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新規顧客の獲得こそが営業力強化の鍵

投稿日:2018/04/07更新日:2019/04/09

新規顧客『法人営業 利益の法則』から「新規開拓は非効率か?」を紹介します。

営業担当者がすぐに結果を出すことを要求されると、通常はよく知った既存の顧客のもとに行くでしょう。ニーズも比較的汲み取りやすいですし、相手の予算や社内の手続きなども知り尽くしているため、仕事が進めやすいからです。しかし、このような「安易な」売上げ創出に頼ることは、長い目で見ると組織の営業力、さらには商品開発力などを落としてしまうことになりかねません。長期的な顧客のパイプラインが細ってしまうというデメリットもあります。新規顧客の獲得は難しいことではありますが、だからこそ鍛えられる能力があることを意識し、個人、あるいは組織として一定のリソースやエネルギーを新規顧客営業に振り向けることが本来望ましい姿なのです。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

◇    ◇    ◇

新規開拓は非効率か?

いまさら言うまでもないことですが、売上げや利益の成長は、新たな取引先の開拓と、すでに取引がある顧客との関係拡大とによってもたらされます。成長の両輪であるはずの新規開拓と既存先深耕ですが、筆者の経験では、世の中の営業組織の多くで、既存取引先に対して過剰な営業リソースやマネジャーの意識が割かれ、もう一方の新規開拓に対する資源投入が不足しているのが実態です。

営業に長年携わっている方は実感されているでしょうが、営業の時間管理を成り行きに任せると、どうしても既存取引先のメンテナンスばかりに時間や労力を使ってしまうものです。初対面の相手のところに行くよりも、お互いよく知った仲である既存取引先の担当者のところに出かける方が、気分的に数倍楽なのは間違いありませんし、新規開拓をやらなくても販売成績はすぐには落ちませんが、既存の取引先を失えばダイレクトに販売成績が落ち込む、という意識もあるからでしょう。

また成り行き任せではないにしろ、客観的な分析を経た結果、組織的な方針として既存先営業に偏重しているケースもよく見かけます。皆さんは、社内でこんな分析結果を目にしたことはないでしょうか?

・新規営業の勝率を10%上げるよりも、既存顧客のリピート率を1%上げた方が、増収効果が高いことがわかった。ゆえに、既存顧客の満足度向上に注力しよう
・営業の投入時間あたりの売上げで見ると、既存顧客の方が新規顧客よりも圧倒的に効率的である。限られた営業リソースは、既存取引先の深耕に集中投下すべき

しかし、こうした分析を筆者が正しくやり直すと、「新規営業を強化しないと、本事業部の成長は数年後に止まる」といった具合に、まったく異なる結論が導かれることがよくあります。分析の落とし穴はいろいろあるのですが、特に多い間違いは、新規開拓の時間的な効果を考慮しない、例えば「新規アカウントは、獲得の翌年度以降、すべて既存先に区分して一括集計する」というやり方です。

新規アカウントの売上げは初年度は小さいものの、年を追うごとに金額が大きくなり、営業実績を押し上げてくれるのが通常でしょう。だとすると、獲得時点の効率性だけを見て新規営業のウェイトを落としてしまうと、(リピート率が100%でない限りは)次年度以降、ボディブローのように響いてきて、ビジネスが細っていきます。優秀な営業マンは、経験的にその脅威を認識しているので、自分や自チームのリソースの一定割合を強制的に新規営業に費やすよう徹底しているものです。

図は、高い営業成績を残している営業マンと、平均的な営業マンの時間配分のよくあるパターンを示したものです。右側のいわゆる「デキる」営業マンは、仕事時間の4分の1近くを新規顧客向けの営業活動に費やしています。その中でも、事務作業は減らして、なるべく多くの時間を実際に顧客と話をするセールス活動に使っている様子がうかがえます。

図
さらに言えば、新規開拓の機能は、そこから生み出される売上数値以上の意味合いがあります。筆者は過去にさまざまな業種や規模の営業組織を見てきましたが、新規営業機能が弱くても成長を続ける企業や事業部というのは、一度も見たことがありません。それまで一割程度の売上げを担ってきた新規営業チームのメンバーが数名抜けた翌年、事業部全体の売上げが三割近く落ち込んだようなケースもありました。これらの現象は、新規開拓の機能が、既存顧客向けの営業機能にも何らかの影響を与えていることの示唆と思われます。

・新規開拓で鍛えられる

背景の一つとして、「営業マンは新規開拓で鍛えられる」という実態があります。既存取引先の担当であれば、前任者が築いてくれた信頼関係や収集してくれた顧客情報をベースにして、丁寧なフォローさえすれば、ある程度の取引量は維持できます。しかし、新たに顧客を開拓するには、既存顧客向けの営業にはない難しさがいくつもあります。そうした困難の壁を乗り越える際に磨かれるスキルが、営業マン本人にとっての能力開発機会となり、既存顧客の維持や深耕においても発揮されるのです。

・組織への好影響

もう一つ、組織にとっても新規営業活動は良い影響をもたらします。例えば、限定的な既存顧客との関係の中では見えないような顧客ニーズが、新規営業の現場で認識されるケースはよくあります。新しいニーズが社内にフィードバックされると、新製品開発などのイノベーションにもつながりやすくなります。

このように、新規顧客開拓の経験は、個人の能力および組織の知見の双方を強くし、既存顧客向けも含めた営業機能全体の強化につながっていくのです。

(本項担当執筆者:山口英彦 グロービス経営大学院教員)

『法人営業 利益の法則』
山口英彦(著)
1382円

  • 嶋田 毅

    グロービス経営大学院 教員/グロービス 出版局長

    東京大学理学部卒、同大学院理学系研究科修士課程修了。戦略系コンサルティングファーム、外資系メーカーを経てグロービスに入社。累計150万部を超えるベストセラー「グロービスMBAシリーズ」の著者、プロデューサーも務める。著書に『グロービスMBAビジネス・ライティング』『グロービスMBAキーワード 図解 基本ビジネス思考法45』『グロービスMBAキーワード 図解 基本フレームワーク50』『ビジネス仮説力の磨き方』(以上ダイヤモンド社)、『MBA 100の基本』(東洋経済新報社)、『[実況]ロジカルシンキング教室』『[実況』アカウンティング教室』『競争優位としての経営理念』(以上PHP研究所)、『ロジカルシンキングの落とし穴』『バイアス』『KSFとは』(以上グロービス電子出版)、共著書に『グロービスMBAマネジメント・ブック』『グロービスMBAマネジメント・ブックⅡ』『MBA定量分析と意思決定』『グロービスMBAビジネスプラン』『ストーリーで学ぶマーケティング戦略の基本』(以上ダイヤモンド社)など。その他にも多数の単著、共著書、共訳書がある。
    グロービス経営大学院や企業研修において経営戦略、マーケティング、事業革新、管理会計、自社課題(アクションラーニング)などの講師を務める。グロービスのナレッジライブラリ「GLOBIS知見録」に定期的にコラムを連載するとともに、さまざまなテーマで講演なども行っている。

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