その声は顧客の本音ですか? 

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本音『法人営業 利益の法則』から「顧客から一般論でなく本音を引き出す」を紹介します。

営業担当者にとって難しい仕事の1つは顧客から本音を引き出すことです。たとえばあまり気乗りしていないのに「面白そうですね」などと関心があるかのように振る舞うなどはよくある話です。あるいは、真のニーズを伝えると相手に付け込まれかねないと考え、予防線を張る人も少なくないでしょう。営業担当者としては、そうしたハードルを越えて本音を引き出さないと、時間を浪費したり、的を外した提案をすることになってしまいます。幸い、いくつかのTIPSとも言える、本音を聞き出す話法がありますので、ぜひ一度試してみましょう。可能ならば、さらに自分なりのアレンジを付け加え、使える武器にしていくと営業の生産性は一気に上がっていきます。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

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顧客から一般論でなく本音を引き出す

いざ、顧客が「この担当者は付き合うに値する相手だ」と認識してくれても、一般論や抽象度の高い言葉で会話を進めていては、本音は浮き彫りにはなりません。以下は、本音を引き出すためのコツや効果的な話法を紹介したものです。

●投げる質問は短く、時には沈黙も

相手に本音をしゃべってもらうには、まず相手がしゃべる量を増やすことです。そして相手に多くしゃべってほしければ、こちらから投げかける質問を短くすることです。長い質問には短い答えしか返ってきませんが、短く本質を突いた質問には長い答えが戻ってくる傾向があります。

沈黙もうまく活用するとよいでしょう。顧客の答えにすぐに反応して会話を続けるのではなく、時には「あなたの言っていることが、どうもピンとこない」といった表情をしながら、しばし黙ってみましょう。すると不思議なことに顧客が沈黙を破ろうと、自ら具体例を話し始めてくれたりするものです。焦りながら話しているので、思わぬところで本音も出てきやすくなります。以下、トーク例を挙げます。図
「『気合いを入れて』とは、どういう意味でおっしゃっていますか?」

営業マンとしては、顧客が複数の解釈ができそうな言葉を発したときに、そのまま流さずに、すぐに真意を問う癖をつけておきたいものです。例えば顧客が「今回は気合いを入れて検討したい」と口にした場合に、「気合いを入れて」とは、「多めの予算を使って」なのか、「じっくり時間をかけて」なのか、あるいはまったく違う意図なのか。このように顧客側の意向を正しくつかんでおければ、提案する見積もりの水準や、提案のタイミングなどが、顧客の期待と大きくずれるような失敗も防げます。

「今回の提案に点数をつけていただくと、何点でしょうか?」

商談から戻ってきた営業マンに「お客様の反応はどうだった?」と尋ねてみると、「とても納得感があったようです」「『良い提案内容だ』と褒めてもらえました」と暢気に答える人がいます。しかし、多くの場合、顧客側の担当者は、面倒くさくて本音の感想を話さないだけだと肝に銘じてください。

数字の活用は、漠然としたやり取りを排除する上で有効です。例えば、自社の提案内容に関して、漠然と「いかがですか?」と反応をうかがうのではなく、上記の例のように点数を聞いてみます。「まあ、70点くらいかな」という答えが返ってくれば、「ご評価いただいたのはどの部分ですか? どんな内容が盛り込まれていたら、あと30点高い点数だったでしょうか?」などと聞いてみましょう。そうすることで、次の打ち手につながるような具体的な本音を引き出しやすくなります。

「当社のお客様でも、御社と同様、急成長中で社員数が数年で倍増している場合、○○に悩まれているケースが非常に多いのですが、御社の場合、いかがでしょうか?」

数字以外にも、明確な比較対象を示すことでも、はっきりと考えやすくすることができます。比較対象としてすぐに思い浮かぶのは顧客の競合他社でしょうが、それ以外にも自社の扱っている製品やサービスの特性に応じて、業界の特性、従業員規模、創業からの年月等で顧客企業と共通している企業を比較対象として引き合いに出すと、具体論に考えが及びやすくなります。

「ああ! 御社は現在○○社(自社の競合企業)とお取引されているのですね。それはもう、○○社さんでしたら、何もご不満なしでしょうねえ……(参りました、というふうに)」

これは「自社の競合を褒めまくる」というやり方です。顧客が現在、競合他社と取引をしていると判明した場合、こちらが「現状のお取引に何か不満はありませんか?」と尋ねても、よほど失望していない限りは「特にありません」と返されてしまいがちです。先方担当者としては、現在使っている業者の文句を言うことは、過去の購買判断を自己否定することになるので、気が進まないのです。そこで攻め込みたい営業マンとしては、発想転換して、「それは絶対にかなわないな」というように大げさに競合を褒めまくってみます。すると、さすがに「いや、完璧とまではいいませんけどね」「え、何か○○社さんでも不足な点は多少ありますか?」「例えば……」というように、顧客の不満を聞き出すきっかけになります。

●顧客も気づいていない本音を引き出す

本音を引き出すといっても、顧客自身も自社の課題やニーズにはっきりと気づいていない場合があります。そんな時に会話を通じて、本当の思いを引き出していく方策があります。

「なるほど。今までのお話をちょっと整理してみると、つまり御社が考える○○の形は、こんな感じでしょうか……(ホワイトボード、紙などに図示しながら)」

はっきりと考えてもらうには、文字通り、「目に見える形」にして示すことが効果的です。それまで言葉で議論してきたことを図や絵にするなどして見えやすくすることで、顧客は「ここがちょっと違う」「もう少し丁寧に言うと、ここはこういうことだ」といった、本音での意見を言いやすくなります。

より難易度の低い手法として、あらかじめ顧客が抱えていそうな問題を予想して、いくつかのパターンを目に見える形(絵、図、写真など)で持参するという方法もあります。特に、短時間しか話す時間が取れない多忙な現場を訪問する際には有効な方法です。

「もしも予算がこの半分しかなかったら、何をやりますか?」

顧客は、予算などの制約条件が緩い場合、あれもこれもと重要度の低い機能やサービスまで求めがちになります。ここで、あえて極端な前提を置いてみることで、顧客自身に本当に大切だと思っているものに気づいてもらえることがあります。

あるいは、「○○さんのお考えになる、究極の××サービスとは何だと思いますか?」のように、極端な方向に振ることでも、本当に求めるものがはっきりしてきやすくなります。

(本項担当執筆者:山口英彦 グロービス経営大学院教員)

『法人営業 利益の法則』
山口英彦(著)
1382円

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