立派に生きるとはどういうことなのか?」を読者自身に問いかけていきます。

出版から約80年が経っていますが、昨年発売された漫画版と合わせると販売数は200万部を越えるなど、世代を問わず共感され続けています。特に昨今は、「人生100年時代」と言われ先が見えづらく、生き方が難しい時代だからこそ、「どう生きるか」という真っ直ぐな問いを自分自身で考えなくてはならないこの本に、多くの人が心を揺さぶられ魅了されるのだと感じています。

私自身、本書で描かれるコペル君の経験に自分を投影しながら、また叔父さんの言葉を噛みしめながら、まさに「私はどう生きたいのか、何を大事にしたいのか」を何度も問いかけました。ただ、読み返すうちに、「どう生きるか」を考えるにあたっては、社会を形作る仕組みや原理原則に対して正しい認識を持つことが不可欠なのだということにも気付かされます。

例えば、本書で重要な役割を果たす原理原則のひとつに、「地動説」があります。これは、天動説から地動説への転換を「学問的な過去の発見」として片付けるのではなく、「自分を中心とした世界像から、世界の中に存在する自分、という考え方の転換のシンボル」と捉えようという、著者のメッセージが込められています。同時にこの考え方の転換は、一過性のものではなく、私たちが生きていく上でずっと努力をしていかなければならない重要な「ものの見方」の問題であると、本書では説いています。この「ものの見方」を持って初めて、「私」と「世界」の繋がりや関わりを認識することができ、そしてその認識を踏まえた上でようやく、「どう生きるか」を考えることができるのだと、私は捉えています。

とはいえ、「自分」と「世界」を行き来し、自分にとってより良い人生とは何かを考え続けることは、変化の激しい環境下で忙しい毎日を送る私たちにとって、決して簡単なことではありません。だからこそ折に触れてこの本を手に取り、その時思い描く「どう生きるか」という自分なりの解を大切にし、自分自身にとって豊かなキャリアを歩む一助としていっていただければと思います。

『君たちはどう生きるか』
吉野源三郎 (著)、岩波書店
1048円

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