効率が良くて、実用的に情報管理ができる方法はないだろうか。昔から情報管理術に興味を持っている筆者は、最近新しい方法を試している。それは2008年に話題になった、100円から始められるアレだ。(このコラムは、アイティメディア「Business Media 誠」に2009年1月8日に掲載された内容をGLOBIS.JPの読者向けに再掲載したものです)
2008年の出版界の大きなトレンドの1つは「勉強法」だった。著者でいうと、何といっても勝間和代さんだ。茂木健一郎さんの脳の本もよく売れていたが、こちらにも需要の底流には効率のいい勉強をしたいというニーズがあったと思う。実際には勉強法を変えただけで、人間が急に利口になることはまれだろうが、ノウハウ本の著者を恨んではいけない。この種の本は、本を読んでいる間に「この方法でもっと効率が上がるに違いない!」という精神的高揚感があれば、商品として十分ではないだろうか。
昔から情報管理法に興味を持つ
さて筆者は、勉強法にはあまり大きな期待を持っていないのだが、効率が良くて実用的な情報の管理法には興味を持っている。正確にいうと、過去から現在まで大いに興味を持ち続けている。それは、筆者自身が情報の管理がうまくなかったということだ。
筆者は証券会社の社員、小さな自分の会社の社長、それに経済評論家を兼ねているので、情報管理法には興味がある。日々の情報収集のほかに、文章を1つ書くにも、データが必要な場合が多々あるし、記事の出典を確認しなければならない場合も多い。
そんな中、昨年手に取ったノウハウ本の中では、『情報は一冊のノートにまとめなさい』(奥野宣之著、ナナ・コーポレート・コミュニケーション)がなかなか実用的だった。この本は、どこにでも100円ほどで売っているようなA6のノートに情報をまとめる方法を説明している。詳しくは原本にあたってほしいが、1冊の小さなノートに何でもメモして、記事のスクラップなどもできるだけ集約して、このノートをいつも持ち歩こう、ということが書いてある。最後の2ページをテープで貼ってポケット状の袋を作り、この中に名刺やスケジュール(表)などを入れておくといった、細かなテクニックも紹介されている。ローコストな方法でもあり、試してみたくなった。
100円ノートが役立っている
奥野氏の本については、既に多くのレビューが書かれているので、以下、整理下手な経済評論家である筆者の、現時点での情報管理法を報告してみよう。実は100円ノートが大いに役立っているのだ。
筆者が使っている100円ノートは現在3冊目だが、基本的にメモは、ボールペン(三菱鉛筆のジェットスリームの3色で太字のものが圧倒的に書きやすい)で何でも書くことにしている。電話の相手、用件のメモのこともあれば、経済指標の数値を書き込むこともある。携帯で自分にメールする方法もあるが、この種の情報のメモは手書きの方が早い。
経済ニュースは日付が分かれば、要点をネットで検索することができるので、詳しい記事を保存しておく必要はまずない。「08年12月22日 トヨタ、今期営業赤字1500億円に下方修正!」くらいのことが書いてあれば、あとは必要に応じて内容を調べることができる。「いつ」と「何」だけが残っていれば十分だ。
新聞は仕事の必要上6紙購読しているが、新しいニュースのチェックは、Googleリーダーを使うことが多い。ロイター、日経ネット、asahi.com、ウォールストリート・ジャーナル(これだけ有料)など複数のニュースサイトを登録している。
切り抜きやコピーを100円ノートに貼ることがあるのは、要人の発言など、文のニュアンスが重要な情報の場合だ。昨年、原油価格が夏にピークを打って急落したが、FRBのバーナンキ議長は4月の時点(2日の議会証言)で商品市況が将来下落する見通しであることを明言していた。こういう発言は、スクラップのしがいがある。
ただし、発言がネットに載っている場合は、その記事をGmailの自分宛のアドレスに送ることにしている。記事であることを示す「データ記事:」といったキーワードをタイトルに付けておくと、後から検索でまとめて取り出しやすい。
1ページを超えるような記事や論文はスクラップして小型ノートに貼るのは大変なので、スキャン(プリンタ/FAX兼用の複合機を使っている)するかデジカメで写すかして、画像をGmailに送っている。最近のデジカメの解像度であれば、少々雑に写しても文字は読める。自分で原稿を送る場合にもGmailにコピーを保存するので、自分の原稿と資料に関しては、PCを使える場所なら(セキュリティーが厳しい場合は別だが)どこででも利用することができる。
携帯の場合、重い画像ファイルを見ることはできないが、それでもデータの掲載された記事をGmailで検索して取り出し、確認することができる。
なお、本や文章の構成などを「考える」ときには、A4の紙に落書きしながらが好都合だ。A4のレポート用紙はあちこちに置いているが、紙を2~3枚つまんで、折りたたんでポケットに入れて出掛けることもある。あるいは、短い記事や論文をA4の紙にプリントして、その裏面を使うこともある。取材を受ける時などで、図解が必要な場合にも役立つ。この種のメモで捨てがたいものもスキャンしてGmailに送る。
100円ノートの最終ページにテープを貼って作った袋には、名刺が2枚と、月曜日の日本経済新聞に載っている景気指標の一覧表(2週分)とYahoo! カレンダーの自分のスケジュールのプリントアウトを折りたたんで入れてある。テレビのコメントのような場合に、数字を確認するのに景気指標の一覧表は便利だし、定点観測的に見るにも良い。普通の解説で必要な程度の数値は、ほとんど網羅されている。
スケジュール管理(これも苦手だ)は、現在、能率手帳とYahoo! カレンダー(複数の関係者が閲覧・書き込みができて便利だ)の併用だ。今のところ、手帳が主で(『元帳』的な役割だ)、Yahoo! カレンダーが従の関係だが、そろそろ長年使った紙の手帳を卒業できるかもしれないと感じている。
「情報整理」にはあまり根を詰めない
気付いてみると、筆者の仕事の場合、ほとんどこれで用が足りている。
あとは、情報のインプット、アウトプットの技術を磨かなければならないわけだから、やっぱり、これから「勉強法」を勉強すべきなのか。
もっとも「情報整理」にはあまり根を詰めないことにしている。基本的に、必要なことはその都度調べればいいし、知っている範囲で考えられることを書けばいい。
筆者の携帯の待ち受け画面は長年アインシュタインの写真なのだが、それは、彼の「わしは調べりゃ分かることは、覚えないことにしている」という言葉が好きで、彼の顔を見ると和むからだ。(注:博士は、講演中に簡単な計算に詰まって、聴衆から簡単な公式を教えてもらった時にこう答えたという)
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