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法人顧客は個社単位で攻め方を考えよ

投稿日:2018/04/21更新日:2019/04/09

提案『法人営業 利益の法則』から「ターゲット顧客への営業戦略」を紹介します。

法人マーケティングと消費財マーケティングの大きな違いの1つに、戦略を考える単位があります。消費財マーケティングでは、よほど高額な商材・サービス(プライベートバンキングなど)以外では、個々の消費者にあつらえた戦略を立て、実施するのは非効率的です。それゆえに、近年はITの進化とビッグデータの活用などによって風向きは変わりつつあるものの、伝統的なセグメンテーションやターゲティングがいまだに活用できる面もあります。

それに対して、法人顧客は、仮に同じ業界にいて似たような規模であっても、購買のプロセスやDMU、予算やニーズなどは大きく変わってきます。たとえばゼネコン大手の鹿島は現場に購買の意思決定権限がかなり移譲されているのに対し、清水建設では本社の購買部が強いなどです(あくまで傾向です)。必然的に、営業戦略も、顧客企業が大きくなればなるほど個別に練りこんでいく必要性が生じます。そのためにも、顧客のさまざまな特性を企業としてしっかり把握しておくことが非常に大切になるのです。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

◇    ◇    ◇

ターゲット顧客への営業戦略

<絞り込み方法>

消費財マーケティングでは、多様なニーズを持つ不特定多数の消費者に対して、多額の資金を投じて自社ブランドのプロモーション活動を行うのが一般的です。広告の無駄打ちなどを避けるためにも、ターゲティング時には費用対効果の大きいセグメントに絞り込み、それ以外のセグメントは意識的に「捨てる」ことが奨励されます。

一方、法人営業では、「捨てる」という感覚はややピンとこないかもしれません。(前段階である)製品開発時のセグメンテーション&ターゲティングで、すでに狙うべき顧客層の絞込みは考慮されている、すなわち、営業現場がターゲット企業群を選定する段階では、すでに可能性ある顧客層と可能性のない顧客層の区別ははっきりしていることが多いからです。そこで営業マンとしては、一定の可能性がある顧客については「捨てる」ことはせずに、ターゲット先として広くリストアップしておくのが通常です。

ただし、当然ながら営業側のリソースは限られています。そこで法人営業の現場で求められるのは、まずは、可能性の高い顧客層から「優先順位をつけて」あたっていくことです。そしてもう一つは、あたってみたものの反応が悪い顧客企業を、早く「見切って」次のポテンシャル顧客への営業に移ることです。このように、「捨てる」ではなく、「優先順位をつける+見切る」が、法人営業に当てはまる感覚と言えるでしょう。

優先順位のつけ方は、基本は先述した「魅力度」と「自社の勝算」の掛け合わせてよいのですが、ここでも少し修正が必要です。

「魅力度」を評価する観点は、営業部門の戦略方針の影響を大きく受けます。これは、ターゲット企業の選定が、営業戦略の一環として位置づけられるために起こる現象です。具体的には「需要平準化」「未開拓のエリアの開拓」「新しい業界との接点作り」といったような方針に合う顧客企業群が優先されることになります。

「自社の勝算」は、顧客企業側の意思決定のキーパーソンが、企業によって異なる立場の場合があるため(例:ある企業は技術部門のトップ、別の企業は製造部門の現場リーダーなど)、ターゲット選定の段階で「自社の勝算」まで十分反映するのは容易ではありません。キーパーソンの立場によって、自社の強みとされる点が重視されるか否かが、大きく変わってくるからです。

このような問題もあって、次に述べるように、法人営業ではセグメント単位で自社の勝算を考えるよりも、個社単位や案件単位での考察の方が重要になります。

<営業戦略を考える単位>

消費財マーケティングでは、原則として、狙ったセグメント(すなわちターゲット)の特性に応じて戦略を立てます。一方、法人営業では顧客セグメント単位以外に、個社別でも攻め口を考えることが多くなります。個社別で戦略を立てた方が、営業の勝率が高いからです。

図
本章で、法人顧客に営業をかける際に必ず知っておくべき情報として、購入タイミングや予算金額、購買方針や意思決定の形式、意思決定上のキーパーソンなどを挙げましたが、こうした情報は結局のところ、個社別に調べてみないとわかりません。特に予算金額は顧客としての魅力度を、キーパーソンの情報は自社の勝算を、それぞれ見極める上で不可欠な判断材料です。こうした顧客別情報を集めた上で、優先的に攻めるべき顧客か、攻めるのであればどうやって攻めるかを一社一社について検討し、その上で攻めた方が、企業規模や業界だけの粗いターゲット設定で営業をかけるよりも、圧倒的に効率が良くなるのです。

ちなみに、顧客別に情報をまとめ、今後の営業提案を計画に落とし込んだ資料を、アカウントプランと呼びます。本章の「つかむ」営業、つまり新規営業時にもアカウントプランは重要ですが、次章の「深める」営業では、さらに活用する余地が大きくなってきます。

法人営業のターゲット選定は、セグメント単位のみならず、同一企業内の案件単位でも行われます。例えば企業に向けに人材紹介サービスを提供する場合、ターゲット企業の一つとして顧客A社を選定したとしても、A社が求めるすべてのタイプの人材を積極的に紹介するわけではありません。安定した件数を期待できる一般事務職だけを狙う、あるいは、自社が得意とする経営職や技術職を狙うなど、同一の顧客企業に対しても、積極的に取りに行く案件を絞るのが普通です。

このように法人営業での戦略策定においては、顧客群(セグメント)ごとの検討に加えて、個社ごとに攻め口を考える、また同一企業内でも案件タイプごとにターゲット選定する点を認識することが大切です。

(本項担当執筆者:山口英彦 グロービス経営大学院教員)

『法人営業 利益の法則』
山口英彦(著)
1382円

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